つくろう、島の未来

2025年12月15日 月曜日

つくろう、島の未来

島の発酵文化を世界へ

鹿児島県・奄美大島の南西端に位置する瀬戸内町。大島海峡を抱く港町であり、加計呂麻島請島与路島という三つの有人離島を有する、全国でも珍しい地域です。私がこの町を訪れたのは三年前。離島での暮らしに惹かれ、同時に古来より受け継がれてきた発酵飲料「ミキ」に興味を持ったことがきっかけでした。

ミキとは、沖縄や奄美群島で伝わる発酵飲料です。沖縄では米と麦を、奄美では米とサツマイモを発酵させます。神事や祭りの供物として作られてきましたが、乳酸菌が豊富で腸を整える作用もあり、長寿の島を支える知恵ともいわれています。

市販品も出回っていますが、自分の手で仕込む一杯の味わいは格別です。材料を混ぜ合わせ、時間とともに変化していく香りや酸味を確かめながら、丁寧に暮らす大切さを実感します。また人が集い、一緒につくる時間には、自然と笑顔が生まれ、心も豊かになります。

さらに瀬戸内町には、もう一つ誇るべき発酵文化があります。それが 「きび酢」です。サトウキビの搾り汁を自然発酵させ、三年近く熟成させてできあがる希少なお酢で、加計呂麻島で主につくられています。

まだ広く知られていない奄美の発酵文化。そこには、自然と人の営みが織りなす知恵と喜びが詰まっています。この魅力を島から世界へと発信し、発酵を通じて人と人がつながり、集う楽しさを広めていきたいと思います。


野崎久美(のざき・くみ)
大分県出身。2022年より離島暮らしを始め、現在は奄美大島・瀬戸内町へ移住。地域おこし協力隊として活動しつつ、「あまミキプロジェクト」で、奄美のソウルドリンク発酵ミキのワークショップ「みき日和」を主宰し、島の発酵文化を発信中





     

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