つくろう、島の未来

2024年12月14日 土曜日

つくろう、島の未来

この夏、新潟市沖に浮かぶ佐渡島(さどがしま|新潟県佐渡市)にある、人口17名の限界集落で「100人盆踊り」が開催される。イベントを企画した「地域支援戦隊palette」の兵庫勝さんに話を聞いた。(写真提供:地域支援戦隊palette)

進む高齢化と人口減少

日本海に浮かぶ佐渡島は、新潟市の沖合45kmにある大きな島。面積は854.76キロ平方メートルで、東京23区の約1.5倍の広さの土地に約6万人が暮らしている。

島内は大きく10の地区に分かれ、その多くが高齢化と人口減少の悩みを抱えている。

佐渡市のホームページに公開されている平成27年国勢調査のデータによると、昭和35年は113,296人だった島の総人口は、平成27年には57,255人に半減。年代別では、14歳以下の割合が約30.7%から約10.5%に減少する一方、65歳以上の割合が約8.6%から約40.3%に上昇。少子高齢化が急速に進んでいる。

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古くから漁業が盛んな虫崎集落

島の玄関口に当たる両津(りょうつ)地区の北端近くに位置する虫崎(むしざき)集落も、住民17名のうち65歳以上の高齢者が半数を超える「限界集落」だ。

虫崎は海に面し古くから漁業が盛んな集落で、かつては林業や稲作も行われていた。昭和30年代頃のピーク時には約80名が暮らしていたが、人口が減り続け、高齢化が進んでいる。

Uターンの若者が友人を招き、輪が広がる

虫崎公民館で館長を務める兵庫勝さんは現在30代前半。虫崎で生まれ育ち、高校卒業とともに進学のため島を離れた。関東で7年間暮らしたのちに帰島し、家業の工務店で建設業に従事するかたわら、集落の公民館長として地域のための仕事に汗を流している。

帰島した兵庫さんは、毎年盆踊りの時期になると、関東に暮らす友人らに声をかけ、来客を招いてきた。「もともと漁師町だった虫崎集落の人たちは、気質がさっぱりしていて、外からのお客さんに対してオープン。若い人たちが来てくれることを集落の人たちも喜んでいます」と兵庫さんは語る。

虫崎集落の人たち

集落の住民たちは「虫崎出身でなくても、ここを心の故郷にしてもらえたら」と、バーベキューなどを開いて島外からのゲストをもてなし、交流を続けてきた。その楽しそうな様子を見て、盆踊りを楽しみに帰省する集落出身の若者やその子どもたちが、少しずつ増えてきたという。

ここ数年は、虫崎集落の盆踊りに毎年30名ほどが島外から訪れている。「小さな頃から盆踊りに来ていた子どもが、成長して自分一人でも来られるようになったからと、盆踊りのために帰ってきてくれたときは、感激しました。」(兵庫さん)。

集落に100人集める盆踊り

この春、兵庫さんは佐渡島の商店主や役場職員、佐渡市地域おこし協力隊らと島のPRや地域おこしに取り組む「地域支援戦隊palette(パレット)」を結成した。

生まれ育った虫崎集落の良さをたくさんの人に伝え、将来も関わりを持ってもらうきっかけをつくりたいと考えていた兵庫さんは、「パレット」の仲間たちの力も借りて、この夏虫崎集落により多くの人を集める「100人盆踊り」を企画した。

「集落の皆さんが元気なうちに、思い出をつくりたい。集落への移住などに直接つながることはないかもしれないですが、先ずはたくさんの人に虫崎を知ってもらい、景色の美しさや人の温かさを感じていただけたらうれしいです」と兵庫さんは語る。

老朽化した校舎を補修、食事の提供やゲームなども企画している

近年の盆踊りは、高齢者も通いやすいよう低地にある空き地で行われていたが、兵庫さんの子どもの頃は、33年前に閉校された内海府(うちかいふ)小学校虫崎分校の校庭がつかわれていたという。今年は大勢を収容できるよう、久しぶりに会場を虫崎分校の跡地に移すことになった。

しかし、放置された校庭では雑草がはびこり、校舎や校庭のフェンスにツタがからまる。校舎の床も損傷が激しかった。兵庫さんたちは「100人盆踊り」の参加者が安全に楽しめるよう、当日までに分校周辺の草取りや老朽化したフェンスの撤去、体育館の床補修などを行う計画を立てている。

これらの作業には、佐渡島の島内から集まる有志のボランティアと、研究活動のため来島する新潟大学の学生らが加わる。工事などの費用は、地域行事を補助する助成事業などを活用してまかなう計画だ。

佐渡島の東岸に面したグラウンドからは、美しい朝日が望めるという。「100人盆踊り」の行事が終わった後は、グラウンドや空き校舎の観光への活用なども検討されている。

「100人盆踊り」は、8月13日に予定されている。
「佐渡島には見所がたくさんありますが、小さな集落の魅力は通り過ぎただけでは分かりません。ぜひたくさんの人たちに来ていただき、虫崎集落で思い出をつくってほしい。そして田舎に帰ってくるような気持ちで、また私たちに会いに来てくれたら、うれしいです」と兵庫さんは話す。

     

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