つくろう、島の未来

2024年11月24日 日曜日

つくろう、島の未来

【#3島に息づく活版の魅力】100年以上続く小値賀島の活版印刷所を尋ねたありかわさん。4代目修行中の桃子さんに手伝ってもらいながら、活版の魅力を体験します。「島の人は意外にご近所島を知らない!?」五島列島在住リトケイ島記者によるご近所島訪問。1島目「小値賀島(おぢかじま)」ルポ。

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#3島に息づく活版の魅力

小値賀旅では、自分で自由にゆっくり島を巡るのも楽しいが、
体験ツアーやアクティビティなどに参加してみるのも、
さらに島を深く知るには良い機会。
島での数ある体験メニューの中から「活版印刷体験」を選び、
島で唯一の印刷所『晋弘舎(しんこうしゃ)』さんを訪ねることにした。

島唯一の印刷会社は活版印刷

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効率化やスピードの追求により機械化が進み、全国的にも減少している活版印刷。
しかし、小値賀では今も暮らしの中に活版印刷が息づいている。
なぜ、都会の活版印刷が無くなっていくなか、
人口三千人足らずの小値賀で小さな印刷所を営んでいけるのだろうか?
いろいろな疑問を持ちながら晋弘舎さんに向って歩いた。

細い裏路地を通り、晋弘舎印刷の看板を見つけ、玄関をくぐると、
横山弘藏(よこやまこうぞう)さん、娘の桃子(ももこ)さんが出迎えてくれた。

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横山弘藏さんは100年以上続く活版印刷所の三代目。
桃子さんは岡山での大学生活、その後の東京暮らしを経て島に戻り、
現在四代目となるべく弘藏さんのもとで修行中だ。

島の暮らしに息づく活版印刷

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インクの独特な匂いに包まれ、おびただしい数の活字に囲まれた作業所で
印刷の工程をみせてもらった。
弘蔵さんが機械を動かすと、長い年月使い込まれた活版輪転機は
快い音を立てながら次々と紙にインクを載せていく。

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小値賀の町営渡船「はまゆう」の乗船券や会社の封筒、領収書など、
今でも島の印刷物の多くが、この晋弘舎の活版印刷で刷られている。
デジタル化された機械では出せない、活版印刷ならではの素朴な風合いが温かい。
「島の暮らしに密着した活版印刷の役割が、今なお必要とされているからこそ、
今日まで印刷所をやってこられた」と弘蔵さんは言う。

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うれし、むずかし活版印刷体験

体験では、名刺サイズ、ポストカードサイズなど紙のサイズを選び、
自分でつくりたい活字を選び、空白を入れたカタチで組んで版をつくり、
印刷機で刷る。
横山さん親子を見ているととても簡単そうに見えるのだが、
実際にやってみるととても難しい。

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探しても探しても見つけたい文字が一つも見つからない。
ヒントをもらいながらやっとのこと必要な文字を揃えた。

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揃えた文字を桃子さんが組版してくれる。
活字ばかりに目がいくが、活版は目に見えない空白部分もすべて「込めもの」と呼ばれる板で埋められ、一つの版として出来ている。
薄い板一枚の違いでも、仕上がりの印象が大きく変わるそうだ。

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私は「今日も青い空 今日も蒼い海」という言葉をつくった。
小値賀を思い浮かべたら、ふっと湧いて来たからだ。
図柄は晋弘舎に古くから残っていた版を使わせてもらった。
かなり昔のものなのに、すごくモダンだと思う。
刷り上がると、自分だけのもののような気がしてとても嬉しかった。

これからの晋弘舎

活版印刷の魅力に気づき、四代目として後をつぐ覚悟をし、島に戻って来た桃子さん。
しかし、今も弘藏さんは桃子さんのその決意に複雑な思いを抱いているという。
先の見えない今の時代に、小さな島に戻って
活版印刷という世界に飛び込むことへの心配もある。

しかし、桃子さんは活版印刷の未来に全く不安がないように見えた。
それは、活版印刷を大切に守り続けた父親の背中があるからかもしれない。
改めて手仕事の味わいや活版印刷の美しさが見直されているという確信もあるという。

今後は、さらに小値賀の活版印刷を島の外にむかって情報発信したり、
オリジナルのお土産のラベルなど、小値賀の良さを活版印刷で表現したいと話してくれた。
伝統の活版印刷に、新しい風が吹き込まれ、
また島の未来に新たな可能性が広がることを感じずにはいられない。

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(写真は小値賀町の歴史ある商店の屋号を使った、桃子さんデザインのメモ)
(#4につづく)


晋弘舎(しんこうしゃ)
TEL 0959-56-2011
〒857-4701 長崎県北松浦郡小値賀町笛吹郷1738-1
※体験をご希望の場合は、事前に「おぢかアイランドツーリズム」迄ご連絡が必要です。
おぢかアイランドツーリズム:TEL 0959-56-2646(6:30~18:30 年中無休)

     

離島経済新聞 目次

ご近所島を見にいこう!

島記者・ありかわともこのご近所の島を巡る旅。

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