つくろう、島の未来

2024年11月25日 月曜日

つくろう、島の未来

こんにちは! リトケイの本間です。

島に行きたい私と新型コロナウイルス感染症との付き合い方に良案は見つかっていませんが、相変わらず島への移住機会を伺っている日々を送っています。

さて、そんな悶々とした私の心はさておきに、この1年は「ワーケーション」(「ワーク」と「バケーション」を組み合わせた造語)という言葉がいっきに普及し、島に限らず多くの地域でワーケーションに関する新しい取り組みを目にしました。

「いつか島に住みたい」と夢を見る人は自分だけではないと思いますが(特にリトケイ読者の中にはたくさんいらっしゃるかと思います)、島にお住まいの人からすれば「誰でもウェルカム!」というわけでもないと感じています。島の風土にもよるかと思いますが、人口わずかな島になればなるほど、移住してくる人間がたったひとりであっても、島に与える影響は大きくなります。そうなると、島側も慎重にならざるを得ないのが現実だと思います。

欲を言えば、島の気質に「合う」人に住んでもらいたいのが、島側の本音かもしれません。そして、島に住みたい人も、自分に「合う」島に移住できるのが理想ですよね。

そういう観点でもワーケーションは良い機会になります。島に住んでみたい人と、移住者を迎え入れたい島が、お互いの理解を深める時間が得られるからです。

しかし、もともと観光で成り立っていた島がワーケーションの受け入れをはじめるとすれば、しっかり仕事を行えるワーク環境の整備が必要。
そんな中、パソコンひとつあれば仕事ができるリモートワーカーでもある僕は、式根島(しきねじま|東京都)がコワーキングを整備してワーケーションの受け入れ体制を整えていると伺い、島に向かいました。

式根島についてご紹介します!

地理では、東京から約160キロメートルで周囲は約12キロメートルの小さな島。行政区は新島村に属していて(新島はすぐ隣)、人口は512人(令和3年3月1日現在)。自然環境では、富士箱根伊豆国立公園の一部であり、波の静かな入江が多く、美しい海岸線があります。

歴史的な観点では、江戸時代までは無人島で、開島して134年とのこと。特産品はアメリカ芋(白いお芋)、タカベ(伊豆諸島では知らない人がいない美味しいお魚)、たたき(お魚のすり身)、明日葉など。

観光名所は、海水浴場(泊海水浴場、大浦海水浴場、中の浦海水浴場、石白川海水浴場)に、24時間無料で利用できる温泉(地鉈温泉、足付温泉、松が下雅湯)※水着着用、屋内温泉(憩の家)、展望台(神引展望台、足地山展望台、ぐんじ山展望台、御釜湾展望台)など。

アクセスは主に3通りあって、東京・竹芝桟橋から大型船で約10時間(船内で1泊して翌日朝に到着)かけて渡る、もしくは東京・竹芝桟橋からジェット船で約3時間、もしくは調布飛行場から約30分で新島に渡り連絡船(約15分)で式根島に渡るというのがスタンダードです。

2020年11月にオープンした式根島コワーキングスペース

モニターツアーを開催するだけに、式根島では「島でワークができる環境」を整えているとのことですが、リモートワーカーにとって何があれば良いと言えるのでしょうか。

私の場合は以下の3つ。

①通信環境が良い(Wi-Fiが使える環境があることを含む)
②コワーキングスペースなど拠点となる場所がある
③宿を含め会議室が複数ある


実際、私の場合は①さえ良ければ、どこでも仕事ができるのは正直なところ。
少人数であれば、宿を中心に仕事をすることもできるかもしれませんが、ある程度のリモートワーカーを受け入れるとすれば、やはり②や③が必要になってきます。

コワーキングスペースだけでなく、それと同等の機能を持つカフェなどの開かれた場所があれば、ワーケーションの利用者と島に住んでいる方々とのつながりが生まれることもあるでしょう。

人と人が出会うきっかけといえば、民宿などでの食事の時間は島の人やお客さん同士での交流が生まれやすい大事な瞬間ではありますが、今時期はコロナ禍にあるため、黙々とおいしいご飯をいただきました(コロナのばか!)。

民宿・源兵衛の夕食

ちなみに式根島は周囲12kmとコンパクトな島まわり。

コワーキングスペースや多くの宿から24時間入れる温泉(松が下雅湯)まで、自転車で10分もかかりません。

さっとひとっ風呂入れるだけではなく、穏やかな海岸線が美しい泊海岸など島内各所でもフリーWi-Fiが利用できるため、気分転換をしながらワークをすることができます。

温泉は地域の人たちも日常使いをされていますので、ちょっとした雑談も心が緩む時間となります(もちろん今はソーシャルディスタンスを確保しながらですが…….)。脇道に入れば、さながらスタジオジブリの映画(アニメ)に出てきそうな世界が広がり、心癒されます。

まるでジブリ?!な島の風景(写真提供・河合将吾)

と、僕が体験した式根島のワーケーションは通年で楽しめる話です。

島は春夏秋冬でさまざまな顔をみせてくれますが、もしも島をじっくり知りたいという欲をお持ちなら、僕は「オフシーズン」のワーケーションをおすすめします。
島に人が集う夏場のハイシーズンはにぎやかではあるものの、島で暮らしている人々も忙しく、さらにキラキラと輝く海の誘惑を前にワークを続けられるタフなメンタルを持っていないかぎり、仕事をよそに海に飛び込んでしまうかもしれません。

一方、オフシーズンは島の人たちも心なしかゆったりとしていて、海も飛び込むには冷たく、仕事に向かいやすい環境となります。そして、何よりも冬の時期は星空が抜群に美しく、仕事を終えた後の夜空を眺めるだけで、私の心は満たされます(ただし、オフシーズンのなかでも特に冬時期は、船の着岸率が下がるためその点だけはご注意ください)。

満点の星空(写真提供・河合将吾)

式根島に向かうアクセスでいえば、夜に東京・竹芝港を出航してレインボーブリッジをくぐる「さるびあ丸」はこの上ない旅情に満ちていますし、調布飛行場から飛行機でアクセスすれば意外なほどすぐに到着します(新島まで約40分のフライト、新島から式根島まで連絡船で15分!)。

個人的には、行きは「さるびあ丸」、帰りは新島経由の飛行機を利用すると時間的にも体験的にも一番充実できるコースではないかと思います。

ぜひ見ていただきたい美しい夕日

島にいると都市部のような広告物も少なく、目に入ってくる情報が少ないことに気がつきます。

のんびりとした時間に身体だけではなく気持ちもほぐれていき、呼吸が深くなり、とてもリラックスできます。しっかりと集中して仕事をした後のこの時期の一番の楽しみは、ゲストハウス肥田文の方に案内いただく、夜の地鉈温泉。真っ暗な海中温泉で、月明かりを頼りに1時間ほどゆっくりと湯につかります(こんな時間にも個人的に移住できる空き家がないかリサーチを進めるのはここだけの秘密です)。

ひとりで仕事をしに行くのも良し。親しい少数のメンバーで、ゆっくりと滞在するのも良し。式根島のワーケーションは親しい人におすすめしたい、穴場だと感じました。

僕が体験した式根島のワーケーション体験は、ユニークな体験レポートで知られる「LIG」の皆さんも体験し、レポートにされています。彼らのレポート「東京から約1時間で行ける「式根島」でワーケーションを体験してきた」もぜひご覧ください。

     

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