つくろう、島の未来

2024年11月21日 木曜日

つくろう、島の未来

2018年、ユネスコの世界文化遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」に登録された黒島(くろしま|長崎県佐世保市)。島のシンボル「黒島天主堂」だけではない、じんわり温かな魅力があふれています。

させぼ黒島の秘密では、黒島に暮らす3人が“島の住民だからこそ知っている島の魅力”を、様々な角度からご紹介。第6回目は地域おこし協力隊として黒島で活動する初田育子さんが健康的に島を巡ることができるランニングコースを走ります。

世界文化遺産の島を走ってめぐろう!

皆さんは「走ろう日本プロジェクト」を知っていますか?

ランニングという観点から日本を再発見しようというこのプロジェクト。実はその中の「長崎のランニングコース10選」に選ばれたコース「九十九島最大の黒島一周コース」が黒島にあるのです。

今回、「九十九島最大の黒島一周コース」を実際にまわってみました。

まずは黒島天主堂から反時計回り(東回り)でぐるっと島を一周する約9キロメートルのコース。黒島の名所も多く通るため、写真と共にご紹介させて頂きます。

黒島天主堂から反時計回り(東回り)に港へ

黒島天主堂を抜けるとゆるやかな登り坂に差し掛かります。そこから少し平坦な道になり黒島の名所「根谷のサザンカ」や「アコウの巨木」を抜けると、まるでフラワーロードのように島民の方が育てた花が左側の道路沿いに咲き誇り、右手には海が広がります。


冬の時期は朝7時過ぎくらいに写真のような美しい朝日が見られます。

ここは映画『坂道のアポロン』のロケ地にもなった場所のため観光スポットとしてもおすすめです。見晴らしのよい場所を抜けると今度は山道のような場所がしばらく続きます。山道と表現しましたが、高低差はあまりなく森林をジョギング感覚で走れるようなところです。

         

天気の良い日には木々の間から木漏れ日が差し、トンビの鳴き声が響きわたる森だけに、森林浴をしているような気分でした。

「夜はイノシシが出る」と島の人に言われましたが、私の走った昼間はイノシシの気配はなく散歩中の猫と遭遇しただけ。そしてしばらく森の中を走ると、ようやく開けた場所に出てきます。

実はこのコース沿いにも黒島の名所の一つである「名切砲台跡の洞窟」があります。少し奥まった所に標識があるので来た方向によっては見落としてしまいがち。私も今回、走っているうちに見落としてしまいいつの間にか通り過ぎていました。皆さんがこのポイントを走られる際は少しペースダウンして標識を探してみてくださいね。

砲台跡の前後のコースには右手に田畑が広がりのどかな農村風景が広がります。そこから少し森のような道を走るとコンクリートの建物が見えてきます。

この建物は黒島のシスターたちが暮らす修道院です。コースからは外れていますが、修道院のまわりにはシスターたちが丹精こめてお世話をされている季節毎に違う花が見られますので個人的にはおすすめの場所です。修道院辺りからは島の北側を港へ向けて走って行きます。

この道は島の人たちに通称「下道(したみち)」と呼ばれています。修道院から港に出る道は2通りあり島の外周を通る「下道」と、島の中心部へ入っていく「中道(なかみち)」と呼ばれる道があります。中道は島の中へ入っていく道なので、道も森のよう。森林浴や森林散策をされたい方にはおすすめの道です。

「九十九島最大の黒島一周コース」になっている下道は海沿いを走るコースなので、走っていると場所によっては波の音や船の汽笛が聞こえ、海が見渡せるポイントも。ゆるやかな下り坂で比較的走りやすい道が続きます。

古い建物の横を通り過ぎ、黒島港へ続く短い橋を渡ってようやく到着。「九十九島最大の黒島一周コース」の半分まで来ました。

港から時計回り(西回り)に黒島天主堂へ

次は、港から時計回り(西回り)に黒島天主堂へ向かいます。今回の一番の難所である最長の上り坂からのスタートです。

港から黒島天主堂へ向かう最短コースですが、始まりにある上り坂は大抵の観光客の方が躊躇されるほど長く、傾斜のある坂です。走って上ろうとしても続かず途中からは歩いてしまいました。

10分ほど歩くと道が2手に分岐。左に進めばゆるやかな上り坂ですが黒島天主堂までの最短コース(といっても20分はかかりますが)、右に進めば道は平坦ですが遠回りのコース。

いつもなら最短コースを選びますが、今回はマラソンコースに沿って遠回りのコースを行きました。この時、すでにスタートしてから一時間近くが経過。黒島に暮らしていても、普段は車移動ばかりの体では走ることも出来ず、ほぼ歩いていました。

分岐点から進むこと数分で右手に「本村(ほんむら)役所跡」が見えてきます。

建物は現存しておらず今は公園になっていますが、黒島の潜伏キリシタンの歴史を語る上で重要な「絵踏」が行われた場所として知られています。

「本村役所跡」からは先ほどのような急な上り坂はないものの、穏やかな坂は続きます。役所跡を過ぎるとマリア観音(現存はしておりません)が発見されたとされる「興禅寺」が見えてきます。

実は、「興禅寺」を少し降りたところに絶景の撮影スポットがあります。時間があれば是非いってみて下さいね。

ここで少し体力が回復してきたこともあり平坦な道なら軽く走れるようになりました。お寺を過ぎ、しばらく走ると牛小屋があります。天気が良い日には外に出ている牛に遭遇することもあります。ちょうど1〜2ヶ月前に子牛も生まれたそうなのですがこの日は曇り空のため見られませんでした。

しばらくゆるやかな上り坂が続き、二股に分かれた広い道に出ます。右側は県指定の天然記念物「串ノ浜岩脈」に続く道です。細い道ですので対向車が来るとすれ違えない場所もあり、車の運転に慣れていない人にとっては勇気がいる道です。

左側は黒島の絶景スポット「蕨(わらべ)展望所」へ続く道。今回は「蕨展望所」に続く道を走ります。「蕨展望所」からは晴れた日には左手に崎戸町、右手には上五島を臨むことができ、旅客船や(運がよければ)海上自衛隊などの艦船を見ることもできます。

「蕨展望所」には写真のように黒島の名産「御影石」でつくられたテーブルと椅子があります。天気の良い日には観光客はもちろん、島の人たちが休憩していることもあります。

蕨展望所を後にするとゴールまであと2km。ゴールは目前ですが、最後の難所の坂道が待っています。

坂道は黒島の中心地に向かって進むため海は見えなくなりますが、島の西側を通るこのルートにも、東側ルートとは違った花や落葉樹があり退屈しません。花々を楽しみながらしばらく行くと下り坂に差し掛かり、下り坂を折りきって4辻を右手に曲がれば、ゴールの黒島天主堂です。

ここまでで約1時間30分。一周まわってみると、黒島の名所を効率よく廻れるコースだと実感しました。ランニングが難しい方でも楽しめるようウォーキングもいいのでは? と構想中です。

黒島の名所を健康的にめぐるランニングコースを、みなさんも楽しんでみませんか?

     

離島経済新聞 目次

世界遺産・させぼ黒島の秘密(PR)

2018年、ユネスコの世界文化遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」に登録された長崎県は佐世保市の離島・黒島(くろしま)。「させぼ黒島の秘密」では黒島に暮らす3人の女性が、“島の住民だからこそ知っている島の魅力”を、様々な角度からご紹介します。
【おすすめリンク】
・"花群れる"祈りの島 黒島(佐世保・小値賀「海風の国」観光情報サイト)
・黒島へ旅する(黒島観光協会HP)

関連する記事

ritokei特集