新聞づくりを通して海と島でできた日本を学ぶ学習プログラム『うみやまかわ新聞』の2015年度版が完成。第5回目の最終回は津堅島(つけんじま|沖縄県うるま市)の子どもたちによる新聞づくりを紹介します。
小学校高学年向けの総合学習プログラムとして、2014年度からスタートした『うみやまかわ新聞』は、「新聞づくり」を通して海と島でできた日本を学ぶプロジェクト。今年度も全国の小学生が参加し、2月1日に2015年度版が完成した。
新聞づくりを行った離島地域5カ所[利尻島(北海道利尻町)/家島(兵庫県姫路市)/弓削島・生名島・佐島・岩城島・高井神島・魚島など(愛媛県上島町)/対馬島(長崎県対馬市)/津堅島(沖縄県うるま市)]を含む全国12地域の子どもたちが東京に集まり、2月21日に発表会を行った。この連載ではプロジェクトに参加した離島地域を中心に、発表会の様子と実際の記事の内容を全5回にわたって紹介する。
ふるさとの魅力を、方言を交えて伝える
参加地域のうち最も南にある津堅島からは、6名の児童が東京の発表会にやってきた。津堅島は沖縄本島からフェリーで30分の場所に位置し、人口は500名ほどの島。
幼稚園、小学校、中学校が一体となったうるま市立津堅幼・小・中学校では、小学3年生から6年生までが力を合わせて『うみやまかわ新聞』を制作した。発表ではまず「全校生徒は30人と少ないですが、全員が三線を弾けることが自慢です」という学校紹介から始まった。
「キャロットアイランド」と呼ばれる津堅島は、島をあげてのにんじん栽培で知られている。新聞もテーマもずばり「ビディ島キャロットアイランド」。ビティ島とは「わたしたちの島」という意味。できあがった新聞の一面も、「甘みがすごい!津堅にんじん!!」で、島の暮らしにおいて、いかににんじんの存在が大きいのかを物語っている。
発表会での記事紹介も一面記事から。語りかけるように始まった発表は方言混じりで、標準語の訳が舞台上のスクリーンに映し出される。
現在は「キャロットアイランド」として有名な島だが、かつては青首大根の栽培が主流だった。1955年、土壌に合う作物を育てようとにんじん畑への転換が始まり、今では島の面積の8割を占める畑のうち、にんじん畑が60%になったという。
島のにんじんは、収穫してそのまま出荷するのはもちろん、加工も盛ん。紙面では津堅島人参加工販売所の方に取材した、「にんじんゼリー」のレシピも掲載している。発表時には、加工品として「にんじん麺」があることにも触れ、「にんじん色と甘みを生かした非常においしい麺。学校給食でも人気です」と語ってくれた。
陸の食べ物に続いて、海の幸である「もずく」が記事に取り上げられている。タイトルは「世界一のもずく」。沖縄は世界一のもずくの生産量を誇り、特に津堅島はもずくの養殖が盛んなのだ。
津堅島が属する勝連漁業協同組合では、年間6.000トンものもずくが収穫される。記事では、もずくの種類や、栽培から出荷までの流れが細かく紹介され、日頃、当たり前に食べているもずくについて、意外と知らなかったことを思い知った。
発表では、給食のメニューにもずくのあんかけ丼があることにも触れていた。前述のにんじんに続き、津堅島の児童らは、特産品を利用した給食がお気に入りのようだ。
そのほか、「卒業記念サバニで島まわり」「津堅島のビーチ」「津堅島の主な伝統行事」について書かれた記事についても上手に要約して発表。要所要所で「詳しくは新聞をご覧ください」と促されると、会場の人々は手元の新聞に目を落とし、児童らが思考を凝らした文面に引き込まれていくようだった。
津堅島版の『うみやまかわ新聞』にはカタカナ表記が多い。津堅島幼・小・中学校の卒業記念行事に使う小さな木船の名前は「サバニ」だし、伝統行事や島の暮らしを支えた井戸の名前もカタカナである。児童たちが全国に伝えたかった「島の大切なもの」は、みんなカタカナで表記される島独自のものだった。
「中学校を卒業したら、全員が進学のために島を出る」という児童らにとって、ふるさとの言葉の重みはどんなものだろう。一旦は離れることになる島の情景を、文字通り「自分たちの言葉」で刻み込んだ新聞は、いきいきとして読み応えがある。
「うみやまかわ新聞」最後の授業、そして2016年版の制作始動
さて、離島地域5カ所を含む12地域の発表が終わると、東京での発表を終えた児童たちは各地域へ帰り、それぞれの学校で最後の授業を行い、紙面を飾ったイラストを配置した特製の修了証が、一人ひとりに手渡された。新聞づくりの経験が、これから出会う興味関心を「伝える」術として役立ってくれたらと願う。
2016年度になり、新しい『うみやまかわ新聞』づくりもスタートした。今年度は、新たな学校や地域も加わってどんな新聞ができ上がるのだろう。取材の好奇心を持って向き合う地域は、きっと新たな発見に満ちているはずだ。
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【関連サイト】
うみやまかわ新聞公式ホームページ
※実際の紙面に掲載された記事はこちらから読むことができます。