つくろう、島の未来

2024年04月25日 木曜日

つくろう、島の未来

日本初の国立公園の一つとして誕生した瀬戸内国立公園。大小1,000あまりにおよぶ島々で形成され、多島美を眺望できる。この雄大な景観を有する瀬戸内の島の高校で、地域を盛り上げようとする動きが活発化している。各校の取り組みについて教諭や生徒らに話を聞いた。

■地域を紹介する冊子を作成。瀬戸田高校「しまおこし事業部」

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広島県の生口島(いくちじま|尾道市)は、柑橘類の生産が盛んで、国産レモンの発祥地として有名な島。尾道市と今治市を結ぶしまなみ海道が島内を走り、サイクリストなど、多くの観光客が訪れる。

県立瀬戸田高校の「しまおこし事業部」は、瀬戸田に訪れる観光客の増加を目的に、生徒会に所属する7名の生徒が中心となって行う活動だ。同部は2011年から活動を始め、地域で行われる行事へのボランティア参加や、瀬戸田で観光客のおもてなしをしている人を紹介する冊子『巡り人』の制作などを主な活動内容としている。

同部の顧問を務める藤田先生は「『巡り人』の制作で島の人に取材をするうちに、生徒は人とのコミュニケーションが上達している。最初は緊張していた生徒も、自分の意見が言えるようになった」と生徒の成長を話す。

部員の1人で高校3年生の福原さんは「島内の商店の人に話を聞きに行った。緊張はしたけど普段聞けない話を聞けておもしろかった」と話す。部員は外国人観光客向けに『巡り人』の英語翻訳も行い、7月に完成させた。

■UIターン者の仕事を取材。大崎海星高校『島の仕事図鑑』

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近年、移住者が増加している広島県の大崎上島(おおさきかみじま|大崎上島町)は、竹原港や今治港から船でアクセスでき、約8,000人が暮らしている。

大崎上島では、商工会が主導する定住・移住支援プロジェクトの一環として、島にある仕事を紹介する『島の仕事図鑑』の制作が企画された際、地元の高校生にも関わってほしいという声が挙がり、制作には立候補をした大崎海星高校の生徒8名が取材を担当した。

取材対象は島にUIターンした28名の住民。2014年12月から毎週打ち合わせや取材を行い、約3ヵ月間かけて完成させた。同記事は、製本され町役場や商工会、移住支援イベントなどで配布されている。

『島の仕事図鑑』の制作をサポートした田村浩成先生は「UIターンの人たちが、どのような思いをもって島に来たのか。島でどのような仕事をしているのか。インタビューをしていくなかで、生徒は仕事というものを身近に感じたと思う」と話す。

また、取材の縁から、取材対象者が同校で実施している社会人講話の時間で講話を行い、文化祭にも参加するなど、その後の交流も続いている。田村先生は「図鑑の制作を通して、地域とのつながりができたのは嬉しいですね」と話す。

■かつての島の中心地を高校生が案内。今治北高等学校大三島分校「歴史トラベラー新地」

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生口島と同様にしまなみ海道が島内を走る愛媛県の大三島(おおみしま|今治市)。全国にある山祇神社の総本社として名高い大山祇神社と宮浦港を結ぶ参道には、かつて多くのお店が並び、島の中心だった。

2014年からはじまった、観光客に向けて島をPRする「歴史トラベラー新地」は、今治北高等学校大三島分校(以下、大三島分校)の生徒たちが新地地区の歴史や建物についてガイドするというもの。ガイドを担当する生徒たちは、夏休みや放課後の時間を使って、大山祇神社周辺に住む人たちから話を聞き、新地地区の歴史を学んでいる。

大三島分校の3年生で歴史トラベラーのガイドを行う木村さんは「島に生まれて17年。ただのさびれた神社だと思っていたけれど、ガイドをするうちに愛着がもてた」と話す。大三島分校の生徒は島で行われるさまざまなイベントで、観光客向けにガイドをしている。

大三島分校の地歴を担当している参河(みかわ)先生は「島の子は地域の人との関わりも深い。島の人とコミュニケーションをとることで島を好きになってほしい」と話す。そして「その延長線として、進路選択のときに何か良い影響があれば嬉しいです」と期待を寄せた。

■3校の生徒が大三島分校に集まり、意見交換会

2015年3月14日、大崎海星高校、大三島分校、瀬戸田高校の各島で活動する生徒が参加する意見交換会が大三島分校で開催され、24名が参加した。

意見交換会は瀬戸田高校の藤田先生が、大三島分校の「歴史トラベラー新地」に参加し、自校の生徒にも知ってほしいと思ったことをきっかけに企画された。大崎海星高校にも声をかけ、3校での意見交換会が実現した。

当日は「各地域の課題と魅力あるまちづくり」をテーマに3グループに分かれて、島の魅力や課題、高校生ができるまちづくりなどについてディスカッションが行われた。参加した大三島分校3年生の秋吉さんは「少子高齢化など、他の高校の子も感じている島の課題は同じだった」と振り返る。

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大崎海星高校の田村先生は「うちの生徒は1グループに1人ずつだったので緊張していた。それでも自分たちが作った『島の仕事図鑑』の紹介になると、いきいきと話していました」と話す。最初は緊張から積極的に話す生徒が少なかったが、自分たちが行った活動の紹介をするなかで打ち解けていった。

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ディスカッション後は、大三島分校の生徒がガイドをする「歴史トラベラー新地」を実施。今回の交流にあたって、大三島分校の吉住先生は「今までは行政区をまたいでの高校同士の交流はなかった」と話す。しまなみ海道や船の航路でつながっている瀬戸内の島々。行政区を超えたつながりが今後発展してくことに期待したい。


【関連リンク】
>> 広島県立瀬戸田高校

>> 広島県立大崎海星高等学校

>> 愛媛県立今治北高等学校大三島分校

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