つくろう、島の未来

2023年01月30日 月曜日

つくろう、島の未来

リトケイ編集部の石原と、沖永良部島在住のライター・ネルソン水嶋が海の仕事に携わる人々に話を聞く「島々会議」13組目のゲストは、高島(たかしま|岡山県)で親子三代にわたりタコツボ漁を続ける竹田さんと、広島県福山市でマイクロツアー「瀬戸内SamPo」を展開する伊藤さん。

コロナ禍で旅行自粛ムードが広がりはじめ、もう少しで3年が経とうとしています。はじめの頃は逆境を活かそうと全国各地でオンラインツアーが生まれ、今ではすっかりと定着。その大体の「型」は、事前に送られてきた特産品をつまみ、映像を見ながら語らうというもの。

そんな中、2022年に岡山県の笠岡諸島・高島(たかしま)で8回にわたり開催された【ドキドキのタコツボ水揚げLIVE中継】は、タコツボオーナーとして、自分が選んだタコツボにタコが入っているかを見届ける、他に類を見ないハラハラドキドキのオンラインツアーです。

体験した方の中には、8回全てに参加したリピーターも。水揚げ量が減り「厳しい海」となりつつある瀬戸内で生まれたツアーは、「タコ」と「生配信」を通して人とのつながりを生み出しています。

人物紹介


有限会社竹田水産 竹田航平さん
岡山県の笠岡諸島・高島でタコツボ漁やノリ養殖などを行う。祖父が笠岡市で初めて取り組んだタコツボ漁を、2014年に三代目として継ぐ。高島で営むペンション「カーサ・タケダ」では、名物のタコの丸揚げなど高島の海の幸を提供している。


有限会社福山サービスセンターイトウ 伊藤匡さん
旅行サービス手配業を営む。父が1982年に創業し、2014年に二代目として家業を継ぐ。地元のマイクロツアーに特化した「瀬戸内SamPo」では、地域に根ざした小さな旅行会社ならではの「ちょっとおもしろい」体験旅行の企画に力を入れている。
瀬戸内SamPo


ライター・ネルソン水嶋
合同会社オトナキ代表。ライターと外国人支援事業の二足のわらじ。鹿児島県・沖永良部島在住。祖母と二人暮らし、帰宅が深夜になると40歳手前なのに叱られる。
Twitter


離島経済新聞社 石原みどり
『ritokei』編集・記事執筆。離島の酒とおいしいもの巡りがライフワーク。著書に奄美群島の黒糖焼酎の本『あまみの甘み 奄美の香り』(共著・鯨本あつこ、西日本出版社)。

瀬戸内でタコツボ漁師とツアーのプロが出会った

竹田さんは、ご実家がタコツボ漁をされていたのでしょうか?

そうです。おじいちゃんが笠岡市で最初にタコツボ漁を始めたらしく、僕も子どもの頃から父親と三人でよく漁へ出ていました。家業を継いで10年くらいになります。

高島は人口70人ほどですが、漁業者はどれくらいいるんですか?

12〜13人くらいです。高島は本土から5分で行けるので、ほとんどの住人は本土側に家を建てて島に通っています。島で生活している人は、昔から住んでいるおじいちゃんおばあちゃん3~4人くらいですね。

伊藤さんは福山市で旅行業をされていて、福山・瀬戸内エリアを楽しむツアー「瀬戸内SamPo」を展開されています。今回お話を聞かせていただく【ドキドキのタコツボ水揚げLIVE中継】も、そのひとつですね。

もともとは団体旅行の企画をしていたのですが、コロナの影響で 遠方のツアーが動かなくなり、お寿司屋さんでうんちくを聞きながらお寿司を握る体験など、地元の人に地元のを楽しんでいただくマイクロツアーとして「瀬戸内SamPo」を始めたんです。

伊藤さんと竹田さんは、日頃からお付き合いがあったんでしょうか?

いえ、竹田さんとは他の企画で島に行ったときに知り合いました。何度か会うなかで、他の地域でタコツボオーナー制度というものがあると知り、「ここでもできるのでは」と相談したら初めての試みにも関わらず「できますよ」と即答。

漁師は堅い人が多いイメージだけど、竹田さんは前向きに考えてくださるので、すごく組みやすかったですね。

タコツボオーナーになって水揚げを見守る【ドキドキのタコツボ水揚げLIVE中継】の様子

やりがいは、楽しさと、瀬戸内のタコを届けること。

どうして「タコツボ漁のライブ配信」になったのでしょうか?

タコツボのオーナーさんを募集するにあたって、ただ写真を見せて結果をお知らせするより生配信で水揚げの様子を見せた方が信憑性もあるしワクワクすると思ったんですね。

漁の様子もお客さんに楽しんでもらえそうだと思い、竹田さんに「ライブ配信しましょうよ」と話を持っていきました。

コロナ禍でなかなか地方へ出かけられないなか、例えば酒蔵を紹介するなど、全国のいろんな地域の生産者さんとネットでつなぐオンラインツアーが生まれましたよね。

結果的にオンラインツアーという形になりましたが、実はその言葉はあまり使ってはいないんです。

お土産みたいに商品を送るオンラインツアーとは違って、【ドキドキのタコツボ水揚げLIVE中継】ではお客さんが申し込むときに自分でタコツボを選ぶので、ライブ映像で見るタコツボに対して「自分のもの」という認識が生まれる。そこが楽しさだと思っています。

竹田さんの水揚げを固唾を飲んで見守りながら「タコが入っていた!」「入っていなかった!」とハラハラドキドキしながら結果を見守るわけですね。

墨抜きして、希望者には茹でて配送してくれるので、普段魚を捌いたりしない人でも参加しやすいですね。

ツボにタコが入っていなかった場合は竹田さんが養殖しているノリが送られる。

配信しながらの漁は普段と勝手が違うと思いますが、竹田さんは実際やってみて、いかがでしたか?

ライブ配信をすると、一人で漁をやるよりも倍の時間がかかりますが、お客さんからの反応が分かるので、お金うんぬん関係なしに新鮮でおもしろかったですね。

タコツボを水揚げする竹田さん

竹田さんにとって、ライブ配信もタコツボオーナー制度も初めての試みだったと思うんですが、伊藤さんから提案があったときにどう感じましたか?

昔は漁で捕れる魚も多く値段も良かったので、それなりに生計も立てられたらしいんですが、今は普通に漁をしていても生活がギリギリできるレベルだとうすうす感じていたんです。

そこで伊藤さんから話があり、同じタコが100円でも200円でも高く売れるならうれしいし、毎日同じことの繰り返しではなく、変わったことをやることでモチベーションも上がる。

どういう結果になるか予想はできなかったけど、おもしろそうだし、協力してみようと思いました。

収益面では、どうでしたか?

箱代や送料もかかるので、実は市場に出すのとそれほど儲けは変わらないんです。

ただ、この辺りのスーパーにしても、外国産か北海道産のヤナギダコの2種類しか置いていないので、瀬戸内産のタコを味わってもらえることに、やりがいを感じています。

確かに、国産のタコを見かけないですよね。昔はもっとあった気がするんですが。

海が変わってきていますね。これまで当たり前に捕れていたものが捕れなくなってきている。瀬戸内は漁師にとって厳しい海になってきています。

ライブ配信では瀬戸内の風景や、竹田さんと伊藤さんの掛け合いも楽しみのひとつ

瀬戸内のタコは、タコの概念を変える味。

海の環境や市場の変化もある中で、タコツボ漁のやりがいや難しさをどのように感じていますか。

難しさはそんなにないですね。やりがいを感じるのは、漁業全般に言えるけど、めちゃくちゃ捕れたとき。

あとは、うちはペンションも経営しているので、そこで出したタコを食べたお客さんから「おいしい」という声を直接聞いたときはうれしいです。

ペンションでは、私のおばあちゃんが考案した「タコの丸揚げ」という料理を出していて、下処理をした1キロ前後のタコに唐揚げ粉をつけて、そのまま油で揚げる。それをお客さんにハサミで切って召し上がっていただきます。

カーサ・タケダで提供している「タコの丸揚げ」

食べてみたいです!島ダコは、どんな味わいなんでしょうか?

ベタな表現になっちゃうんですけど、柔らかくて、噛めばかむほど味が出てくるという感じです。一度でも食べてもらえれば、タコの概念が変わると思います。

僕もツアーを提供したから言う訳じゃないですけど、今まで食べた中で一番おいしいタコで、まさに概念が変わるという感じでした。

お客さんからも言われましたけど、なんであんなに甘いんじゃろと。料理長さんがいい塩梅をしてるんですね。

うちの料理長も僕と同年代の30代で、新メニューの相談など、前向きに検討してくれます。いろいろ挑戦できるのも、周りの人に恵まれているおかげです。

海から臨むカーサ・タケダ。手前の砂浜は満潮時には実質プライベートビーチ状態となる。

損得勘定じゃないお客さんの優しさに驚いた

タコツボオーナーはどのように募集されたんですか?

ラジオやテレビ、またネットでもプレスリリースを出しました。当初は地元の方が参加すると思っていたんですが、地元よりも東京や山梨など遠方の方が多かったですね。

2022年は8回開催しましたが、毎回参加されるリピーターの方もいて驚きました。一回目はタコが当たらなくて、二回目で当たり、もう終わりかと思ったらまた参加されて。

毎回参加される方も!クセになるんでしょうか。

漁の様子を配信するだけじゃなく、出港してからの竹田さんとの会話を流してるんです。毎回同じにならないよう工夫するんですが、だんだんネタがなくなってきたなと(笑)。

リピートされる方の気持ちが少し分かった気がします(笑)。

伊藤さんも毎回船に乗り込んで撮影されているんですね!船酔いは大丈夫ですか?

船酔いは平気ですけど、真夏なので暑かったですね。あと、海底からタコツボを引き揚げるので泥がすごく跳ねるんです。漁って大変なんだなと思いました。

そういうことは、船に乗らないと分からないですよね。そういうリアル感を映像でお届けできたんですね。

印象的だったのは、笠岡のタコツボは水産資源を採り過ぎないようツボにフタが付いていないんですね。

地域によってはツボに入ったタコが逃げないようフタがあるんですが、そういうことを僕らは知らなかったので、良い経験だったなと思います。

小さいタコだったらリリースすることもあるんですか?

そうそう。そこもきちんと配信して、タコツボのタコが小さいと、竹田さんが「すみません」と言いながら、理由を説明してリリースするんですよ。もちろん事前に説明もしていますが、これまで一件もクレームはないですね。

学びや発見など、ちゃんと納得感があるからですね。

大切な水産資源を守るため、タコが小さい場合はリリースしている。

コロナ禍の旅行自粛でオンラインツアーが全国的に増えましたが、無意識での部分も含めて、きれいなところしか見せていないところも多いと思います。

【ドキドキのタコツボ水揚げLIVE中継】では漁のリアルをちゃんと伝えている。すごく学びになりますね。

ありがとうございます。初回を除いて3分の2くらいの売れ行きなので、すごく売れたわけではないんですが、それより、お客さんの層がそれまでの商売とは全然違うのを感じました。

へー!どのような感じなんですか?

みなさん、めっちゃ優しいんですよ。僕らも初めの頃は、お叱りを受けてもしょうがないミスをしましたが、みなさんとても優しくて。

損得勘定ではなく「おもしろいことにお金を払ってもいいよ」という気持ちで購入してくれたのかな、と思います。

おもしろいことを体験するために参加しているから、アクシデントもおもしろみになるんですね。参加されたお客さんからはどんな感想がありましたか?

竹田さんとうちのスタッフとの打ち上げに、せっかくならお客さんも呼ぼうと、有料のオンライン飲み会の参加者を3名限定で募ったことがあったんです。

我々とわちゃわちゃ話せるというだけで、「これ買う人いるかな」と竹田さんと話しながら実験のつもりでやったら3人集まった。あれは衝撃的でした。

その時打ち上げに参加された方の話では「自分が行こうと思っても行けない島で、水揚げライブからタコの発送までこんなお手軽にやってくれるなんて安すぎる」と言われました。

おタコしみ袋でもタコが食べられる!?かも

【ドキドキのタコツボ水揚げLIVE中継】は2023年も開催されるとのことですね。今後やってみたいことやアイデアがあれば教えてください。

タコツボ以外にも、ミツバチの巣箱のオーナー制度なども考えています。

あと、1月末まで「おタコしみ袋」というものを限定50個販売していて、竹田さんのところで捕れた魚の干物やノリが入っていて、タコも捕れれば入ります。

私は特に思い浮かんではないですが、おもしろい話があれば多分すぐに乗っかります(笑)。

おもしろそうな事はすぐに乗っかる、いいですね。今年も楽しい企画を期待しております!

おタコしみ袋販売ページ | 瀬戸内SamPo

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