つくろう、島の未来

2024年11月21日 木曜日

つくろう、島の未来

【レオナルド・ダ・ヴィンチに出逢いたい】5月19日、東京・渋谷で開催中の「レオナルド・ダ・ヴィンチ 美の理想展」に沖縄の4つの離島から4人の中学生が訪問。1日を追った。

5月19日、沖縄の4つの離島から4人の中学生がやってきた。
沖縄の離島に暮らす子どもたちを支援する、
一般社団法人 おきなわ離島応援団 (今井恒子理事長)が、
「小さな離島のこども達と人類遺産ふれあい」プロジェクトの一環として、
東京・渋谷のBunkamura ザ・ミュージアムで開催されている
レオナルド・ダ・ヴィンチ 美の理想展」へ中学生を招待し、
作文審査により、4人が選ばれた。
1週間前、同団体理事の白仁 昇(しらに・のぼる)さんにこの話を聞き、
彼らに会いたくなった私(編集長・鯨本)は、1日同行させてもらった。

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[1]「レオナルド・ダ・ヴィンチに出逢いたい」

「沖縄には39の離島があります。
そのうちの10島はお年寄りだけの島で、
小中学校があるのは29島、そのうち高校が存在しているのは
久米島、石垣島、宮古島、伊良部島の4島だけです」
と、おきなわ離島応援団理事の白仁さんは語る。

全国約430の離島のうち半数近くは人口500人以下であり、
高校が設置されない島の方が当然多いが、
人口1,000人台でも高校のある島もある。

「高校進学率が全国で97%というなか、高校は実質上の義務教育です。
離島の子どもたちは中学を卒業すると高校がある4島もしくは、
沖縄本島に進学しますが、親の経済的負担も相当です」

小さな離島の子どもたちは豊かな自然には恵まれているものの、
なかなか本物の芸術に触れるチャンスは少ない。
島の宝である子どもたちに将来の糧となる体験やチャンスを与えられるよう、
このプロジェクトはスタートした。

「レオナルド・ダ・ヴィンチに出逢いたい」をテーマに作文を公募し、
離島経験のある元校長などから構成される選考委員会により、参加者が選ばれた。

「でも、ドラマもあったんです」と、白仁さんは語る。

「今回、離島の中でも高校がない島の中学生を対象にしていました。
募集の情報は沖縄タイムス、琉球新報、八重山毎日新聞等に掲載されたんですが、
八重山毎日新聞をみた石垣島の女の子から電話がかかってきたんです」

人口4万5,000人の石垣島は大きなだけに、高校はある。
しかし女の子がみた記事からは「高校がない島」という記載が抜けていたらしい。
募集の〆切まで残りわずか。
白仁さんは「高校がない島が優先される」条件を告げた上で、
女の子に作文を送ってくるよう、チャンスを与えた。

数日後、問い合わせのあった石垣島の女の子から届いた作文に綴られていたのは、
将来、芸術大学にいくために1人でデッサンの勉強をしていることや
いつかはイタリアのフィレンツェで勉強がしたいと思っていること、
そのフィレンツェに深く関わっているレオナルドの作品を見てみたい、
という、熱く純粋な想いだった。

選考委員は、満場一致で石垣島の女の子も招待することに決めた。

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5月19日 正午過ぎ、羽田空港に一行が到着。
出発したのは南から波照間島、石垣島、久高島、北大東島。
それぞれの島から沖縄本土に渡り、那覇から羽田へ。
日本最南端の波照間島の男の子と北大東島の女の子は、交通事情から、
一日早く島をでて祖父や親戚の家に泊まってきたそうだ。

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モノレールで渋谷へ向かう途中、
疲れもみぜず目を輝かせながら、それぞれデジカメを構え、
モノレールの窓からスカイツリーを探す一行。

「ダ・ヴィンチ展」が目的ではあるが、
普段は人口数百名の島に暮らしている彼らにとって
東京に来ること自体、一大イベントだ。

途中、昼食に立ち寄った高層ビルから東京の街を見渡しながら、
この風景が彼らの目にはどのように映るのか、気になった。

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>> [2]へ続く

     

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