つくろう、島の未来

2020年10月20日 火曜日

先日、リトケイはTwitterを介してある島バンドをみつけました。それは「ペペンコビッチオーケストラ」という五島列島福江島のバンド。
「五島人の五島弁による五島の為の地産地唱バンド」というコピーのもと、すべての曲を五島弁で歌い、「ナイスミドル音楽祭2010決勝大会」の予選を勝ち抜き、東京で開催される決勝大会に出場するため上京するとのこと。
彼らが掲げる「地産地唱バンド」とは一体??11月某日、大会前夜に都内で行われた単独ライブに、おじゃましました。

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「地産地唱」のバンド活動とは??

イサモト:

ライブ前にお時間をいただきありがとうございます。みなさんは、五島列島福江島出身のバンドということですが、まずはお名前を教えてください。

ベ:

ボーカルのベベンコビッチです。

バ:

ベースのバップンドンクです。

ボ:

フルートコーラスのボッバボバルバです。

ド:

ドラムのドスグロカッチです。

ギ:

ボーカルフルート、ギッコンバッコンです。

イサモト:

不思議な名前ですね・・・由来はあるのですか??

べ:

ベベンコビッチは、ベベンコは「子牛」ですね。

バ:

バップンドンクは、「ひきがえる」「かえる」。

イサモト:

「ひきがえるかえる」なんですね・・・。

ボ:

ボッバボバルバは、「かぼちゃ」と「大きいかぼちゃ」で、ボルバというのが「小さいかぼちゃ」です。時々、ボルバボッバボバルバというんですが、それが本名です。

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イサモト:

本名もあるんですね…。

ド:

ドスグロカッチは「どすぐろい」という感じで。

イサモト:

そこはそのままなんですね。

ギ:

ギッコンバッコンは「足ブランコ」のことですね。お父さんが子どものブランコを押してくれるときに言うような。
あと、テレンパランというメンバーがいて、全部で6名ですね。今は忙しくて外にいるけど。

イサモト:

・・・面白いですね。このバンドができたきっかけは??

べ:

昨年4月に、僕が20数年ぶりに島にUターンでもどって、その後の8月にスタートしました。

イサモト:

ご年齢も幅広いようですが、メンバーはどのように集まったんですか?

べ:

飲み屋さんですね。島にはライブハウスとかないけんね。

バ:

島にはアンプもないし、マイクもなかったです。

イサモト:

みなさん、もともと音楽をされていたんですか?

ギ:

そうですね。他のバンドだったり、ブラスバンドだったりで。

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イサモト:

曲はすべて「方言」だそうですが、その理由は?

べ:

方言って愛着がわくじゃないですか。しかも、五島弁って意外にリズムにのるんですよ。ラップ的な感じで。 それで面白いのができたから、やっていこうかなと。

イサモト:

どなたが作っているんですか?

べ:

ぼくですね。

イサモト:

主にどんな活動をされているのですか???

べ:

島を中心に1年間で50くらいライブをやっていて、島以外では、長崎市内にいったり、大阪の五島人会にいったり。

イサモト:

話に聞くと、演歌からロックまでさまざまなジャンルをされるとか。

べ:

お客さんに喜んでもらうことが目的やけん、場所に合わせていろいろやりますね。老人ホームとか、小学校とか、お祭りとか。ぼくらのこだわりは、目の前の人に喜んでもらうこと。それで、五島人の人に楽しんでもらう、五島人のための五島弁のバンドです。

イサモト:

なるほど。

べ:

昨年、下甑をずっとまわってみて、あの、五島弁てね、五島人にしか伝わらんたい。島って、内地の田舎より離れとるから、郷里への想いもすごいんです。その想いをネットワークにして、町おこしをするのは、島だからできる特権かと思っていて。
真面目に演説するのはなんか堅苦しいけど音楽なら楽しくできる。で、僕らは方言で、地産地唱バンドを。

イサモト:

そうだったんですね。

べ:

五島人のためになるっちゅうのが一番の目的だったんだけど、やってると、結構いろんなところからの反応があって、外国人のリピーターも多いっちゃんね。

イサモト:

へぇぇ!

バ:

あと、島外から仕事でくる転勤族なんかも。

べ:

この前もかなりいたね。

バ:

五島以外の人からのほうが、ウケがいいかも。

イサモト:

島外の人にはわからないコトバも多いと思いますが。

べ:

リスペクトがあるんやないかな。大事にしてるっちゅうか。なんかこの人たち、意味わからないけど、自分達のコトバで楽しそうにやってるとか。

バ:

音楽という媒体というのは、必ずしもコトバが先にくるものじゃないから、その音とかリズムとかメロディーとかが優れてないと人は反応しないんですよ。

イサモト:

それで、方言が分からない人からも共感を得ているんですね。

五島の人と五島のことと。

イサモト:

五島の人ってどんな人ですか?

ベ:

がさつでシャイ。照れ屋やけど、がさつやし。

バ:

がさつな人はすげーがさつやね 笑。成功する人は多いよ。東京とかきても成功するような。

べ:

そうそう。

イサモト:

へええ。いま、五島を中心に年間50回されているということですが、これからどういう活動をされていくのですか?

べ:

子どもたちのいる小学校とかやっていきたいですね。
五島の中にも島はたくさんあって、それぞれ小さい小学校とかがあるんですが、そこにいる子どもたちが、生まれ育ったところに誇りとか自信を持てないと何事もうまくいかないと思うんですよね。

イサモト:

何事も?

べ:

観光にしろ、何にしろ、方言にしろ。外に向けてだけ身だしなみを整えるんじゃなくて、自分たちの内輪だけの盛り上がりでもいいから、盛り上がっていけば、それが誇りとか自信につながっていったりね。
たとえ内輪でも輝いていれば、結果として、外からも注目されるんじゃないかと。やっぱり、外に向き過ぎなんですよね。

イサモト:

観光とかは特にそういう印象がありますね。

べ:

祭りとかでは違う土地の伝統をもってきたりもするけど、もともと地元にあるものだけでも、良いものってあると思います。それで、ぼくらは地域に根ざしたものを掘り起こすということで方言だけで音楽をやってみているんです。

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イサモト:

なるほど・・・。

べ:

それで、いろんなメディアに取り上げられたりできるちゅうことは、島をPRすることにもなるしね。

イサモト:

みなさんが楽しそうな島は、行ってみたくなりますね。島は比較的閉鎖的なイメージがありますが、みなさんを見ていると福江島は閉鎖的なイメージが少ないような。

バ:

おおらかだとは思います。まだ人も多いから。

べ:

でも、どんどん減りようけんね。年間600人は。

イサモト:

結構減っていますね。

べ:

この10年くらいで47000人から40000人に減ってるけんね。将来的には人はもっと減ると思う。

イサモト:

人が減ると経済も縮小しそうですね。

べ:

なんか、キューバみたいに思えばいいっちゃんね。いかにお金を外に逃がさず、自分たちの中でまわしていくかとか。

イサモト:

それでたまに外貨が入ってきたらいいですね。

バ:

そうそうそう。輸出はどんどんしてね。

べ:

でも、いらんもんは輸入せんようにせなね。農産物とか。野菜とか。

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イサモト:

五島は海鮮がたっぷりとれますしね。輸出する材料も多いような。

バ:

五島はマグロの養殖もやってますからね。これは、はじまったばかりだから、市場はこれからかな。

イサモト:

真面目なお話がきけて嬉しいです。私たちは島の人の声からひろったもので、島のカタチを伝えていきたいと思っているものでして。

べ:

根っこは真面目やけんね。

イサモト:

(笑)

べ:

でも、やっぱ楽しむことやね。

イサモト:

バンドをされる前と後でかわったことはありますか?

べ:

人のつながりというか、どんどん広がってきていますね。ライブに来てくれお客さんが、そのままスタッフになったり(笑)。ライブでも、お客さんや子どもたちをステージにあげて、みんなで盛り上がったりしています。

イサモト:

みなさん、和気あいあいとしていて、楽しそうですね。

べ:

今日は五島人が沢山集まるし、かなり盛り上がると思うんよね。

イサモト:

いいですね。

べ:

普通の県人会で集まるより、やっぱ音楽だからね。聞く側も楽しくて、しかも五島弁やし。

イサモト:

ぜひ、聞かせていただきたいと思います。

五島をうたうベベンコビッチオーケストラ

– メンバーが楽屋に戻ったあと、 ライブ会場には続々と島出身の方や島に縁のある方が集結してきました。
「わーひさしぶり!かわってない!」「こっちに住んどうるとー?」再会を喜ぶ声や、島を懐かしむ声が聞こえるなか、赤いつなぎにヘルメット姿のベベンコビッチ率いるメンバーが登場。ハイテンションな曲からライブがスタートしました。

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(MC)べ:

どうも〜ベベンコビッチオーケストラです!よお〜来てくれました! いつも五島弁はしゃべりよらんでしょ?皆さん、今日は五島弁ばりばりしゃべっていいけんね。

会場:

はははは。

べ:

次ん曲は、五島ん人はみんな「あがんことまっちょんけん(あなたのことをまっているから)」という曲「とどひかよ(ひさしぶり)」です。

– 明るくやさしい曲にのり、ギッコンバッコンさんが歌います。

“とどひかよ〜(ひさしぶり〜)”
“あがんいっちょん帰ってこんね(あなたが全然帰ってこないから)”
“さみひかよ〜(さみしいよ〜)”

– 会場内に温かな空気が流れ、2曲目が修了。

(MC)べ:

次の曲は、全国に散らばった五島人のために歌いま・・・?
(ベースのバップンドックンさんが感極まった様子)

べ:

おいも泣けてくっちゃん!今泣きよったらもっと泣くけん。
(よくみると、会場前列の女性が号泣している様子)

バ:

勘弁してください・・・。

会場:

ははははは。

-やさしい空気の中、次に歌われた「春夏秋冬」は、お盆と正月にしか帰れない人が「春と秋の風景をわすれてしまった」という曲。

“島ば遠く離れて暮らしていて~(島を遠く離れて暮らしていて)”
“春と秋の景色ばわすれてしもったっち~(春の秋の景色を忘れてしまったって)”
“おっだはここで、あがば待ってるから(私はここで、あなたを待っているから)”
“もどりとーなったらいっでん帰ってくればいい(戻ってきたくなったらいつでも帰ってくればいい)”

-ベベンコビッチさんの歌声と詩に、お客さんの目にも涙が浮かびます。方言とは、お国言葉。だから、地域の中の共通語として、その地域外の人には理解できないものもあります。
でも、たとえ理解できなくても、ベベンコビッチオーケストラに感動してしまうのは、「土地を大切にする」「大事な故郷がある」ということが、共通するからでしょう。

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ライブの途中、ベベンコビッチさんが言いました。

べ:

ぼくは五島に生んでもろちょうけん、五島のためになんかせんば。おっどんが五島人をくっつけて、五島を盛り上げる接着剤になる。

-島にとっても、五島人にとっても、こんな風に、故郷への想いを大声で歌うバンドがいることは、すごく嬉しいでしょう。
ライブの休憩時間、会場のお客さんからは「泣いた~」「五島帰りたくなった~」という声が聞こえてきました。東京に移り住み、なかなか帰れない故郷をライブで思い出し、懐かしみ、その大切さを再確認されたようです。
ベベンコビッチオーケストラの曲には、温かく島を想う曲があれば、切ない曲もあり、明るく楽しい曲もあれば、おもしろおかしく島を歌う曲もあります。

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ちなみに、「ドッパーン&ザッブーン」という曲では、天候によって船や飛行機がとまってしまうという、おそらく他の離島にも共通する島事情が歌われます。

“海がシケったら島からでられな~い♪”
“生鮮品がたべれな~い♪”
“金持ちもビンボー人もでられな~い♪”

島の生活を楽しく歌い、問題までも明るく歌ってしまう。音楽の力で島と人をコネクトしていく地産地唱バンド。ベベンコビッチオーケストラは、この翌日の「ナイスミドル音楽祭2010決勝大会」でみごと準グランプリを獲得。某ニュース番組で紹介されるなど、みごと「五島のPR」にも成功し、「五島のため」のバンドとして大活躍されていました。

島を想い、島のためにがんばるバンドの活躍を、リトケイも期待しています。

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