松山市の興居島(ごごしま|愛媛県)で平成29年4月、「お試し移住」が始まる。同事業は、市が忽那諸島の住民らと連携して推進する「愛ランド里島構想」の一環。新しく体験滞在型交流施設を建設し、昨年11月1日から入居者を募集したところ、今年1月31日の締切までに17世帯の応募があった。同施設の戸数は8で、定員の2倍の応募が寄せられたことを関係者は喜んでいる。
人口約1,100人の興居島は、市中心部から最も近い場所にある離島。島には2つの港(由良港、泊港)があり、それぞれ約1時間ごとに運航するフェリーと電車を乗り継げば、約30分程で市の中心部に移動できるなど、アクセスの良さで知られている。
新設する体験滞在型交流施設は由良港から徒歩3分の好立地(旧由良小学校跡地)にある。1LDKの区画すべてに、家庭菜園で使える約100平方メートルの農園と1台分の駐車場が付く。施設の運営については地元住民で組織する管理組合が行い、農作業について地元の農家から支援を受けられるほか、島の住民との交流イベントなども実施する。使用料は月額38,000円で、光熱水費は利用者が負担する。入居対象者は「松山市の島しょ部居住者以外で島への移住を検討している方」。使用期間は1カ月単位で、最長3年となっている。
興居島体験滞在型交流施設の全体図
市は平成24年、島しょ部の発展と活性化を図る指針として、平成33年までの10年間を対象期間とした「松山市愛ランド里島構想」を打ち出した。同構想の策定にあたり、各島で意見交換会やアンケートを実施するなどして要望を吸い上げた結果、「島びとが活き活きと輝く笑顔あふれる里の島」という将来像が明確になった。この将来像を実現するために、島に住む人と自治会や企業、行政の3者が連携する体制を築いた。
同構想に基づく「お試し移住」は、市の「坂の上の雲まちづくりチーム」が担当。同チームの吉野さんによれば、興居島への応募者は約7割が県外からで、首都圏や関西など幅広い地域に分布。年齢層も20~70歳代と幅広かった。ある東京在住の応募者は、「心身ともに健康な生活をしたい」「温かく見守ってくれる島の方々とのつきあいを大事にしたい」などの応募理由を挙げていた。これから島で子育てをすることを考えている応募者もいたという。
松山市本土側より興居島を望む
2月末までに面接を経て入居者が決まり、4月から興居島での生活が始まる。吉野さんは多くの応募に喜びながら「全世帯を受け入れられないジレンマがある」と心境を語る。その上で「新生活をスムーズに始められるように、島の皆さんと連携して入居者をサポートしていければ」と意気込む。
同市では現在、松山港の沖合い約10kmに位置する中島(なかじま|愛媛県)でも短期(1年)のお試し移住を行っている。新たに興居島でもお試し移住が始まることで、受け入れ先が2つになる。「お試し移住の最終目的は、生活体験をきっかけに島で仕事や空き家を見つけて、定住していただくこと」と吉野さん。市のホームページ「離島の空き家」では、忽那諸島(くつなしょとう)の空き家情報を公開している。
中島の移住お試し住宅
【関連サイト】
松山市里島空き家バンクウェブサイト「離島の空き家」