つくろう、島の未来

2023年06月09日 金曜日

つくろう、島の未来

隣の国・韓国まで約50kmと、本土よりも海外が近い国境離島・対馬。古くから大陸と貿易などの交流が盛んで、国の天然記念物や朝鮮半島などの動植物が息づき、人や文化の交流地点として独自の進化を続ける島です。

その対馬では今、年齢もキャリアも多様なキーマンが繋がり、今までにない自由なコミュニティが生まれています。

今回は、有人離島約300島を駆け回る離島専門の引越し事業者「アイランデクス」創業者の池田さんと、対馬のキーマン2人にリトケイが話を伺いました。

穴子漁をしながら「すし処慎一」を営む築城慎一さん、Uターンして「YELLOW BASE COFFEE」をオープンした熊本さん、そして、アイランデクス池田さんが考える対馬の魅力と可能性とは?

対馬のコミュニティが進化中!中心を担うふたり

ritokei

今回は、対馬の未来を担うであろうお2人と、アイランデクスの池田さんにお話を伺います。早速ですが、池田さんは対馬の現状をどのように感じていますか?

池田

対馬は今、面白いです。

最近だと、約2年前にYELLOW BASE COFFEEができてから対馬の中心エリアの人の動きが変わったと感じます。

ritokei

熊本さんは、大阪でラーメン店を2店舗経営されていたそうですね。もともとUターンを考えていたのですか?

熊本

気持ちはどこかにありました。

けれど、仕事が楽しくて、経営者として社員も雇っていたので、覚悟はなかったです。

対馬に帰ってきたのは2020年5月。年間40万人ほど来ていた韓国人観光客がコロナ禍でほとんどいなくなって、まちが寂しくなって、今だなと思って帰ってきました。

ritokei

ご実家は中華料理屋で、前職はラーメン店経営。ジャンルの異なるコーヒーショップを開業したのはなぜですか?

熊本

はじめは売り上げのためにラーメン店も考えました。けれど、ラーメンを提供することよりも、場づくりをしたいという思いがあったんです。

妻のセンスや才能をいつか発揮してほしいと思っていたのと、彼女がもともとコーヒーショップで働いていたこともあり、場づくりの手段としてコーヒーを選びました。

ritokei

店名にある”YELLOW BASE”とは「みんなが集まりやすい灯を灯す」という意味なんですよね。

熊本

オープンにしたかったんです。対馬は田舎ならではの文化がありコミュニティが濃い。それとは別に、新しいコミュニティをつくりたいという思いがありました。

ritokei

慎一さんと熊本さんは、昔からお知り合いなんですか?

熊本

知り合って、まだ1年半ほどです。けれど、僕は以前から、身近な友人に慎一さんの名前をよく聞いていてお会いしてみたいと思っていました。

慎一さんは自分より下の世代も否定せず、やってみようって言ってくれます。島にこういう先輩がいるのはすごく心強いです。本当に出会えてよかった。

築城

上下関係よりも、島を楽しく良くしていきたいという気持ちが強いです。

私は、穴子漁をしながら、飲食店と水産加工場を運営しているんですが、今後、古くから対馬で栽培される「対州そば」のそば打ち体験施設運営にも携わる予定です。後継者がいなくて私が取り組むのですが、今後、地域の人達も巻き込みたいと思っています。

地域や年齢の境界を超えて、選択肢を増やしたい

ritokei

慎一さんは島から出たいと思ったことはないですか?

築城

一度、出ようと思っていました。

高校卒業後、進路が決まっていなくて、母がやっていた飲食店を手伝いました。転勤の自衛隊の方などいろんなお客様がいらっしゃる中で、人付き合いの基本を学びました。

対馬にいながらでも、いろんな人と出会って、いろんな世の中を見せてもらっていて、結果的に出なくてもよかったと思っています。

ritokei

対馬の面白い人たちを見て来たんですね。最近、島を盛り上げようと若い人が帰ってきているように感じますが、どのように見られていますか?

築城

僕らがゴールを定めて繋がるのではなく、境界をなくして楽しく繋がっていけたらと思っています。島の中でのつながりはもちろん、他の離島とも繋がりたいです。

できることがあれば力になりますし、挑戦したい人の背中を押したいと思っています。

熊本

僕たち大人が「対馬でもできる」という選択肢を示したいですね。これが一番大事なことではないでしょうか。

池田

新しい選択肢が増えると、別の選択肢との間に線ができて、視野が広がるような気がします。

熊本

カフェは情報が集まるので面白いですよ。島内のお客様が9割、中でも転勤族の方が多いです。集まった情報を元に人に働きかける役割を果たしていきたいと思っています。

ritokei

対馬に嫁いできた奥様方のコミュニティにもなっているんですね。

熊本

転勤族の奥様が「ゆっくり時間を過ごす」という価値観に共感して来てくださいます。妻も対馬に嫁いできたから話しやすいのもあるでしょうね。

お店を始めてから、移住者を増やすよりも今住んでる人たちの満足度をどう上げるかにフォーカスしたほうがいいと思うようになりました。

池田

我々の対馬のお客様で、転勤族の方は「YELLOW BASE COFFEEによく行っていました」と仰る方が多いです。お店ができて2年くらいですが、お客様の心を掴まれていますよね。

熊本

妻のおかげですね。

「対馬に来てよかった」と思ってもらえるように

ritokei

対馬で暮らした人たちが、対馬に来てよかったと思ってもらえるといいですよね。

池田

我々のお客様が引越して来られるときは、新しい場所で、不安半分ワクワク半分なんですよね。私は、必ずしも定住だけが正義だと思っていなくて、仕事の都合や別の所に興味が移って離れるってことは人生にはある話だと思っています。

せっかく過ごすなら対馬で心地よく過ごして、去るのが名残惜しいくらいに楽しい思い出をつくってほしいです。そういうお客様の声が聞けるときが仕事をしていて一番楽しい瞬間です。だから、対馬にこういう場が増えていることが嬉しいです。

ritokei

島を訪れる方と地元の方との接点は多いですか?

築城

そうですね。地元の方を紹介して欲しいという方が多いです。

移住者のご家族と家族ぐるみのお付き合いをしたこともあります。幼少期は島で自然と触れ合って過ごすことをお勧めしたいです。

熊本

移住者の方の不安を解消できる地元民が必要ですよね。人を繋げるハブになりたいです。対馬は北部と南部の繋がりが少ないんですが、慎一さんのおかげで繋がるきっかけが生まれています。慎一さんの役割を、僕が南部の担当だと勝手に思っています。

ritokei

歴史のある家や店は土地との繋がりも深く、新しく繋がりづらい側面があるかもしれないですが、お二人のように同じ思いを持つ人たちが集まれば変わりそうですね。

今回、対馬のみなさんに話を聞いて、それぞれの地域での個々の役割があるのかなと感じました。新しく島に来た方々にも面白い人たちが増えているのではないでしょうか?

築城

面白い人がいっぱいいますね。そういう方が暮らしやすい雰囲気づくりを手伝いたいです。自然と繋がっていけたらいいんじゃないかと思っています。

池田

以前、海ゴミ拾いをスポーツのように楽しむイベントがあったのですが、そこに慎一さんもいらっしゃって、みんなにコーヒーを淹れてくださいました。ゴミ拾いの後に公園で談笑しました。

築城

あれはいい時間だったね。

お金にならなくてもみんなと触れ合ったり、新しい何かと出会うことが楽しいです。移住者の方にも対馬の人の良さをもっと知ってほしいと思います。

未完成だからできる。開拓精神と行動で自分たちの島に

熊本

対馬を離れてから、他の離島にも興味が沸くようになりました。

他の離島も知る人から、対馬は未完成さが面白いと言われます。移住者がまだ増えていないので、その余白が魅力なのかもしれないですね。

池田

アイランデクスは、長崎離島に3拠点、五島・壱岐・対馬にも営業所があるんですが、対馬を魅力的に感じるのは開拓者精神があるような人たちかもしれないと感じます。

個々人によって、何を魅力に感じるかは違いますよね。

ritokei

良い悪いではないんですよね。

移住者の方の不安を解消したり、コミュニティづくりなど新しい取り組みも大切ですが、改めて対馬のことを知ったり深掘りすることも大事だなと思います。

築城

自分が島の事をわかっていないことも多いので、勉強しながら、いろんな人と触れ合ったりしながら楽しみたいです。

ritokei

今、対馬では、移住者の方も地元の方々も、同じような未来を描いているように感じます。立場や年齢に関わらず、フラットに繋がりやすいタイミングかもしれませんね。

まるでみんなで自分の島をつくっていけるような、伸び代があるようにも感じます。

築城

コロナ禍が考えるいい機会になりました。行政頼みではなく、自分達で動いていきたいです。

絶対これをしなければならない、という事はなくて。自由に、集まりたい人が集まって話したりできれば。

熊本

無理をして、みんなで一緒にやる必要はないと思っています。自身が行動すれば、新しい出会いがあると思いますね。

池田

お2人とも信頼される仕事をしているから、言葉に説得力があります。

引越しだけで終わらない。対馬の未来を共に語る引越し屋

ritokei

将来、対馬を訪れる方や読者の方へメッセージをお願いします。

池田

はい。アイランデクスは対馬に営業所を置いて約2年なんですが、100名程のお客様と出会うことができました。続けていくことで信頼につながると実感しているところです。

対馬には確実に、楽しめるコミュニティ、不安を払拭できるコミュニティが増えています。

ここ数年で島を面白くしたいと願う何十人もの事業者さんとお話しました。移住をご検討される方にもワクワクした気持ちで移住や引越しをご検討いただけたら嬉しいです。

ritokei

今頑張っている皆さんはお互いに干渉しすぎず、お互い遠くで見守っている印象があります。

築城

そういう仲間が増えていますね。池ちゃんの会社にも遊びに行ったりね。

熊本

池ちゃんの会社が、対馬の入口にも出口にもなってくれているんです。必要不可欠な会社ですから。池ちゃんが知らないところで仲良くなった2人が、実はどっちもアイランデクスで引越ししたということもあって、嬉しいですね。

ritokei

アイランデクスは「ただ物を運ぶだけではない」、島々の「課題解決」がミッションであると掲げられています。

池田さんは引越し業を通じて色々な島を訪れ、あったらいいなと感じたゲストハウスを自身で立ち上げようとされています。本当に引越し業だけじゃないんですよね。

会社自体が池田さんを中心に優しい雰囲気だからこそ、大切な荷物を運ぶ仕事を安心してお任せできるように感じます。

熊本

引越し屋さんが仕事以外で島に来てくれて、飲みに行くことってないですよね。

ただの引越し屋じゃないですよね。

池田

気軽に飲みに行っちゃうような対馬のみなさんとのつながりが、大きい引越し事業者さんとの違いかもしれません。小さな会社だからできることかもしれないですね。

ritokei

対馬の伸び代、明るい未来を感じました。

>>古来から大陸と日本をつなぐ対馬の、多様な人材と交流拠点に【島で語らう引越し便・後編】続く

【関連サイト】

すし処慎一(対馬)
YELLOW BASE COFFEE(対馬)
アイランデクス株式会社 離島引越し便

関連する記事

ritokei特集