つくろう、島の未来

2020年10月01日 木曜日

大崎上島の、この島で生まれ育った人、 都会から移り住んできた人、たまにこの島へ遊びにくる人、 この島が好きだという人たちでつくる 「かみじまファンズ」。 この会の冒頭で、ある人がこの島のことを「宝島」と言いました。 「島は宝島」。島のおじさんたちに話を伺いました。(後編)

大崎上島に移住し、オーガニック農園を営む二郎さん。有機農法を始めたわけとは?
(前編はこちら

■下手に大きくする必要のない経済。

リトケイ:

二郎さんはこの島に移り住んで、 オーガニック農園をされている、いわゆる新参者ですね。

二郎さん:

ぼくは農業の素人だったけど、 今はブルーベリーと柑橘の有機農法で、 JASの認可もとってやっています。

リトケイ:

なぜ無農薬をはじめたんですか?

二郎さん:

ぼくも最初の1年間は、 農協が言うよう 農薬つかっていたんですよ。

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二郎さん 香川県出身。都会生活を経て、大崎上島へ移住。 有機栽培農園「花の里」代表

リトケイ:

そうなんですか。

二郎さん:

でも、昼間に農薬をまいて夕方にお酒をのむでしょ。 すると、そのお酒がのめないんですよ。 農薬をまいた日は気持ち悪くてもどしちゃう。

リトケイ:

へえ!

榎本さん:

今は農薬の濃度が下がったけど、 何年か前までは、死者もでていました。 今は弱くはなっているけど。

リトケイ:

農薬って、そんなにきついんですね。

榎本さん:

でも、これも難しいんですよ。 隣の農園が農薬をつかっていたら、 自分のところだけを無農薬にするわけにはいかないから。

リトケイ:

この島ではどのくらいの農家が無農薬をされているのですか?

二郎さん:

規模の小さなとこはみんなですよ。 大きなところでいえば9軒ですね。 ただ、選択は自由だし、買う人も自由だから ぼくが有機をしているからといって、 有機だけが絶対に良いとは言わないです。

榎本さん:

だけど、近い将来、 農協の販売システムも限界が来ると思います。 今、専業農家は農協を介したほうが手間がないからそうしてるけど、 いろんな人が独自に販路をつくっていったら、 たぶんやっていけないんじゃないかな。

リトケイ:

どういうことでしょう。

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ものすごく甘いトウモロコシをいただきました。

二郎さん:

たとえば、野菜をつくって農協にだすと、 その野菜は広島にいって市場で競りにかけられる訳で、 値段は買い手任せになります。 でも、有機の場合は、 売りたい値段を自分で決めることができるんです。 それで、よかったら買ってください、と言える。 そうすると、生産量は決まっている訳だから 収入も読めるんです。

リトケイ:

なるほど。

二郎さん:

ところが、農協に出していると 自分の収入が読めない上、 競りだから毎日価格が変わるんです。 ぼくは、今年は200円でいこうと決めたら1年中200円でもいけるけど 競りだと良い時には250円になっても、 悪い時は30円40円まで落ちてしまうこともある。 自分でつくったものを自信をもって市場に出すには 有機しかなかったんです。

リトケイ:

有機にはそういう理由もあったんですね。

二郎さん:

あと、ぼくはもう4年くらい、 毎年、武蔵野へみかんを400kgくらい持っていっているですが、 そこでいつもみかんを買ってくれているお客さんに、 ある時、ぼくのみかんを食べて病気が良くなってきた、 と言われました。 他に何もしていないから、それしか考えられないと。

リトケイ:

すごい。

二郎さん:

ぼくはみかんを売っているのに、 逆に美味しいものを送ってくれたりしたり。

リトケイ:

それは嬉しいですね。

二郎さん:

農薬が悪いという訳じゃないけど、 こういう話を聞くと、何もしないことは良いことだな、と思いますね。 主流は農薬をつかった農法だけど、 病気を持った人とかアトピーに悩んでいる人などは、 やっぱり有機栽培に流れてくると思います。

リトケイ:

たしかに。 もっと増えたら良いですね。

二郎さん:

でも、ぼくたちはほんの少しでいいんです。 ほんの少しのお客さんが買ってくれれば、 ぼくらの生活も島の経済も成り立つから。 下手に大きくする必要はないんです。

■宝島の未来。

リトケイ:

お話を伺っていると、この島は本当にたくさんの宝に恵まれていますね。

石倉さん:

魚なんかも隣近所が持ってきてくれるしね。 今朝なんかは、こんなおっきい(両手をひろげる)エイを 持って来てくれたりして。 もらいもんで結構贅沢できる。

リトケイ:

エイですか。すごいですね。

石倉さん:

贅沢なようやけども、 朝、目を覚まして玄関にいくと
春なんかだどコンテナいっぱいにタケノコが入ってるんですよ。
もう、食べきらんくらいに。

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石倉さん 大阪出身。5年前に夫婦で島へ移住

リトケイ:

うらやましい…。

石倉さん:

でも、誰がおいてくれたか分からん。
そういう笑い話でいえば、
タケノコが届きすぎて食べれんからそれをさらに隣に分けたり。
あっちこっち、夜の間に置いとってくれるんですよ。

リトケイ:

ははははは。
この島の方はかなりオープンに感じられますね。

榎本さん:

そうですが、 ある意味はちゃんと閉鎖的なとこもありますよ。
根っこは。 だから、甘んじてたらだめ。
やはり、礼には礼をもった人間的な付き合いが必要です。
外部から来た人をすぐ受け入れる人もいれば、
じーっと観察して見極めてからお付き合いを始める人もいますからね。
一昔に比べると恐ろしくはないけど、
ぼくもこっちに戻ってきてから、 ある意味では閉鎖的だなと感じます。

石倉さん:

ぼくなんかは、大阪出身で
北海道から沖縄まで住むとこを探してきてた訳ですけど、
ここよりももっとと閉鎖的なとこが多かったです。
なんだかんだ、声をかけてくれる人が多いのが良かったんかな。

リトケイ:

恵まれている上、人も良い島とは。

増本さん:

本当に、この島はずっと恵まれていたんですよ。
農業と海運と造船で生活ができる島でしたから。
でも、造船が不況になったこともあるんですが、
よそに比べたら遅れていることもあります。
だけど、島の人はなかなかそういうことに気がつかない。

リトケイ:

中にいると気づきにくいんですね。

増本さん:

私が思うには、子どもから変えなければと思うんです。
今、子どもが少ないんですよね。
しかし、大崎上島の人を育てるには子どもが重要だから、
そこををなんとかしたいです。

リトケイ:

小さい頃からここで育つとすごく良いでしょうね。

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増本さん 大崎上島出身。大崎上島観光協会会長

増本さん:

私はここで生まれて育って、本当にこの島が好きなんです。
観光にしても、 島にバラバラとあるものを整備すれば
観光資源になるものが多いと思っていて、
それを外に発信したいと思うけど、
島の者がやると、どうも不細工になっちゃうんです。
だから、外部から来た人たちから、この島を見たことを聞かせてもらって
島の者も新しい知識をいれなければと思います。
これまでは、島を出らずとも、「おらがとこが一番」
というような島国根性で良かった。
でも、今はいろんな人にいろんな意見を言ってもらって、
全部は受けられないにしても、
ひとつでも変わっていけばいいと思うし、
良いところも悪いところも、アドバイスしてもらえたら嬉しいです。

リトケイ:

外からの意見が必要ということですね。

榎本さん:

我々はここに浸りきっているから、
「ええもん」に気づかない。
竹原でフェリーにのって、 30分くらいでつくんですが、
ここに来る人は その30分がすごく楽しかったと言うんですよ。

リトケイ:

私たちもすごく楽しいとおもいました。

榎本さん:

静かな「凪(なぎ)」のなか島々が見渡せて、
それだけで癒されたと言うんですが、
私たちからしたら当たりまえすぎて気づかないことです。

リトケイ:

本当に、すばらしいものばかりです。

榎本さん:

人が来ることによって、
ここがなくなってしまうのを引きのばしたいと思います。

END

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