つくろう、島の未来

2024年04月24日 水曜日

つくろう、島の未来

IT技術の進歩にコロナ禍のあおりが加わり、テレワークを推進する企業が増える一方、全国各地でコワーキングスペースやシェアオフィスを整備する動きが活発になっています。そんな中、企業で働く人にとって、島でのテレワークにどんなメリットがあるのか? 北海道は利尻島にある「利尻町定住移住支援センターツギノバ」(利尻町)を拠点にテレワークを行う3人と、その魅力について語り合いました。

利尻島×テレワーク(1)皆がハマっていく利尻島とツギノバ
利尻島×テレワーク(2)利尻島でテレワークできるのはどんな人?
利尻島×テレワーク(3)極端な環境だからこそ得られるものがある

利尻島にハマった3人

 
ハセタクさん
長谷川琢也(はせがわ・たくや)。ヤフー株式会社所属。SDGsメディア『Yahoo JAPAN SDGs』編集長や企業版ふるさと納税関連事業を担当する他、漁業振興を手がけるFISHERMAN JAPANの事務局長も務める

 
たまさん
玉城伸太朗(たまき・しんたろう)。東京・上野でウェブ制作やコワーキング施設の運営等を行う株式会社LIGに所属するウェブディレクター。コーヒー焙煎の趣味が縁となり、いつの間にか利尻島リピーターに

 
大久保
大久保昌宏(おおくぼ・まさひろ)。NPO法人離島経済新聞社理事、一般社団法人ツギノバ代表理事。2010年に鯨本と共に離島経済新聞社を創業。利尻島での事業運営を機に縁が深まりいつのまにか半移住。利尻島を拠点に東京や全国の島々を行き交

聞き手

 
鯨本
鯨本あつこ(いさもと・あつこ)2010年に離島経済新聞社を創業。NPO法人離島経済新聞社代表。『ritokei』統括編集長。子育てを機に2014年よりテレワークを開始。九州を生活拠点に東京はじめ全国の島々を飛びまわる

極端な環境だからこそ得られるものがある

皆さんが仕事場にされているツギノバのような施設が利尻町にはあるわけですが、欲を言えば、ツギノバに来る人が利尻町になんらか貢献できると良いですよね。

たまさんは、その片鱗を見せてくれていますね。島にはコーヒーの焙煎をやっている人がいなかったので、(コーヒーの焙煎が趣味の)たまさんが(ツギノバの)コーヒーを仕入れて、管理して、焙煎してくれています。

パソコンに向かう人や会話を楽しむ人など多様な人々が集うツギノバは、島の住民と来島者が交わる拠点です

たまさんの趣味が利尻島(りしりとう|北海道)で喜ばれているわけですね。

ですね。それと最近、利尻には若い事業者が増えてきて、利尻町だけでもここ3年間ぐらいで7店舗ぐらいが新しい店ができています。そこで観光系の事業者さんがホームページをつくりたいというので、たまさんが作り方を教えてあげたりしていて。過去には、ホームページをつくるにも島外の事業者にそれなりの金額を払って発注するのが当たり前だったと思うんですが、それと違ったやり方ができるようになっているように思います。

なるほど。たまさんやハセタクさんのような方が増えると、島の中でできることの選択肢が増えそうですね。その点、ハセタクさんはいかがでしょう?

我々は職種としても特殊で、仕事をするのもどこでもいいわけですが、やはり「世の中の課題を解決する」とか「事業においても誰かの困りごとや求めるものをサービスに変える」ことでビジネスをつくるなら、極端な場所に行った方が出会えるものがあると思っています。

SDGsとか、カーボンニュートラルとか、考えなければならないと分かっていることでも、東京にいるとなんとなくぼやけてしまう。「考えなくたって死なないし」と思っちゃうからかもしれませんが、利尻にいると本当に自然に負けて死んでしまうことをリアルに感じられるじゃないですか。

自然って、ぼやっとしていると死ぬくらい強いですからね。

僕も大久保さんのように車のタイヤが雪にハマったり、強風で動けなくなったり、マジで死ぬなと思ったことがありますが、そうやって過ごしていると、電気とかエネルギーとかがなくなったらどうなるんだろう? と思うし、 本気で自給自足や地産地消を考えたり、食品ロスなんか出している場合じゃないと感じたり。

そういったことを手触り感をもって体験できて、なんとかしなきゃと思ったことを形にできるのも、島の良いところだと思います。

たまさんが鮭を釣りすぎた体験から、すごい食品ロスをなくすアイデアが生まれる可能性もあるわけですね。

(島のような場所では)人間の生き物としての生命力というか、忘れていたものを取り戻せる気がします。なんとなく平和な中で生きてしまっている日本人が多いと思うので、その感覚を思い出したいというような人が島に来て、何かを感じたらアクションにするとか、口に出すとかアイデアを誰かに相談してみるとかをやると、非常におもしろいですよね。

ツギノバにはグランドピアノやギター、ベース、ドラムなどを備えた多目的スタジオスペース「オトノバ」も併設

SDGsとかESDとか、大きな企業でもワーケーションを通じてローカルに学びを求めるようなシフトが少しずつ芽生えているような気がしますしね。最後に、たまさんはこれからの利尻島をどのように楽しんでいく予定ですか?

僕はツギノバで利尻と触れ合うことができて、一昨年は島に友だちをつくることを楽しんでいたんですが、去年は東京の友だちを利尻に連れて行くともっと楽しいことが起こると分かったので、これからはそういった化学反応も楽しんでいきたいなと思います。

それはつまり、とても良い関係人口ですね。ハセタクさんはいかがでしょう?

初めて利尻に行った時は「漁師を盛り上げる」という目的があったので、熱い漁師に出会えたのは良かったものの、正直、他に欲しいところや足りないところもあるなと思っていました。けれど、この2〜3年でいろんな場所ができていて、お世辞抜きに誰か連れて行きたい島になってきました。いろんな人が来て、新しい地域のあり方がギュッと詰まった島になる可能性がめちゃくちゃあるなと思っているので、すごく楽しみにしております。

利尻の良いところは、環境としての良さはもちろんあるのですが、こういう人たちが関わってくれていて、その関わってくれている人たち同士の繋がりがまた新しいことにつながっていくという可能性があることだと思います。都市部の企業人がどんどん集まる場所になるといいなと思うので、もっとたくさんの人たちにまずは一度、利尻町に来てワーケーションでもオフサイトでも、ツギノバを起点にしたテレワークを体験してもらいたいですね。


みんなの未来と利尻島内外をつなぐ交流スペース「ツギノバ」

利尻町定住移住支援センターツギノバ
北海道利尻郡利尻町沓形字日出町55

お問い合わせ
TEL:050-8880-6920
info★tsuginoba.com(★を@に変えてお送りください)

営業時間:9:30〜16:30
定休日:無休(年末年始等を除く)
https://tsuginoba.com/

\2022.3.15にオンラインイベントを開催します!/

テレワークを推進する企業や多拠点居住で働ける「場」を探している個人事業主の皆さんに向けて、3/15(火)に島×テレワークの魅力や、「利尻町定住移住支援センターツギノバ」(利尻町)に新しく誕生するシェアオフィス(月額賃料1.5万円〜)の物件案内を行うオンラインイベントを開催します。

当日はこの記事に登場した4人が登場し、記事のなかで語りきれなかった「島×テレワーク」の魅力はもちろん、働く人にとってのメリットやオフィス環境、賃料、住環境などの疑問に直接お答えします。

詳細・お申し込みはこちらから >> https://teleworkrishiri.peatix.com/view

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