新しい生活への不安をものともせず、2010年10月、東京から大崎上島へと単身渡り、生活を始めた森ルイさん。彼女のリアルな移住体験記。
離島への移住。
聞く人が聞けば、これだけワクワクする響きはなく、聞いただけで、豊かな自然に囲まれた穏やかな生活など、ついつい安易な想像をしてしまいます。
ですが、現実に住むとなるとどうか。
住む家は? 島での働き口は?果たして島の人たちに溶け込めるのか?などなど、考え出したらきりがありません。
そんなことをモノともせず、2010年10月、東京から大崎上島へと単身渡り、生活を始めた人がいます。彼女はこの島に何を感じ、島での暮らしにどんな未来を描いて、移住を決めたのでしょうか。
■Page 1 「あ、この家はイケる」
「短大時代の友人の間で、円ちゃんがどこかの島に行ったらしいよって話が出てて。それで、電話して聞いてみたら大崎上島って言われたんです。でも、そんな島、誰も知らなくて(笑)。調べてみたら、橋もかかってない島だから、ガイドブックとか見ても、端っこの方で切れちゃってました。それで、みんなでとりあえず行ってみようと」
写真は、昔「薬局」だったこともあるという森ルイ邸の土間)
その後の約4年間、
ルイさんは年に2回ほど、定期的に島を訪れるようになり、中尾さん以外にも大崎なぎ太鼓の今田さんなど、島の人たちとの交流をもつようになります。そして今年、人生の転機がやってきます。
それで、真っ先に頭に浮かんだのが大崎上島でした。それから早速空き家バンクで家を探して。当時は東京に住んでいたから、円ちゃんや今田さんに実際に家を見に行ってもらったんです。
その時、今田さんがビデオを撮って送ってくれて、それを見たら『あ~これは絶対買いだ』と確信しました。もちろん価格や立地、築80年っていう家の内部の状態なども購入前にちゃんと確認しましたよ。それで総合的に判断して、これしかないなと」
「島に来たばかりの頃は、まず家のなかのことは置いといて、できるだけ島の人たちと交流しようと、通りに面した庭で草むしりとかしていました。顔を売るというか、私がここに住みますよって、お伝えできるように、通りかかった人に挨拶しまくっていましたね。
たとえば、都心とかだとマンションで隣の人と一言も話さずに住めますよね。島でもそういった暮らしはできると思います。でも、私はそうしたいとは思ってなくて。だから、ちゃんと自己紹介して、自分のことを話して積極的に島の人たちの輪に入りたいと思いました」
■Page 2 「自分のことを少しずつ知ってもらいたい」
それでもルイさんは、臆せず積極果敢に進んでいきます。
東京と島を行き来しつつ、島の人たちの考えていること、思っていることを知るためのアンケートを配布したりもしたそうです。
本格的に島での暮らしを始めた今、ルイさんのこれまでの試みは少しずつ結実していっているようです。これからルイさんは、自身が5歳から習っているというクラシックバレエの教室をスタートする予定だそう。さらには来年のオープンを目指して、昨年末に閉店した島のアンテナショップの跡地利用も進めているそうです。
ほんの数か月前まで、東京で普通に生活していた人が、島に引き寄せられるように移住すること。きっとそこには、いくつかの幸運な偶然もあったのでしょう。それを見落とすことなく、しっかりと掴み、島へと飛び込んでいくことで、その偶然を必然に変えていく。