つくろう、島の未来

2024年10月15日 火曜日

つくろう、島の未来

多くの子どもたちが夏休みに入る今年の7月下旬、山口県の周防大島(すおうおおしま)で小・中学生を対象にした起業合宿「Startup Kids Camp」が開催される。主催は周防大島で島おこしを実践する大野圭司さん(39歳)。資金の一部はクラウドファンディングで集めている。

母校の廃校を機に島の未来を育む

山口県の周防大島(周防大島町)は、温暖な気候を利用した柑橘栽培で有名な島。山口県で栽培されているみかんの80%を占め、「みかん鍋」などユニークな郷土料理もある。

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「Startup Kids Camp」では、このみかんを題材に子どもたちの起業家精神を養う教育プログラム。

主催する大野圭司さんは周防大島生まれ。15歳で島おこしを志し、進学と就業のために広島や大阪、東京で経験を積み2004年にUターン。自ら精力的に起業を経験してきた一人だ。

島に戻った大野さんは、島の水族館や博物館の運営に携わりながら起業家を応援するフリーペーパーを発行するなど、島おこしに奮闘してきた。

しかし、2009年に人口減少により母校である周防大島町立油田中学校が廃校となり、大野さんは大きな落胆を味わう。「廃校を止められなかった悔しさをバネに、島の未来を担う子どもたちに関わる仕事がしたいとスイッチが入りました」(大野さん)

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母校の廃校を経験した大野さんの意識は教育にシフト。地元の小中学校や高校、山口県内の大学での起業体験学習やキャリア教育に携わり、2013年に教育事業を行う株式会社ジブンノオトを設立。2015年には中小企業庁の「地域活性化100」にも選定された。

これからの教育には起業家精神が重要

多くの起業家育成に携わってきた大野さんは、「これからの教育には、新たな仕事を自らつくり出す起業家精神が求められるようになる」と説明する。

今年1月、AI(人口知能)やロボットの普及により2030年には240万人分の雇用が減るという予測が三菱総合研究所より発表された。離島地域はもちろん多くの地域が衰退に向かうなか、地域を支えていくには急速な社会変化への対応も重要になる。

「2030年とは、中学1年生の子どもが25歳になる頃です。働き方や仕事の変化に対応するためには、新たな仕事を自らつくり出す起業家精神と、人間が得意とする能力を磨くことが重要だと考えています」(大野さん)

そのためには、「実体験に基づくリアルな想像力」「解決すべき問題を見つけ出す能力」「共同作業のためのコミュニケーション能力」の3つの能力が必要だと大野さんは話し、「Startup Kids Camp」ではこれら能力を養う。

「アメリカでは、子どもたちがレモネード屋を経営し、起業家精神を養う『レモネード・スタンド』という家庭教育があります。子どものころから楽しく小さな経営を実践する社会経験は、自立心を育み、起業家精神を磨く機会になります」(大野さん)

“みかん”を題材に起業体験。子どもたちによる株式会社化も展望

「Startup Kids Camp」では、レモンに変わり島のみかんが起業の題材となる。子どもたちは民泊をしながら自ら収穫したみかんを、お金に変えるアイデアを出し合い、プレゼンテーションを行う。収穫体験と起業体験がセットになる教育プログラムだ。

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今回、合宿だけに終わらず、子どもたちによる株式会社化やサポート体制の構築も展望する大野さんは、「小学生でも使える起業家教育の教材開発」などにかかる費用をクラウドファンディングで募集。開始から41日で第1次目標である200万円を達成した。

合宿の参加対象者は小学4〜6年生と中学生。周防大島はもちろん山口や広島を中心に全国から20名程度を募集する。参加費は2泊3日で30,000円程度を予定。5月8日までは引き続きの支援が呼びかけられている。

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「10〜15年経ち、AIが活躍する時代になっても、楽しみながら稼いで、輝いていられる素地を小・中学生の頃からつけてほしい」と大野さん。変化に富んだ時代を生き抜き、地域を支える近未来の主役を育てるプロジェクトの展開に期待したい。

【関連サイト】
島のみかんを使った小中学生の起業合宿!日本の未来をつくろう!
ジブンノオト

     

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