つくろう、島の未来

2024年11月21日 木曜日

つくろう、島の未来

[3]島知学 小豆島「島と街をつなぐ」。11月17-18日に開催された「小さな島からものごとを考えてみる」ことを目的にスタートした「リトルコミュニティ研究所=リトラボ」の第1回講義レポ。第1回目のテーマは「島知学(しましるがく)」。島々で活躍中の7人の島人がリアルな島事情を語ります。

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[3]島知学 小豆島「島と街をつなぐ」

香川県の離島、小豆島(しょうどしま)は醤油、素麺、オリーブ、ごま油、佃煮など加工産業が盛んな島。島生まれでお醤油やオリーブのソムリエや情報デザイナーとして活躍する黒島慶子さんと、初代地域おこし協力隊として小豆島にIターン移住し、「シマとマチをつなぐ」活動をされている真鍋邦大さんにお話を伺います。

講義前におこなったワークショップで「小さい島とは?」を考えたとき、黒島さんは小豆島のことを「小さい島と思っていない」と言いました。1周120km、人口約3万人という規模は約430の有人離島の中では大きく、多くの離島で耳にする「アクセスが悪い」という印象が少ないのが特徴です。

「小豆島はアクセスが良いです。高松、姫路、岡山などの主要な港とつながっているし、船で神戸まで行って夜行バスに乗れば片道6000円くらいで東京まで行けてしまいます」(真鍋)

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離島の共通課題として、本土までの輸送賃が高いため加工業が根付きにくいということが挙げられます。しかし、昔から天然の湾がある地理を活かし交易が盛んだったという小豆島には、第1次産業、第2次産業、第3次産業のすべてが揃います。

「小豆島は牛のカタチに似ていて、頭の部分は商売が得意な地域で、中央は農業。お腹から足の部分は産業の街で、加工業が盛んです」(黒島)

醤油、素麺を中心に小豆島産業の7〜8割は食品で成り立ち、年間100万人レベルの観光客も訪れることから観光業も盛ん。それだけの人が訪れるだけに、橋で繋がらない離島ではめずらしく「コンビニ」も数件あります。「家から徒歩1分で海と山とコンビニがあり、不便はありません」という真鍋さんは、暮らしやすさに太鼓判を押します。

昨年の9月『季刊リトケイ』の取材で小豆島を訪れたとき、真鍋さんや黒島さんはじめたくさんの島人が島の「産業」の話を聞かせてくれました。(『季刊リトケイ』2012年10月発行04号「小豆島の島柄」に掲載)

この島で産業が発展してきた理由は交通の便だけでなく、気候や地理にもよると真鍋さんが続けます。「瀬戸内海は雨が少ないんです。小豆島には800m級の高い山があって、カンカケオロシという高いところから吹き降ろす冷たい風が素麺づくりに最適なんですが、そうした地理条件を生かし、島と向き合って発展してきた産業が沢山あります」(真鍋)

黒島さんは、瀬戸内海の島々の情報をつたえる雑誌『せとうち暮らし』はじめ島を伝えるさまざまな媒体づくりに携わる仕事柄、島の生産者に直接話を聞くことも多くあります。黒島さん自身が島出身者であっても「知らないことが多い」と言います。

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「365日、蔵を見学させてくれる醤油屋さんなどステキな作り手さんが沢山いらっしゃいます。家族単位で事業を続けている事業者も多く、オリーブ農家は200とも300とも言われています。調味料まで含めたすべての食材を小豆島産で提供している宿は予約が取れないランキングで上位に入るほど人気です」(黒島)

さまざまな名産品のある小豆島では「木桶仕込」という伝統製法でつくられる醤油も有名です。日本全国にある木桶の3分の1が小豆島にあるといわれ、醤油蔵の数だけでも22軒。それだけ大事な産業であるものの、近年、木桶を作る職人が減ったことで、木桶仕込みの伝統的調味料は存続の危機に直面していました。

そうしたなか島の産業を絶やさないため、自ら杉桶を作る修行をはじめる醤油蔵もあらわれた小豆島。「小豆島には世界的に誇れるものが多くあります。島の人はのんびりしているイメージがあるけど、小豆島はとにかく産業が盛んですから島の人はみんな忙しい方ばかりで、定年という感覚も少なく専業主婦も滅多にいません」そう語る黒島さんの言葉から、島人の産業に対する誇りが伝わってきます。

一方、そんな小豆島に移住してきた真鍋さんは、ほんの数年前までは東京の大企業で働くビジネスマンでした。どちらも「忙しい」とはいえ、都会と離島という両極端な環境に身を置きながら、何を感じるのでしょうか。

「小豆島にきて豊かだなぁと感じました。都会にいた時は嗅覚、聴覚を失っていたように思います。たとえば東京にいる人はよくイヤホンで音楽を聴いていますが、それは音楽で耳をふさいでいるんじゃないかなと。都会と島では豊かさの中身が違っていて、金銭的な豊かさは都市にあるけど、島には心の豊かさがあります」(真鍋)

th_435A1645 膨大なヒト・モノ・コト・情報が流れ続ける都会に対して、鳥のさえずりや波の音、草花の香りなど自然な音や香りに包まれる島。大きな経済をまわすためには沢山のヒト・モノ・コト・情報が必要になりますが、反面では「価値あるものが消えていく危機感を感じる」と黒島さんは言います。

「経済を早く動かすものに価値を見出しがちですが、長期的にみると自然とともにあるものをしっかり残していくことに価値があるのではないかと思います」(黒島)

島を伝える情報づくりや、島と街をつなぐ地域活動を仕事にするお二人。真鍋さんは最近、本土とのアクセスもよい小豆島や、近隣にある豊島、直島、女木島、男木島などの香川の離島をひっくるめて「島も街の一部じゃないのか?」と感じているそうです。

「街の外に島があるというよりは、街の中にフェリーが走っているという意識で、みんなの心の地図を塗りかえたいと思っています」(真鍋)

離島にある課題の原因には他地域と陸続きでないため、ヒト・モノ・コト・情報がつながりにくいことがあります。離島と本土など、島々同士がつながることでそれぞれの良さがトレードされるとしたら、モノやコトだけでなく心の豊かさも広がっていくかもしれません。

前半の講義が終了したところで参加者に感想を伺いました。

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海外で暮らしていた経験のある参加者は「日本は北から南まで違った自然があり人々も違う。1つの国でこんなに多様性のある国はそうないんじゃないかと思います。島国の中で人々がつながっているのは、海外の人が驚くところです」と、海外からみた日本の印象について語りました。

日本は地球上にある小さな離島群であり、本土といわれる島もひとつの離島です。個性豊かな島々がうまくつながることができれば、きっと島国全体が明るい未来につながるはず。

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1日目の講義後に開催した懇親会でも島人のプレゼンは続きました。新島と小豆島に続き、2日目は島の未来を担うセガレたちに話を伺います。

[4]島知学 甑島&喜界島「島を未来に継ぐ」に続く(Coming Soon) >>

     

離島経済新聞 目次

Little Community Labo リトルコミュニティ研究所

vol.1 「島知学」2012/11/17-18

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