島暮らしを選び、島に仕事を持ち込んだ「在島ワーカー」とはどんな人か? 7つの島に暮らす在島ワーカーに、仕事や暮らしについて聞きました。取材はすべてZOOMやSkypeなどのビデオカンファレンス(テレビ電話)を使用しました。『季刊リトケイ』25号特集「仕事はネットで。暮らしは島で。島の新しい働き方 在島WORK」連動記事です。
「絶対にここがいい!」世界を6周した後、福江島へ
「こんにちわー!」−−。
テレビ電話の画面に現れたニチョ先生の背後には青い海が見える。彼の仕事場はハイエースの車内。主宰する「ニチョ先生の英会話教室」のホームページには、オンラインで受講できる英会話レッスンのメニューが掲げられている。
本名はNICHOLAS。ニコラスと発音するが、生徒が「ニチョラス先生」と読んだことをきっかけにニチョ先生の愛称がついた。
カルフォルニア出身のニチョ先生は教育博士号を持ち、母語を英語としない人に向けた英語教授法「TEFL」の資格も有する。
来日後は福井県の学校で英語授業の補助役(ALT)として働き、東京では地球一周の船旅で国際交流を行うNGO団体に勤めていた。「『船で100日間世界1周』を6周しましたよ」というニチョ先生は、パートナーと結婚し、子宝に恵まれたことをきっかけに、2016年に妻の実家がある福江島で暮らしはじめた。
「3年前に東京から五島まで自転車で1ヶ月くらいかけて旅しことがあるんです。それまで他の土地も見ていたけど『絶対ここがいい!』と思いました」。地球上で見てきたどの土地よりも惹かれた福江島(ふくえじま|長崎県)での暮らしはその後、「楽しい!」の一言になる。
島では英会話レッスンの生徒が2歳になる娘の成長を共に楽しんでくれることもニチョ先生の喜びだ
オンラインレッスンでは独自に考案した教材を駆使
島暮らしを始めた当初は、東京で英会話を教えていた生徒を引き継ぎ、オンライン100%で仕事をしていた。その後、島でもレッスンをはじめると徐々に生徒が増え、昨年9月からは娘が通う幼稚園でもレッスンを担当することになった。「たまたま英語の先生が少なかったのかな」とニチョ先生は笑う。
ニチョ先生のオンライン英会話レッスンは、月額9,800円〜の個人レッスンだけでなく、複数人のグループレッスンにも対応。「インターネットのおかげで教材が手に入りやすくなり、いつでも勉強できる環境が整った」と話すニチョ先生は、オンラインレッスンの仕組みも独自に考案。
インターネット上で先生と生徒が教材を共有し、回答や採点ができるGoogle Classroom(グーグル クラスルーム)の仕組みを活用。1つのワード書類を複数のユーザーで共同編集できるGoogleドキュメントを使って、生徒が記入した英語をリアルタイムで添削しながらレッスンを行い、教材としてYouTube動画や英字新聞のニュース記事も採用している。
英会話教師のほか、日本語〜英語の翻訳業務も請け負っているが、翻訳作業でもオンライン上にデータを自動保存できるGoogleドライブはかかせないという。
ハイエースを移動オフィスとして軽やかに働く
移動オフィスにしているハイエースには、前オーナーが備え付けたというソファとテーブル付き
そして何より、島外とのやりとりには通信回線がかかせないが、現在のところ安定的な通信環境はスマートフォンのテザリング機能を使って確保しているという。「以前は友達の飲み屋の前に車を停めて『Wi-Fi使ってもいい?』といって使わせてもらっていたこともありますが、今はスマホですね」(ニチョ先生)。
フリーWi-Fiが使えるカフェを探していた時期もあるが、最近は娘が幼稚園に通い始めたことをきっかけに購入したハイエースを移動オフィスとして活用。五島市内での対面レッスンの合間に、電波の入りやすい場所にハイエースを停めて、車内から東京の生徒に向けたオンラインレッスンを行なっている。
移動オフィスで軽やかに在島ワークを行うニチョ先生は、いつの間にか島でも知り合いだらけとなった。「どこにいっても知り合いがいて楽しいし、コミュニティも楽しい。生徒がスイカとかトマトを持って来てくれるので、こっちも何かおすそ分けをしたりしています」と島暮らしを楽しんでいる。
ある1日のスケジュール/
07:00 娘に起こされる
08:00 翻訳の仕事をする
09:00 幼稚園に連れて行く
10:00 同じ幼稚園で英会話を教える
12:00 ランチ
13:00 午後のレッスンの前に英会話オンラインを行なっている(ハイエースで)
18:00 五島の人に英語レッスン
23:00 就寝
島データ/
福江島(長崎県五島市)
人口34,423人(H30.6月時点)
面積326.34km²