つくろう、島の未来

2024年09月07日 土曜日

つくろう、島の未来

2023年秋、 日本が誇る秘島群・ トカラ列島 (十島村) の7島をめぐる 「トカラ列島マラソン」に参加したリトケイ・西田双太。リトケイでのリサーチ業務中に知った秘境のワーケーション施設を体験すべく、トカラ列島マラソンの帰り道に途中下船。 口之島で過ごした10日間の記録をお届けします。

※この記事は『季刊ritokei』45号(2024年4月発行号)掲載記事です。フリーペーパー版は全国の設置ポイントにてご覧いただけます。

文、写真・西田双太

レポーター 西田双太

海なし県の埼玉県出身。大学在籍中に海外放浪を経験した後、語学学校・ホテル勤務のかたわら、伊豆諸島・小笠原諸島・屋久島などの島旅へ。2019年リトケイ入社、主にWEB編集に携わる。2023年度末でリトケイを退職し、2024年度より長崎県五島市の地域おこし協力隊として活動中。

ひゃっほー! と、 トカラ列島マラソンを完走したワタシは、ゴール地点の宝島から鹿児島市内に戻る船に乗船。 仲良くなったランナーたちと思い出話に花を咲かせながらどんぶらこ。口之島で途中下船しました。

トカラ列島の最北端にある口之島は人口約100人。 7つの島にそれぞれ60人〜130人
が暮らす十島村 (としまむら)のなかで最も鹿児島本土に近いので、「十島村の玄関
口」とも呼ばれています。

こちらが今回のお宿。ワーケーション施設として利用できる島暮らし体験施設 「あっぽう家」で10日間過ごします。個室が4部屋あり、シェアキッチン、レンジ、 洗濯機、Wi-Fi完備でとっても快適。

こちらは集落内にある 「口之島売店」。飲みものや食べもの、 洗剤など生活に必要なものは揃う充実ぶり。 営業時間は9時から13時で、十島村の地域おこし協力隊として活動する方が運営されています。

自転車しか借りていなかったワタシ。地域おこし協力隊のご夫婦が車で島内を案内してくれました。 口之島は野良牛 (野生の牛)が散歩しているようなワイルドな島。「牛に遭遇したら遠くから見てね」とのこと。

トカラ列島には日本有数の秘湯があります。口之島のセランマ温泉は集落から車で30分ほど。 自分でお湯を入れて、温泉を楽しみ、備え付けの掃除用具で自分でお掃除して帰るタイプの秘湯です。

集落散策していると、ふと出会ったおじちゃんに「バナナに行くか」と誘ってもらいました。倒れそうな木を見つけたおじちゃんは、Yの字の枝をノコギリで切って、ものの数分でバナナを固定。これぞ生きる力。

かわいい看板の先には学校があります。令和6年から「口之島学園」 という義務教育学校に移行。15人ほどの児童生徒が在籍していて、 離島留学制度をつかい島外からやってきた子どもたちも通っています。

集落のコミュニティセンター前、大きなガジュマルがある広場には 「カワ (河)」と呼ばれる水洗い場があって、子どもたちの遊び場にもなっています。 ちょうどこの日は島の皆さんが掃除をしていました。

ロ之島には野生のヤギもいて害獣として駆除対象になっています。 口之島の場合は、獣道に魚網を仕掛けておくと捕まるとのこと。けれど、こんなに可愛い子ヤギが捕まったときは、そのままペットにすることも。

ワーケーション滞在なので日中は普段通りに仕事をしながら、休み時間や終業後に自転車であちこち散策。天気によっては真っ白。坂道も多いので島の人に「チャリンコかよ!」とおどろかれることもありました。

集落からも近いビーチに行ってみると、とにかく海ごみがすごかった… 世界中から流れ着く大量のごみを、人口100名程度の島に暮らす人だけで片付けるのは到底不可能。この現状を解決してくれる人を求む!

こちらは北緯30度線の碑。1946年2月2日、GHQにより北緯30度以南の島が日本から行政分離され、米軍統治下に置かれました。トカラ列島最北端で北緯30度線が通るロ之島はその境界にある島なのです。

早朝5時くらい。通船作業を見に行くと、昼間は畜産をしている兄ちゃんや島の皆さんが、綱引きのようにロープをひっぱっていました。船から下ろされた荷物を皆が受け取りにくる、ほんの10分ほどの朝の営み。

通船作業後、売店の前に集まって 「おつかれー」「がんばったなー」 と話す島のみなさん。売店の中は荷物だらけ。早朝5時から9時の開店時刻までに、 値札をつけるなどの作業がてんこもり。大変だー!

口之島で長年、畜産をされている気さくなトヨジさんの牛舎へ。島で生まれ育った牛は、1歳になるかならないかの頃に出荷されていくとのこと。この日は牛たちが送り出される前日。トヨジさんの目はどこか悲しげでした。

そして翌朝、ドナドナドナ〜。 送り出された牛たちは、そのままリフトで持ち上げられて、船に載せられていきました。ちなみにこの時の船はトカラ列島各島で牛を拾って本土に行くとのこと。つまり船内は牛だらけ?!

口之島コミュニティセンターで、 奄美群島の島唄を楽しむ会がありました。ワタシは一番後ろのはじっこの席にお邪魔させてもらえました。最後は、牛おどりで、やんややんやと盛り上がっていました。

こちら、サファリパーク状態の道端で出会った野生のロ之島牛。日本でも唯一の純血種の和牛で、大正時代に野生化したとのこと。「茶色い毛の口之島牛を見たらラッキーだよ」 というから、この日はラッキー!

10日間のんびり滞在すると荒天も晴れ間も楽しめます。島のお母さんと夜釣りをしたり、野生の果物を食べたり、ワタシの人生をより豊かなものにしてくれました。 島の皆さんお世話になりました。さあ、次はどこの島に。

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