つくろう、島の未来

2024年11月21日 木曜日

つくろう、島の未来

2024年3月13日、伊豆諸島(いずしょとう|東京都)産の本格焼酎「東京島酒」が地理的表示(GI※)の認定を受けた。

※Geographical Indication……世界貿易機関(WTO)の「トリプス(TRIPS)協定」に基づき、正しい産地で一定の基準を満たして生産されたことを示す表示

本格焼酎では、壱岐島(いきのしま|長崎県)の「壱岐焼酎」などに続き国内5件目、18年振りの認定。島々で醸される「島酒」のブランド化に期待がかかる。

江戸時代に薩摩から伝わった島々の焼酎造り

2024年3月29日、東京国税局で「東京島酒」の地理的表示(以下、GI)伝達式が開催され、東京国税局長よりGI東京島酒管理委員会(代表:奥山清満)へ認定状が授与された。

「東京島酒」は伊豆諸島で生産される本格焼酎。江戸末期の嘉永6(1853)年に、薩摩藩の密貿易の罪を負い八丈島へと流された薩摩商人の丹宗庄右衛門(たんそう・しょうえもん)が、故郷より蒸留器を取り寄せ島民に焼酎造りを教えたことを起源としている。

火山島の伊豆諸島では、水田に適した土壌が少なく穀類は伝統的に麦や粟などが栽培されてきたことから、米ではなく麦をこうじに使った焼酎造りが主流に。

麦こうじ由来の香ばしい香りや草木のような清涼感が特徴の焼酎は、強い香りを持つ明日葉や伝統食の「くさや」などとも相性が良く、郷土食と一体となって伊豆諸島の食文化を形成している。

こうした独自性が評価され、2024年3月13日付で「東京島酒」のGI認定に至った。

伊豆諸島へ焼酎を伝えた流人・丹宗庄右衛門を顕彰する「島酒の碑」(八丈島)

現在、伊豆諸島には伊豆大島(いずおおしま)、神津島(こうづしま)、三宅島(みやけじま)、八丈島(はちじょうじま)、青ヶ島(あおがしま)に9つの焼酎蔵があり、そこで製造される「麦こうじを使用した芋焼酎」と「麦麹を使用した麦焼酎」、および両者のブレンド焼酎が、GI認定の対象となる。

GI認定の基準

原料
・芋類に国内で収穫されたさつまいものみを用いたもの
・こうじに麦のみを用いたもの
・水に伊豆諸島の島内で採水した水のみを用いいたもの
製法
・伊豆諸島の島内で発酵、蒸留、貯蔵が行われていること
・原酒および製品の貯蔵は常温で行うこと
・麦または芋類、こうじおよび水を原料として発酵させたもろみを、単式蒸留機をもって蒸留したものおよびそれらを混和したものであること
・消費者に引き渡すことを予定した容器に伊豆諸島に島内で詰めること

GI東京島酒管理委員会の事務局長を務める八丈興発の小宮山善友さんは「伊豆諸島の人口減や地元消費者の嗜好の変化などを背景に造り手が結束し、島外へ向けた販路開拓とブランド化を目指し10年以上にわたり『東京島酒』の呼称を掲げて活動してきた」と語る。

「GI認定を弾みに、今後は国内はもちろん海外への輸出も見据え、島内外で『東京島酒』のプロモーションを行っていきます」(小宮山さん)。

本格焼酎のGI認定は、壱岐島(いきのしま|長崎県)の「壱岐焼酎」など続き、国内では5件目、18年振り。離島地域で醸される「島酒」の更なるブランド化に向けて、期待がかかる。

     

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