つくろう、島の未来

2024年04月16日 火曜日

つくろう、島の未来

離島専門の引越し事業者「アイランデクス」創業者の池田さんと、国境離島・対馬の魅力に迫ります。

お話を伺うのは、教育事業や交流拠点づくりを行う「対馬地球大学」サステナビリティ・コーディネーターの椎野佑梨(しいのゆり)さん。大阪出身で、幼少期からイタリア、タイ、ナミビア、ドイツなどに居住し、2021年、29歳のときに対馬へ移住。

そして、コミュニティスペース「hatoba(ハトバ)」発起人で、シルバーアクセサリー作家でもある小宮翔さん。対馬で生まれ育ち、福岡で歯科技工士として働いた後、2013年、26歳のときに対馬へUターンしました。

椎野さんの移住の背景にある想いや、おふたりが感じる対馬の魅力をお聞きしました。

ヨーロッパ、アジア、アフリカ…。世界経由で対馬へ

ritokei

椎野さんは、国連の学生ボランティアとしてナミビアで活動されていましたね。

「期待された役割を果たすには気持ちだけではだめだと痛感し、さらに学問に注力した」と記事で拝見しました。そこからなぜ、対馬に行こうと思われたのですか?

椎野

元々は、海外や国際協力に興味がありました。

さまざまな経験をして考えを深めるうちに、小さな世界で全ての繋がりを感じられる“地域”というキーワードに出会ったと同時に、対馬地球大学のスタッフ募集を見つけました。

「持続可能な社会を目指す」かつ「地域の暮らしから生き方を学ぶ」という点で共感し、ご縁をいただいて対馬に移住しました。

ritokei

対馬地球大学とは、対馬北部にある佐護笑楽校(旧佐護小学校)を拠点に、持続・再生可能な社会づくりを目指して教育事業や交流拠点づくりに取り組む企業ですね。

ritokei

池田さんは対馬のどういうところが面白いと思いますか?

池田

地域のために何かしたい、学んだことを活かしたいなど、アカデミックな人が非常に多いと感じます。道を行けば博士に会えるようなイメージで、リスペクトを感じる島です。

辺境に行けば行くほど、いい意味で変わり者というか尖った人が多くて、対馬に面白みを感じます。

ritokei

アイランデクスには多くの島に多様な事業種目があって、コミュニティに入ることを楽しんでいるんだなと感じます。

池田

そうですね。

お互いの人生があって接点がありますから、出会いもあれば別れもあります。一定期間ご一緒するというのがコミュニティであって、一緒の期間はお互いに楽しく学び合えるといいし、去った後もまたいつでも寄ったらいいと思います。

グローバル視点で見たら、これから対馬が経由地になる可能性はあると思います。移動時間はますます短くなるから、「また会ったね」がいろんな所で生まれると思っています。

島全体がまるで家族。家庭料理が味わえる「さごんキッチン」

ritokei

人生経験を積んだお二人が出会った場所が対馬。そこが面白いなと思います。

椎野さんは、対馬の人と寄り添って暮らされていますが、コミュニケーションの大変さや面白さはどんなところですか?

椎野

私は居心地が良くて、でっかい家族みたいな感じですごく好きです。

近所の人の顔が全員わかって、挨拶もするし、とれたての野菜や魚をいただくこともあります。野菜がいっぱいあるので、料理ができるようになりました。

車をポールにぶつけてしまった時は、駆けつけてくれた警察官が顔見知りの人で、車の修理をしてくれた方は普段からお世話になっている人で、安心感がありました。

ritokei

非常時に安心なのはいいですね。

椎野

地域の人から学ぶことも非常に大きいです。

椎野

佐護笑楽校内にある食堂「さごんキッチン」で、地元のお母さんたちは、味噌もこんにゃくも自分たちで作られます。私も学ばせていただき、島ならではの自分達で作る生活を楽しんでいます。

ritokei

さごんキッチンでランチをいただきました。楽しそうにつくられているのが感じられて安心して食べられました。赤ちゃんも来ていて、いい場所ですね。

椎野

基本は家庭料理で、メニューは臨機応変に週替わりになっています。全部母ちゃんたちの愛情がこもった手づくり料理です。お子さん連れの方も多いですね。

池田

食堂はきれいな印象だけど、家のように「おかえり」と言ってもらってるような空気感があって、居心地がいいですね。

椎野

接客にマニュアルはなくて、母ちゃんたちが「みんなで声掛けしようね」って楽しんで話せる場所になっています。

行けばなんとかなる。対馬だから感じられる「生きる実感」

ritokei

アイランデクスを利用して対馬への引越しを検討している人、島に興味がある人へメッセージをいただけますか?

椎野

離島と聞くとハードルが高いと思いますが、来ればどうにでもなります。みんなが助けてくれます。

今住んでいる家も知り合いからご紹介いただいた古民家で、引っ越してからも足りないものはないかと地域の方々に気にかけていただき、すぐに生活に慣れることができました。

ritokei

最近では、1週間くらいの保育園留学も注目されています。親はコワーキングで仕事をしたり観光しながら、子どもは遊んだり学んだりしながら、島暮らしを体験する。子どもの姿を見て移住を考える親御さんもいらっしゃるようです。

椎野

友達が子どもを連れて遊びにきた時「静かで自然も豊かですごくいい」と言っていました。

大きな遊具があるファミリーパークに行ったんですが、子どもはのびのび遊んでいましたし、大人も自然がいっぱいで癒されました。

あとは、月や花などの自然や、旬の食べ物の美味しさを感じられるようになりました。食べ物をつくっている人の顔も見えます。生きている感じを実感しながら過ごしています。

おこがましいですが、知らずに狭い環境に身を置いていたり窮屈に生きている人にぜひ来てほしいと思います。

ritokei

椎野さんは、同じ国内とは言え知らない土地で、相手の懐にナチュラルに入っていますね。

椎野

自分1人では何もできないことを痛感しています。頼らないと生きていけないけど、与えてもらってばかりで、自分は与えられていないと思うことが島暮らしの悩みです。

池田

それは永遠の悩みですね。元気に生きていくしかできないというか。

椎野

元気に楽しく生活し、魅力を伝えていくことが、私にできることだと思っています。

ritokei

実際、島に移り住むには、どうしても不安がありますよね。

椎野

まずは行ってみないとわからないことがありますから。対馬には、気軽に泊まれる宿もあるし、私たちもゲストハウス「さごんヴィレッジ」を昨年オープンし、1カ月滞在されるお客様もいらっしゃいました。

私が移住してすぐの頃はコミュニティスペースhatobaに通っていました。hatobaに行けば若者や誰かいるし、拠点があれば安心ですよね。

ritokei

椎野さんは本当に対馬ライフを楽しんでいらっしゃいますね。

価値観が異なる国内外の人が交わるhatoba

ritokei

hatobaは、小宮さんが運営するコミュニティスペースですね。

池田

小宮翔くんは、僕が対馬で初めて出会った人なんです。

ritokei

お二人は対馬で出会ったんですか?

池田

はい。アイランデクスが初めて対馬のお客様の引越しをさせていただいたとき、対馬で手伝いをしてくれる人を人づてに探して、来てくれたのが翔くんでした。

翔くんとは、引っ越しの時が初対面でしたが、仕事ぶりも人柄も良く、さらには同い年ということもあって意気投合しましたね。

その時に、人が行き交うようなhatobaというコミュニティスペースをつくっていると聞いて、次に対馬に来た時に遊びに行きました。

小宮

もともと別のアトリエを借りていたのですが、コロナの影響で出て行くことになって。人が集まれるように、アトリエ兼ギャラリーができそうな広めの場所を探したんです。

たまたま空いてる建物を見つけて、近くにいたおばちゃんに「ここ気になるんですよね」と話しかけたら、その場で持ち主に電話で繋いでくれて、借りることができました。

想像以上に広い建物が借りられたので、仲間と一緒に場づくりをしています。

ritokei

海が近いからかもしれないですが、いろんな人がいろんな所から集まっていますね。施設の名前にも繋がっているんですか?

小宮

そうですね。ここは港町で、大陸との玄関口。江戸時代に朝鮮通信使が入ってきた地でもあります。

新しく訪れる人と地元の人が交わり、価値観を共にし、新しい何かを得て出ていく。そういう場所になれたらと思い「波が止まる」「船が着く」という意味の「hatoba」にしました。

建物も、時代に合わせて形を変えながら、地域のコミュニティとしての役割を果たしてきたみたいです。

ritokei

昔は地域の人が集まる場所だった。今は、島外の人も集まる場所になりましたね。

池田

イベントなどで、移住者の人も集まってくるんです。新しい出会いを繋げたり、国際的なコミュニティになったり、そんな役割をすでに果たしていると感じます。

ものの価値が変わる、自分達でつくり上げる暮らし

ritokei

小宮さんは、海洋ゴミを活かしたアート作品やアクセサリーづくりも手がけられていますね。

小宮

前職が歯科技工士で銀が扱えるので、アクセサリーをつくったら喜ばれるかなと。

シーグラスをパーツに使おうと思って海に行ったら、海ゴミが目について、形がかっこ良かったので持ち帰ったんです。生活に溶け込むものをつくりたいと思い、照明に加工して。造ったり飾ったりする場所が欲しいなと思って、以前のアトリエを借りました。

ritokei

小宮さんが取締役を担う対馬地球大学の拠点・佐護笑楽校では、地域の方が大工仕事をされていました。

ちょっとしたことでも、場合によっては島外から人を呼ばないといけないので、地域に手先が器用な方がいらっしゃると暮らしが随分違ってきますね。

池田

つくってくれた人、修理してくれた人が知り合いというだけで、ものの価値が変わりますね。

小宮

僕らは、地域や家のことは自分達でするのが当たり前の感覚なんです。

佐護の地域性だと思うんですが、家や小屋を造る時は山から木材を切ってきて親戚のところで製材を行い、造る時は地域の人が手伝ってくれます。

ritokei

家づくりのノウハウがあるということですか?

小宮

繰り返しやってきたのでわかります。大工さん1人と手伝いが4、5人いれば、基礎工事から棟上げまでできます。棟上げする時は子どもも集まってみんなでやって、賄いを準備するおばちゃんもいます。水道工事も、電気工事も、自分達でやりました。

昔からものづくりをする地域性で、みんなが道具を持っていますね。漁師さんでも、山で畑をしている人なんかも多いです。

僕は、どちらかと言えば不器用な方ですが、好きだから作品をつくったりしています。

ritokei

hatobaでも、佐護笑楽校でも、できることでみんなつくり上げていますね。改めて聞くと地域性が出ていて、レジェンドがたくさんいるなと感じています。

掘れば掘るほど面白い。国境離島ならではのつながり

ritokei

今回、佐護という地域のお話を改めてお聞きしました。もしかしたら、対馬に来たことがある人でも佐護まで足を伸ばしたことがない人もいるかもしれません。

佐護を知ると、対馬を見る目が変わってきそうです。

小宮

佐護は面白いですよ。韓国に近いので、韓国の美容室や歯医者に行く人もいたみたいです。

ritokei

hatobaを訪れることで、そういう面白いエピソードに触れられるのもいいですね。

小宮

ふらっと来てくれるでも、様子を伺いに来てくれるでもいい。hatobaはどういう場所であってもいいと思っています。

ritokei

この記事を読んでくださっている方や対馬への移住をお考えの方へ、メッセージをお願いします。

ritokei

島の特色が体に合っているかどうかも大切ですが、ぜひ探究心を持って来てもらいたいです。自分から進んで気になることを調べられる人が対馬には合ってると思います。

掘れば掘るほど面白いものが出てきますよ。

池田

島特有の文化も普通のことだと思っている人も多いから、掘らないとですね。

小宮

そうですね。聞かれないと言わないんですよ。気になることは「それなんですか?」「前はどんなだったんですか?」と聞いてもらえると、喜んで教えてくれると思います。

暮らしで困ったことも言ってもらえれば、できることは手伝ってくれると思いますよ。

ritokei

池田さん、今回は仲の良い小宮さんと改めて話をしてどうでしたか?

池田

翔くんとは引越しするお客様のお手伝いをきっかけに出会ったので、アイランデクスのスタッフではないのに、うちの仕事も知ってくれている。我々の仕事内容を知っている人は必ずしも多いわけではありません。

僕やスタッフの人柄を好いてアイランデクスを勧めてくれる方はたくさんいるんですけれども、実際に一緒に働いてくれた仲間とこのような機会をいただけて嬉しいです。

>> 対馬は今、変革期。未完成だからこそボーダレスにつながる。未来が広がる【島で語らう引越し便・前編】に戻る

【関連サイト】

対馬地球大学|佐護笑楽校・さごんキッチン(対馬)
hatoba(対馬)
アイランデクス株式会社 離島引越し便

関連する記事

ritokei特集