つくろう、島の未来

2024年11月21日 木曜日

つくろう、島の未来

大崎上島へ訪れたリトケイ編集部は、この島で生まれ育った人、 都会から移り住んできた人、たまにこの島へ遊びにくる人、 この島が好きだという人たちでつくる 「かみじまファンズ」の会合におじゃましました。 この会の冒頭で、ある人がこの島のことを「宝島」と言いました。 「島は宝島」。島のおじさんたちに話を伺いました。

■お金以上のことができる島

リトケイ:

みなさんとこの島の関係は?

榎本さん:

ぼくはこの島の出身で、 東京で22年公務員をして戻ってきました。

二郎さん:

ぼくは、6000なんぼある島から この大崎上島を選んできました。

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リトケイ:

へえ。なぜこの島だったんですか?

二郎さん:

もともと年をとったら 農業がやりたいと思っていて、 ブルーベリーなんかやりたいと思ってたんだけどね。 ぼくは香川県の高松出身なんだけど、 香川県に問い合わせてみると、 香川県にはブルーベリーがなくて。 その時、たまたまそこの農業試験場の方が、 神峯園の横本さんの名刺をもっていたんです。 それで、一度横本さんを訪ねてみようと思って、それが最初。

リトケイ:

縁ですね。石倉さんは?

石倉さん:

ぼくは夫婦で移住して来たんだけど、 年金をもらうようになって、この島に来たことは正解だったと思います。 なんていっても、年金の価値が倍だから。笑

リトケイ:

2倍??? そういえば、 商店で大きなキュウリ3本が20円で売られているのを見かけました。

榎本さん:

なんせよくとれるからね。 農家の人は畑に捨てるくらいだからね。 知人の間ではやりとりするけど、 その知人もつくっている訳なので、結局、余るんですよ。

リトケイ:

なんだかもったいないですね。

二郎さん:

私は、8年前に島に来たんです。 同じく移住してきた石倉さんは 「人生の楽園」という番組に取り上げられたんだけど、 私はテレビ朝日の「銭金」の取材を受けました。

リトケイ:

「人生の楽園」と「銭金」…。

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二郎さん:

そう、石倉さんはセレブで 私はビンボーで取りあげられた訳です。笑 取材を受ける前、「月に2万円くらいで生活できていますか?」 と聞かれましたが、 農業をやっているし、さすがにそれはないけど。

リトケイ:

ははは。どちらも感じられている豊かさは同じな気がしますね。

榎本さん:

豊かさもそうですが、 この島はすごく便利なんですよ。 羽田から2時間ちょっとで来れるし、 空港からなら、広島市内に入るよりも早いかもしれない。

リトケイ:

飛行機で1時間ちょっと。 空港から港まで車で30分、 港から島までのフェリーが30分ですね。

二郎さん:

それと、この島の何がいいって、 すべてのことが15分以内で済むことですね。 たとえばお医者も15分あればつくし、 「たらいまわし」なんていうようなことも聞いたことがない。 島の先生の手に負えないとなると、 救命艇が出ますし、 ヘリコプターも飛んで来るから、むしろ都心よりも便利かもしれない。

リトケイ:

それは便利ですね。

二郎さん:

さっき、石倉さんが 年金が2倍の価値になると言いましたが、 まさに2倍につかえると思います。 ゆったりした島時間を生きることで 心とカラダが健康になる という意味もありますが、 やる気があれば農業なんかで儲けることもできる。 まあ、そういう追われる生活をしなくても、 2分の1のお金で島では生活できる訳ですが。

リトケイ:

つまり、収入が2分の1になっても、 同じ暮らしができるということですね。

二郎さん:

それ以上かもしれないです。 この環境で、農業だったりその他だったり、 好きな仕事を選ぶことができるのは、 まさに選択の自由で、 この島ではそういうことができる。 時間をお金には換算できないけど、 島ではお金以上のことができるよ、 ということなんです。

■宝は持ちすぎると宝と感じない。

リトケイ:

みなさんはこの島を「宝島」と言われていますが、 「宝島」にも何か問題はあるのでしょうか?

管さん:

都会は人を蹴落としてでも出世してやろうとする世界です。 でも、島には宝物がいっぱいあるから、 そんなことはしなくてもいい。

リトケイ:

恵まれていますね。

管さん:

ただ、そのことを島の人は気づかない。 資金力と財力と才能があわさったら、たいしたものになると思うけど、 そもそも気づいてない。

二郎さん:

そう、この島はその辺りが少しかみ合ってない。 私は東京で40年間生活していて、 外資系の会社に勤めていたこともあるんだけど、 そういうところにいると、 時代の波の先を読むわけですよ。 この島には頭の良い人がいっぱいいて、学歴もものすごく高いんだけど、 その辺りの方向性が定まらないというか。

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リトケイ:

外から移り住まれた方のほうが、 そういう点に気づきやすいのでしょうか。

榎本さん:

ぼくも22年間、東京に住んでいたので分かりますが、 ずっと島に住んでいる人は、この島の良いところに 気づいていないことが多い。 あなたもここにきて、 夜の星や虫の音が素晴らしいことに気づいたと思います。

リトケイ:

星も虫の音も素晴らしかったです。

榎本さん:

でも、慣れっ子になっていくんです。 ずっと住んでいると。 一番顕著な例では、 この島の人で自然が豊かな地域にツアーにいったりすると、 最終的に「この島のほうがいいな」と言って帰ってきたりする。 普段は気づかないんですが。

リトケイ:

外に出ると気づくんですね。

二郎さん:

夜は、車の音も聞こえないし。 とても静かです。

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榎本さん:

宝を持ちすぎて、宝と感じていないんです。

リトケイ:

もったいない気がしますね。

榎本さん:

あと、ここには商船学校があるでしょ。 だから、年金のグレードがちょっと高いんです。 そのせいか、 生活が苦しいとかそういうのも聞かない。 極端な話、そこらを歩けばキュウリでも何でも自然になっているし、 海で釣りすれば魚も釣れるから、困ることがないんです。

リトケイ:

当たり前すぎると、見えにくいんですね。 でも、困っていないということは、 いわゆる「町おこし」も必要がないということでしょうか。

榎本さん:

あまりニーズがないですね。 自分が満ち足りていれば、 無理していろいろ手をのばそうとも思わないということです。

リトケイ:

しかし、そうしていくと、 だんだん若者が離れていく可能性もあります。

二郎さん:

今の相撲協会の問題あるでしょ。 それと同じです。 かえなければいけない問題はあっても、中にいたら気づかない。 悪いというのがわかっていても、 どういう風にしたらいいか、 その発想がないんですよ。

後編につづく

     

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