つくろう、島の未来

2024年11月24日 日曜日

つくろう、島の未来

2015年6月に豪徳寺(東京都世田谷区)にオープンした「浜口水産」は、五島列島の食の魅力を発信する蒲鉾店。近隣住民に愛される同店の担当者に、出店の経緯や展望について聞いた。

豪徳寺外観2

離島地域の食の魅力を広げたい。11月中旬より五島野菜も販売

五島列島の福江島(長崎県五島市)で1939年に創業した蒲鉾店「株式会社浜口水産」が2015年6月に豪徳寺(東京都世田谷区)に出店した。同地を選んだ理由は、駅前に信号がなく、狭い路地があり、ゆっくりとした人や時間の流れを感じられる雰囲気が、故郷の五島と似ていたことが決め手だったと専務取締役の濵口貴幸さんは語る。

浜口水産は五島の法人「農事組合法人ベジテール」と「株式会社鯛福」とともに「五島農水加工有限責任事業組合」を発足。農水産加工の法人同士で連携し、魚や野菜など五島の食材を生かした商品づくりを行っている。

天ぷら揚げ

五島列島の近海はさまざまな海流が交わり、島々の間を流れる潮の流れの速さから、身の締まった味の良い魚が獲れることで知られている。近年、冷凍のすり身を仕入れて蒲鉾づくりをする蒲鉾メーカーが多いなか、浜口水産は五島漁業協同組合や鯛福から地元の新鮮な魚を仕入れ、自社ですり身にし、蒲鉾をつくる。

蒲鉾に使用されるトウモロコシやカボチャ、ニンジン、タマネギなどの野菜は全てベジテールで無農薬栽培されたもの。ベジテールの畑では浜口水産の蒲鉾づくりで出た、魚の内臓や骨などを発酵させた残渣を肥料に使用。土壌づくりにこだわり、味の濃い野菜をつくっている。

店頭に並ぶさまざまな蒲鉾を楽しみに毎日訪れる近所の年配者や、「浜口水産の蒲鉾がおいしいから」と遠くから来店するリピーターも増え、五島の魚や野菜を使用した食の魅力が広がってきている。

天ぷらショーケース

11月からはベジテールでつくられた野菜の販売も開始。週に2回、五島から届く野菜は一袋200円で店頭に並べられ、お客さん自らが料金箱にお金を入れる無人販売のようなスタイルがとられる。野菜の販売は、常温で鮮度を保てる来年4月頃までを予定している。

現在、店頭には蒲鉾の他、海産物や手延べうどん、かんころ餅など五島の食材も並ぶ。また、店の片隅には「五島がごちそう 島の入り口」という展示コーナーも設けられ、今後は五島の景色・人々・言葉・文化・歴史などを紹介し、島の魅力を身近に感じられる場所にしていく予定。小さな空間ではあるが、お客様と島をつなぐ扉の役割として「五島はごちそう。」を表現していく。

今後は五島だけでなく、他の離島地域の食の魅力も少しずつ広める予定。「物産展で知った対馬のシイタケを蒲鉾に使っています。また、壱岐の名産である柚子を使った柚子塩で蒲鉾を食べてもらうなど、五島に限らず、離島地域の食のおいしさを微力ながら提案していきたい」と濵口さんは願う。


【関連サイト】
浜口水産ウェブサイト
浜口水産 Facebook

     

関連する記事

ritokei特集