つくろう、島の未来

2020年11月30日 月曜日

日本の島々に暮らす80歳以上の高齢者は約8万人(※1)。人口規模や立地条件等により、それぞれ島の事情は大きくことなるが、共通するのは「島に暮らしたい人」と「支える人」が存在すること。この両者がどのようにして支え合っているのか、厚生労働省が提唱する「地域包括ケアシステム(※2)」をキーワードに、島々の取り組みを紹介する。

※1…『離島統計年報』平成27年国勢調査より法指定離島の人口を抽出 ※2…高齢者が住み慣れた地域で自立した生活を送れるためのサービスを一体的に受けられるようにするための仕組み

奄美大島の大和村(やまとそん|鹿児島県)では、住民主体の支え合いグループが、集落単位で活動している。そのきっかけとなった「地域支え合い体制づくり事業」(平成23年度・平成24年度)について、大和村役場保健福祉課 地域包括支援センターの早川理恵さんに話を聞いた。

地域内の暮らしを見える化したマップづくり

奄美大島中部に位置する大和村は、人口約1,500人、高齢化率は約40%にのぼる。公的なケア支援を望まない一人暮らしの高齢者にケアプランを提案しても利用を断られるなど、公的サービスでは支援が難しいケースがあったり、地域の自助に向けたリーダー育成事業が、事業終了後の主体的な活動に結びつかなかったこともあったという。

「行政のサポートがお仕着せになっていないか、自助共助の力を奪っていないか」。そんな反省から、大和村がはじめに取り組んでみたのは、住民流福祉総合研究所(埼玉県)が提唱する「支えあいマップづくり」だった。

村内にある集落それぞれで、女性を中心とした世話好きの住人に集まってもらい、住宅地図を広げて「一人暮らしの人は?」「その人を誰が見守っている?」など対話しながら、集落内での人の行動や人間関係を地図に書き込んでいく。

すると、「働き者のあの人が、近ごろ畑仕事をしなくなっているね」「足を悪くしてから力仕事が大変になったみたい」と、地域内に暮らす人の行動が浮かび上がり、「じゃあ畝上げだけでも手伝おうか」と、必要なつながりや支援が見えてきたという。

自然に生まれた10の支え合い活動

村内11集落でマップづくりを終えた後、役場は「そこに暮らす人が動かなければ、住みたい地域はつくれない」との考えから、相談には乗りながら、行政側からあれこれ提供するのではなく、住民が求めることに対し必要な支援を行うようにした。その結果、村内には自然発生的に10の支え合いグループが誕生し、マップづくりから9年が経った現在も、各集落で活動している。

その1つ、名音(なおん)集落は、物置小屋を改装し、毎週土曜日に地域の人が集まりお茶を飲むサロン「笑談所」を開設した。歩いて行ける身近な場所に定期的に人の集う場ができたことで、閉じこもりがちな人の外出の機会になり、おしゃべりの中からの安否確認ができたり、子どもたちへの文化継承の場にもなるなど、集落の拠り所として様々な活動が広がっている。

名音集落から島の中心地に出るバスは平日で1日5本、土日祝日は1日3本のみ。買い物の悩みを抱えている高齢者も多い中、他集落のグループが提供するお惣菜を集落内の商店に置いてもらうよう取り計らうなど、自主グループ同士でも連携しながら困りごとを助け合う様子もみられている。

笑談所では他にも、奄美医療生協による血圧測定や骨密度測定などの健康チェックも不定期に行われ、住民が健やかに暮らす拠点となっている。

足元にあった宝物を生かすシマ(集落)づくり

住民主体の支え合い活動が自然発生した背景には、シマ(集落)単位の「小さなコミュニティ」の存在がある。誰かが困っていたら、できることを手伝うのは当たり前。停留所でバスを待つ時間には、認知症の人も交えて井戸端会議が始まる。夕方になると誰ともなく浜辺に集まり、皆で夕涼みを楽しむのも、この島ならではの日常だ。

第一線を退いた高齢者も、タコ捕り名人や島踊りの名手など、シマ暮らしに欠かせない技術や経験を蓄えている。もともと奄美の集落は、そこで暮らす一人ひとりが何かしらの役割を果たし、支え合うことで成り立ってきた。それはまさに、自然体で人々が共生する暮らし。「私たちの足元に、宝ものがあるんです」(早川さん)。

早川さんは、大和村の支え合いグループの中で、高齢者が得技を活かしてコミュニティの中で活躍し、人々と楽しみや喜びを分かち合うことで、生きる力を取り戻す姿を見つめてきた。「答えもヒントも、そこに生活する住民が持っています。大切なのは、人の暮らしをよく見ることです」。

他地域でうまくいっている地域づくりの好例をそのまま地元に当てはめても、地域と人の実情に合っていなければうまく機能しない。集落ごとに異なる暮らしの在り方を見つめ、地域の個性や人々の価値観を尊重することで、もともと持っていた良さを活かし、強めることができると語る早川さんは、「地域には目立たないけれど、とても大事な住民同士の活動がたくさんある。住民同士の信頼関係や、お互いを気にかける思いやりの心など目に見えない部分を大切にしたい」と強調する。

当然、人々が支え合う活動の中では、意見の相違やすれ違いも起こる。「活動に疲れたら、お休みしてもいいんです」と早川さん。人と人とが接する限り、それも付きもの。活動を継続させるには、住民の生活のペースに合わせることや、難しい点ばかりにとらわれず前向きに進むしなやかさも必要だという。

「土台になる住民同士のつながりの力があれば、小さな気づきを課題解決につなげることができる。これからも、住民の気持ちを大切にし続けていきたいですね」。


この記事は高齢者介護施設のための食事トータルサービス・クックデリ株式会社の提供でお届けしています。

特集記事 目次

ずーっと島で暮らしたい
日本の島々に暮らす80歳以上の高齢者は約8万人(参考:『離島統計年報』平成27年国勢調査より法指定離島の人口を抽出)。人口規模や立地条件等によって、それぞれ島の事情は大きくことなりますが、共通するのは「島に暮らしたい人」と「支える人」が存在すること。この両者がどのようにして支え合っているのか、厚生労働省が提唱する「地域包括ケアシステム」をキーワードに、島々の取り組みをご紹介します。

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