つくろう、島の未来

2024年11月23日 土曜日

つくろう、島の未来

福江島(ふくえじま|長崎県五島市)沖で、2016年4月より日本初の浮体式洋上風力発電所が稼動している。最大2メガワットの発電能力を有し、年間の発電量は1,800世帯分を見込む。市の担当者に話を聞いた。

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日本で初めて実用化された洋上風力発電設備「はえんかぜ」(写真提供:五島市)

日本初の、浮体式洋上風力発電所

2016年4月、福江島の崎山漁港沖5キロメートルの海上に、日本初の浮体式洋上風力発電所が設置され、営業を開始した。

直径80メートルにもなる巨大な風車を備え、洋上に浮かぶ発電設備は「はえんかぜ」(幸せを呼ぶといわれる『南東の風』を指す島の方言)の愛称で呼ばれている。最大2メガワットの発電能力を有し、年間の発電量は1,800世帯分を見込む。発電した電気は海底ケーブルで福江島にある九州電力の受変電所に送られ、一般家庭などで利用されている。

海上に発電設備を設置する洋上風力発電は、陸上に比べて風速が強く変動が少ないことから、効率的で安定的な発電が可能とみられ、実用化が期待されていた。「はえんかぜ」は、2010年度から2015年度にかけて実施された環境省の実証事業において、日本初の浮体式洋上風力発電の実証機として建造され、椛島(かばしま|長崎県五島市)沖で安全性や環境への影響を計る2年間の実証試験を経て実用化され、この春に商業運転を開始した。

「はえんかぜ」の全長は172メートルあり、重さは約3,400トン。3本のチェーンで海底に係留されている。直径80メートルの風車が強風を受けたら倒れてしまわないかと心配になるが、強風時には風車の回転を止めて風を受け流し、起き上がり小法師のように、どんなに傾いても起き上がるよう設計されている。

風車を洋上に浮かべるため、景観や騒音、低周波音等の影響は小さくなる。環境への影響について、五島市再生可能エネルギー推進室の北川和幸さんは「2年間の実証試験では風車の周辺海域と椛島内で、季節ごとに水質や鳥類のバードストライク、生態系調査や漁獲試験など、調査した全ての項目について、環境への影響が小さいことが確認されました」と語る。

「エネルギーのしま」を目指して

「エネルギーのしま」を目指す五島市は、2014年に策定した「再生可能エネルギー基本構想」で、2030年度に100パーセントを超すエネルギー自給率達成を目標に掲げている。再生可能エネルギーを生産する発電設備の最適な運用にはメンテナンスも欠かせないため、市は雇用事業で発電事業やメンテナンス事業の産業育成支援を行っている。

北川さんによると、福江島には風力発電設備のメンテナンスを行う企業が2008年に発足。島内で始まっていた風力発電設備のメンテナンスや設備メーカーが主催する研修等で技術と経験を培い、高い技術力が認められ、今では北海道などの島外企業からも出張メンテナンスの依頼を受けているという。

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風車に登りメンテナンスを行う地元企業の作業員(写真提供:五島市)

「社員3名ではじまった事業でしたが、2016年現在30名を雇用するまでに成長しています。島内に技術者がいることで、発電事業の安定経営にもつながります。今後は洋上風力発電を中心に再生可能エネルギー導入量を増やし、エネルギーの地産地消を進めるとともに、余剰電力を外の地域へ売電していきたい」(北川さん)

五島市における浮体式洋上風力発電の取り組みは、海に囲まれた日本列島の多くの地域で応用が期待できる。平成24年度に始まった実証事業には、マスコミの取材をはじめ、全国の自治体関係者など約400名の視察があった。海外からの視察を含め視察者は年々増加し、平成26年度には1,200名、平成27年度は約1,700名の視察があった。

海風を受けて回り出した「はえんかぜ」に、全国から注目が集まっている。


【関連サイト】
五島市公式サイトまるごとう ごとう地コラム「日本初 海に浮かぶ発電所」

     

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