天候の影響を心配せずに島への船旅を楽しんでもらおうと、この夏、鹿児島県旅客船協会は、奄美群島(あまみぐんとう|鹿児島県)を発着・経由する船舶便が悪天候により欠航・抜港した際、旅行者の延泊費用を補償する船舶欠航補償制度をスタートさせた。実施期間は7月から来年2月まで。
写真提供:マリックスライン株式会社
保険で欠航時の延泊費を肩代わり
鹿児島県と沖縄県の中間に位置し、奄美大島(あまみおおしま)、加計呂麻島(かけろまじま)、請島(うけしま)、与路島(よろしま) 、喜界島(きかいじま)、徳之島(とくのしま)、沖永良部島(おきのえらぶじま)、与論島(よろんじま)の有人8島が連なる奄美群島は、「台風銀座」とも呼ばれ、夏の終わりから秋にかけて毎年のように台風が襲来する。
奄美群島には鹿児島県本土や沖縄と奄美群島を結ぶ定期フェリーが毎日運行しているが、台風などの悪天候時は欠航し、台風が過ぎた後も高波の影響で欠航が長引くケースがある。
そこで、奄美群島への船旅の利用促進を図る鹿児島県旅客船協会は、鹿児島県の「奄美群島交流需要喚起対策特別事業」を活用した社会実験として、航路事業者や東京海上日動火災保険と協力し、船舶欠航補償制度を設け、7月1日から運用をスタートさせた。
提携する旅行会社23社が企画した奄美群島を発着・経由するパッケージツアーで、7月1日から来年2月28日までに出発するツアー参加者が対象で、旅行者による申し込み手続きは不要。
悪天候により乗船予定の船舶便が欠航・抜港した場合に、ツアー参加者は旅行会社が手配したホテルに宿泊できる。補償の上限は1人あたり朝・夕食代込みで1泊1万5千円で2泊分まで。
対象となる航路は、鹿児島―沖縄(マルエーフェリー/マリックスライン)、鹿児島―喜界―知名(奄美海運)、阪神―沖縄(マルエーフェリー)、瀬相―古仁屋―生間(瀬戸内町営フェリー)、与路―古仁屋(同)。2次離島の加計呂麻島や、請島、与路島も含めた、奄美群島の主要な定期航路が対象となっている。
交流人口増への期待
鹿児島県と東京海上日動火災保険は、今年3月に地方創生に関する包括連携協定を締結。今回の船舶欠航補償制度は、その一環として実施され、全国でも先進的な試みとなる。事業費はPR動画制作など広報費を含めて約1,500万円を見込んでいる。
船会社のマリックスライン株式会社の上塩入誠さんは、「奄美群島への船旅を扱う多くの旅行会社が制度に参画しています。ゆったりとした時間を楽しめるのが船旅の魅力ですが、悪天候の際は影響を受けやすい面もあります。制度が船旅を楽しむ方の安心安全につながり、奄美への観光旅行を楽しむ方がより一層増えてくれればうれしいです」と期待する。
鹿児島県交通政策課長の寺前大さんによると、8月の台風5号の影響で発生した船舶欠航について、39名の利用が見込まれているという。「船旅のマイナスイメージを払拭し利用促進を図ることで、奄美群島の交流人口拡大と地域活性化につながれば」と話す。