つくろう、島の未来

2021年12月06日 月曜日

つくろう、島の未来

新しい生活への不安をものともせず、2010年10月、東京から大崎上島へと単身渡り、生活を始めた森ルイさん。彼女のリアルな移住体験記。

離島への移住。
聞く人が聞けば、これだけワクワクする響きはなく、聞いただけで、豊かな自然に囲まれた穏やかな生活など、ついつい安易な想像をしてしまいます。

ですが、現実に住むとなるとどうか。
住む家は? 島での働き口は?果たして島の人たちに溶け込めるのか?などなど、考え出したらきりがありません。

そんなことをモノともせず、2010年10月、東京から大崎上島へと単身渡り、生活を始めた人がいます。彼女はこの島に何を感じ、島での暮らしにどんな未来を描いて、移住を決めたのでしょうか。

■Page 1 「あ、この家はイケる」

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  • ルイさんが移住を決めたきっかけは短大時代の友人・中尾円さん。すでに島に移住していた中尾さんのもとへ遊びにきたことが、ルイさんと大崎上島との出会いだったそうです。

「短大時代の友人の間で、円ちゃんがどこかの島に行ったらしいよって話が出てて。それで、電話して聞いてみたら大崎上島って言われたんです。でも、そんな島、誰も知らなくて(笑)。調べてみたら、橋もかかってない島だから、ガイドブックとか見ても、端っこの方で切れちゃってました。それで、みんなでとりあえず行ってみようと」

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  • 友人たちと連れ立って訪れた島で、ルイさんは都会での慌ただしい暮らしのなかで忘れかけていたモノを思い出したそうです。
    「たまたま通りかかったいちじく畑のおばちゃんに挨拶をしたら、それだけでいちじくをいただいたり、すれ違う全然知らない小学生が『こんにちは~』って挨拶してくれたり。そういうところで、何かいろいろと感じるところがあったんですよね」

写真は、昔「薬局」だったこともあるという森ルイ邸の土間)

その後の約4年間、
ルイさんは年に2回ほど、定期的に島を訪れるようになり、中尾さん以外にも大崎なぎ太鼓の今田さんなど、島の人たちとの交流をもつようになります。そして今年、人生の転機がやってきます。

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  • 「3月に仕事を辞めた後、離婚をすることにもなり、これからどうしようかな~って考えた時、どうせ何にも縛られないのだから、これを機に生き方を変えようって思ったんです。外国に行こうかとも思ったんですが、いずれは日本に帰ってこなきゃいけない。それなら、日本に拠点をもとうって思って。

それで、真っ先に頭に浮かんだのが大崎上島でした。それから早速空き家バンクで家を探して。当時は東京に住んでいたから、円ちゃんや今田さんに実際に家を見に行ってもらったんです。
その時、今田さんがビデオを撮って送ってくれて、それを見たら『あ~これは絶対買いだ』と確信しました。もちろん価格や立地、築80年っていう家の内部の状態なども購入前にちゃんと確認しましたよ。それで総合的に判断して、これしかないなと」

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  • 晴れて家を手に入れると、ルイさんは東京と大崎上島を夜行バスで行き来しつつ、徐々に移住の準備を進めていきました。

「島に来たばかりの頃は、まず家のなかのことは置いといて、できるだけ島の人たちと交流しようと、通りに面した庭で草むしりとかしていました。顔を売るというか、私がここに住みますよって、お伝えできるように、通りかかった人に挨拶しまくっていましたね。
たとえば、都心とかだとマンションで隣の人と一言も話さずに住めますよね。島でもそういった暮らしはできると思います。でも、私はそうしたいとは思ってなくて。だから、ちゃんと自己紹介して、自分のことを話して積極的に島の人たちの輪に入りたいと思いました」

■Page 2 「自分のことを少しずつ知ってもらいたい」

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  • それまで暮らしていた場所とは異なる、独自の生活スタイル・文化が根付く、島という、ある種限られた空間のなかで、すでに完成している地域のコミュニティに、自ら飛び込んでいくことは、とてもパワーを要することです。

それでもルイさんは、臆せず積極果敢に進んでいきます。
東京と島を行き来しつつ、島の人たちの考えていること、思っていることを知るためのアンケートを配布したりもしたそうです。

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  • 「私は島でいろいろやりたいことがたくさんあるので、島と積極的に関わっていくことは大切だと思うんです。もちろんいきなり懐に飛び込んでいく訳だから、警戒する人もいるだろうし、『もう少し島に根を張ってからやっても良いんじゃないか』と心配してくれた人もいます。
    でも、私としては、東京と島を行ったり来たりする時間を有効に使って、自分のことを少しずつでも知ってもらって、人脈を広げたりしていきたいな~と思っていました」

本格的に島での暮らしを始めた今、ルイさんのこれまでの試みは少しずつ結実していっているようです。これからルイさんは、自身が5歳から習っているというクラシックバレエの教室をスタートする予定だそう。さらには来年のオープンを目指して、昨年末に閉店した島のアンテナショップの跡地利用も進めているそうです。

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  • 「アンテナショップの跡地では、カフェとか雑貨店などをしたいと考えています。島の人も島外の人も、子どもからお年寄りまで、みんなが集まれるような場所にしたいと思っているんです」

ほんの数か月前まで、東京で普通に生活していた人が、島に引き寄せられるように移住すること。きっとそこには、いくつかの幸運な偶然もあったのでしょう。それを見落とすことなく、しっかりと掴み、島へと飛び込んでいくことで、その偶然を必然に変えていく。

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  • 森ルイさんの現在進行形の移住ストーリーは、これから離島という場所への移住を目指す人たちへのリアルな移住指南書です。

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