つくろう、島の未来

2024年12月14日 土曜日

つくろう、島の未来

壱岐島(いきのしま|長崎県)で、祖父母が創立した水産会社にIターン就職した30代女性が新たな販路開拓を目指し、壱岐島名産のウニを使った加工品のパッケージや容量をリニューアルした新商品を開発。ホームページを開設しオンラインショップでの販売をスタート、SNSでの情報発信にも取り組んでいる。(写真提供:壱岐水産株式会社)

定番品のパッケージや容量をリニューアルした「粒うに」「粒うにと貝」「うにめしの素 2合用」

自社商品の強みと市場のニーズを知る

11月末、壱岐島の水産加工会社「壱岐水産株式会社」が、新たな販路獲得を目指して開発した新商品を発売した。新商品は、上質なウニを瓶詰めした「粒うに」(35g)、ウニと貝の和え物「粒うにと貝」(40g)、「うにめしの素 2合用」(100g)の3品で、これまで人気のあった定番商品の容量やパッケージを見直し、少人数や個食に対応した少量パッケージで、若い人や女性が手に取りやすいデザインにした。

商品企画を担ったのは、福岡県出身でIターン者の渡辺菜津美さん(30歳)。幼い頃から祖母の暮らす島へ通っていた渡辺さんは、かねてより地域に根ざしたものづくりや地域活性を仕事にしたいと考えていた。そして2016年の夏、祖父母がかつて経営していた会社が若手を募集していることを知り、手を挙げたという。

渡辺さんが入社したのは、島で酒蔵を営んでいた渡辺さんの祖父が壱岐産のウニを島外へ出荷するために地元の有志と創業し、祖母も経営に携わった水産加工会社だ。

営業職として入社した渡辺さんが始めに取り組んだのは、得意先への挨拶回りだった。手書きのお取引先一覧を片手に一軒一軒取引先を訪問し、市場で求められているニーズを聞き取ることから始めた。

当初、市場に出回るウニ加工品はどこも同じようなものだと考えていた渡辺さんは、得意先を回るうちに、気候や時期によって状態の変化する素材に合わせて絶妙に味を整えることができるのが自社の強みであり、自社商品のファンが数多く存在することを知った。

自社の商品に自信が持てた一方、顧客は高齢の固定客がほとんどだった。新規の若いファンも獲得していく必要性を感じた渡辺さんは、若い世代に馴染みがないウニ加工品を気軽に楽しんでもらえるよう、商品開発に取り組んだ。

定番品を若者が手に取りやすいサイズとデザインに

食べきりサイズの小瓶入りウニと貝の和え物「粒うにと貝」(40g)

客先で聞き取った市場ニーズを参考に自社商品を分析すると、税込で3千円を超える高額商品は容量が多いことが分かった。そこで、人気のあるウニの瓶詰めとウニと貝の和え物の食べきりサイズを開発。最も売れ行きの良い「うに釜めしの素」(3合用)には、現在市場で主流となっている2合用もラインナップに加え、いずれも千円〜2千円程度の手に届きやすい価格に抑えた。

壱岐島の郷土料理「うにめし」が簡単につくれる「うにめしの素 2合用」(100g)

また、渡辺さんは若い人が手に取りたくなるようなデザインを求め、市場に流通する商品の研究を重ねた。「この人にパッケージのデザインを頼みたい」と思うデザイナーを見つけると、熱い思いを伝えて新商品のパッケージデザインを依頼し、快諾を得たという。

こうしてできあがった3商品に祖母の代からの定番商品も加え、ホームページを開設し、情報発信とオンラインショップでの販売をスタートさせた。

左:カルパッチョ「粒うに」のせ/右:クリームチーズと「粒うにと貝」のディップ

渡辺さんは若い女性らにウニ製品を食べてもらうためのメニュー開発も自ら行い、レシピを掲載したリーフレットを商品に同梱している。「ウニをより身近に感じてもらい、楽しんでほしい」と、SNSを利用した情報発信にも取り組んでいる。


【関連サイト】

壱岐水産株式会社

     

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