伊豆諸島北部に位置する伊豆諸島最大の島、伊豆大島。移住から5年経つ今も、島の魅力発掘の冒険にいそがしいデザインユニット「トウオンデザイン」。彼らが運営しているコミュニティースペース『kichi』での活動や日々の出来事をつれづれに。
災害を乗り越えて
早いもので伊豆大島を襲った台風26号による災害から2ヵ月が過ぎました。
ある日、「子どもたちを喜ばせるようなクリスマスイベントをしたい」と連絡をくれた友人がいました。
彼は、新聞やガムテープでかぶり物をつくってモンスターに変身するワークショップを行っている「モンスターズ」というグループのメンバーで、昨年元町港の船客待合所で開催した「ハトバ聖夜祭」を盛り上げてくれましたが、今回もモンスターズをkichiでやったらどうかと、お話を持ちかけてきてくれました。
僕らも依然として被災されて大変な思いをされている方がたくさんいらっしゃるなかで、少しでも明るさと元気を取り戻していけるような活動ができないだろうかとあれこれ考えている最中で、今回のお話は前向きに動き出すきっかけになるし、何より子ども達が喜ぶようなイベントは必要であると考え、動き出しました。
ちょうど同じ時期、本コラム「#3 夏ゼミとの出会い」にご登場いただいた“夏ゼミ”の幹部やOB、7名が、現在の伊豆大島の状況を見たいということで来島することになりました。
そして、実際に夏ゼミが来島したのは12月14日(土)。ちょうどクリスマス会を開催する日と重なりました。到着後、早速、夏ゼミが昨年の夏に手がけたホテル椿園さんの敷地内の椿亭へ向かいました。 現場に到着するなり、そのあまりの変わりように夏ゼミの皆は言葉を失いました。
昨年の夏に61人の夏ゼミメンバーで手がけた椿亭がほとんど流されて、今は土台の形が僅かに残されただけの状態になっていました。また、その周囲は多くの木が生い茂る森のような場所だったのが、すっかり開けた場所に様変わりしていたのです。
そんな中、ホテル椿園の女将さんは丁寧に災害発生時の状況や敷地内の被害状況等を細かく説明してくださいました。そして「よく来てくれたね!ホント嬉しいわぁ!」と夏ゼミの訪問をとても喜んでいたのが印象に残っています。
夏ゼミの皆は本当にショックだったと思うけれど、現実を見つめることで次に進むべきことが見えてきます。 何よりホテル椿園の女将さんは前を向いています。 そんな被災現場の横で椿の花が陽の光に照らされて美しく鮮やかに咲いていました。
そして、kichiに戻ってクリスマス会へと。
モンスターズのワークショップの他に子ども服のチャリティフリマ、クッキーにチョコペンで絵を描いて遊ぶワークショップ等を行いました。クリスマスツリーにはキャンディーやクッキーをたくさん飾って、自由に持ち帰れるようにしました。 来場者は予想を上回り大盛況!台風被害から、島内ではほとんどのイベントが中止・延期となっていましたが、この日は明るく楽しい気分を久しぶりに味わうことができました。
何より子ども達の笑顔がたくさん見られたことは、僕たちにとって本当に明るい希望になりました。 夏ゼミのメンバーも子ども達と遊んでほっこりしたのではないでしょうか。
“子ども達の笑顔”といえば、kichiとの関わりの中でもう一つ動きがありました。
台風26号により甚大な被害を受けた伊豆大島に対して、大島を故郷にもつ者たち、大島を愛する者たちが、なにか恩返しができないか、また大島の将来のためになにかできないか、ということを真剣に考え活動するグループが生まれました。
その名も「Shimile(シマイル)」
大島+smile(笑顔)=Shimile(シマイル) 現在の主な活動は募金活動やチャリティイベント等ですが、その他にも大島で暮らす人のため、ひいては大島のためにできることを、島内、島外に関わらず活動していきたいと考えているそうです。Shimileは島外と島内に暮らす大島出身のメンバーから成ります。つまり、島の中だけでなく、島外との連携による活動もできる大島の新しい動きだと思います。
今回、そんなShimileのロゴ制作を担当させていただくことになりました。 そして、彼らの理念に合致するカタチやイメージを探り、辿り着いたのがこれです。
島+スマイルということで、カタカナの「シマ」でスマイル君に仕立てあげました。 笑顔は未来へつながる。未来は子ども達。 そんな子どもの「エヘッ」みたいな顔は明るく・お茶目で、Shimileがいつも元気を与えてくれる存在という意味を込めました。
Shimileのような前向きで積極的な活動が生まれていること。とても嬉しいことであり、心強いことです。kichiとしても彼らの力になりたいし、一緒に手をとって伊豆大島の未来のために活動していけたらと思っています。
今回の災害は伊豆大島に大きな被害をもたらしましたが、今回お話しさせていただいた内容だけでも、多くの仲間が伊豆大島の為に前を向いて進んでくれていることが分かります。本当にありがたいことだし、災害という大きなピンチはきっと大きなチャンスに変えられるものと信じています。まだまだ伊豆大島は大変な状況ですが、明るい希望を持ち続けて日々活動していきたいと思います。