2015年8月、徳之島(とくのしま|鹿児島県大島郡)の伊仙町(いせんちょう)は、都市部の中高年層を対象にした移住促進施策「離島版CCRC(※1)の推進による地方創生事業」を開始。内閣府地方創生推進室による「地方創生推進交付金」を活用し、日本版CCRC構想有識者会議が掲げる日本版CCRC「生涯活躍のまち」(※2)を40〜50代向けに改め、離島版として取り組む。
※1 CCRCとは…Continuing Care Retirement Communityの略称。アメリカが発祥の高齢者向けライフスタイル。CCRCでは、住宅、医療、介護を快適に整備したコミュニティを準備し、高齢者の自立と健康への要求に応じる。
※2 日本版CCRC「生涯活躍のまち」とは…東京圏をはじめとする地域の⾼齢者が、希望に応じて地方や「まちなか」に移り住み、多世代と交流しながら健康でアクティブな⽣活を送り、必要に応じて医療・介護を受けることができるような地域づくり([日本版 CCRC 構想有識者会議『「生涯活躍のまち」構想(最終報告)』(2015)]より引用)
伊仙町の伝統行事 イッサンサン(むちたぼれ)のワンシーン
40代・50代の働く世代から二地域居住を希望する声も
農林水産省九州農政局の2010年度「人口1万人当たり100歳以上割合」では全国平均3.43人に対し、徳之島3町(伊仙町、徳之島町、天城町)の平均は19.15人。加えて、1995年までギネスブック公認の世界最長寿だった泉重千代さんも伊仙町出身であることから、徳之島は健康長寿の島(町)として知られている。
一方、厚生労働省が2014年に発表した「平成20~24年 人口動態保健所・市区町村別統計」によると、徳之島の全3町が「市区町村別にみた合計特殊出生率」の上位10市町村以内に入り(伊仙町は2.81人で1位になった)、子宝に恵まれる島とも呼ばれている。
しかし、徳之島の人口推移を見ると、1955年の50,932人から2010年には25,587人まで減少([鹿児島県大島支庁編『平成27年度奄美群島の概況』(2016年4月)、「人口・労働力」]参照)。
そこで人口減少施策として伊仙町で「離島版CCRCの推進による地方創生事業」が始まった。
徳之島名物のひとつ、闘牛のワンシーン
同事業を担当する伊仙町役場地方創生推進室の担当者は「アメリカでは空いた施設を利用して、CCRCがつくられている。ただ、アメリカのCCRCは退職した高齢者を対象にするリタイアメントコミュニティが主流。離島版CCRCでは、リタイア前のアクティブシニア(40〜50代の働く世代)から第二の人生として徳之島での生活をはじめてもらえるような地域づくりをしていきたい」と話す。
伊仙町では2015年8月に「地方創生推進交付金」に応募し、2015年末に交付が決定。2016年1〜3月に徳之島への「お試し移住」が企画され、7〜10日間に11人の都市在住者が島の生活を体験した。
2月27日に東京都千代田区の全国町村会館で開催された「伊仙町生涯活躍のまちシンポジウムin東京」には、約300名が参加。寄せられたアンケート結果から、二地域居住への関心が集まったと担当者は話す。アンケート結果は今後の事業に活用されるという。
「定住や二地域居住を安心して始めてもらえるよう、住環境の整備や地域包括的なケアシステムの確立に努める。地域には助け合いの人間関係が残っているので、第二の人生を楽しくすごしてもらいたい」(伊仙町担当者)。
【関連サイト】
伊仙町公式サイト