2025年5月、 心豊かに生きるすべをシマ(人と人が支え合うコミュニティ)に学ぶ 「シマビト大学」(愛称:シマ大)がスタートしました。「大人の修学旅行」として楽しみながら、「次の一歩を考える場」となった、 創立記念講座「基本のシマ思考」(奄美大島)のシマ合宿の様子をレポートします。
取材・リトケイ編集部 撮影・田中良洋
ユニークなメンバーと、いざ島のシマへ!
2025年5月30日、奄美大島に初代となるシマ大受講メンバーが集合しました。参加したのは、奄美大島在住の地元メンバーに、甑島列島(上甑島ほか)・屋久島・種子島・宝島・徳之島からの島在住メンバー、地方や首都圏からの本土メンバー。
事前のオンライン講座(全3回)で合宿時に訪問する実践者の取り組みを学び、LINEオープンチャットでは合宿前から「おすすめのスポットは?」「ここがおすすめですよ!」といった交流がスタート。
当日は「○時に空港に着きます!」という投稿に「乗ってく?」という支え合いまで行われていました(※シマ大は現地集合・現地解散が基本。メンバー同士の支え合いと学び合いを推奨しています)。
「基本のシマ思考」受講生の皆さん
「シマ」という言葉が「アイランド」よりも「集落」の意味で使われる奄美大島は、シマ思考の聖地といえる場所。シマ大メンバーは、島内に150以上あるシマ(集落)の中でも「奥座敷」と呼ばれる宇検村のシマを訪れました。
まずは宇検村役場の前にある 「高倉」 で対話。高倉はかつて奄美エリアで活用されていた高床式の穀物庫です
ここでは、宇検村生まれ育ちの栄雄大さんが営む「ライコン・アシケン」と、おばあたちの生産者グループ「美人草」の加工場へ。オンライン講座で学んだことをリアルに味わいます。
ここがうわさのライコンアシケン。小さな集落の真ん中にあるごく一般的な古民家ですが、中は……
古民家を改装したライコン・アシケンでは、おじいおばあがカラオケを楽しんでいました。一人暮らしで声が出なくなっていた高齢者が 「思い切り歌えるようになった」という民間の居場所は、「ボランティアファーストでボランティアさんが活動できる範囲で行っている」という無理のない運営方式にも共感者が多数。 財源が絞られていく人口減少時代におけるヘルスケアの先端事例にも見えました。
「せっかく来てくれたから」と、十八番の銭形平次を披露するおじいに皆の心もほかほかに。おじいはカラオケのために自転車で3〜4キロの道のりを通っているとのこと
わずらわしさに対峙するシマの「愛」とは
加工場ではよもぎを育て、特産品をつくるおばあたちが迎えてくれました。「前は(よもぎを育てていることを)バカにされていたけど、 今は美人草に入りたいという人もいるのよ」と話すおばあたち。話に区切りがつくと「踊りましょう!」とチヂン(奄美大島の太鼓)を叩きはじめ、トントントンという太鼓の音が響く青空のもと、メンバーも輪になって踊りました。
輪になって踊り、言葉にならない豊かさを感じる時間。五感+第六感で体感する学びはリアルでしか得られません
そして一行は、奄美の奥座敷から奄美のシティに移動。あまみエフエム放送局長の麓憲吾さんが28年前につくったライブハウス「ASIVI」での最終講座に挑みました。『世界がかわるシマ思考 – 離島に学ぶ、生きるすべ』 や 「未来のシマ共創会議」にも登場してきた憲吾さんに、今回語ってもらったのは「シマ (人と人が支え合うコミュニティ)」で心豊かに生きようと思う時にぶつかる「人の感情」との対峙について。
麓憲吾さんを囲んでの最終講座。憲吾さんの「愛」があふれるシマ思考を聞き、感動したメンバーからあふれる想いを存分に共有しました
憲吾さん自身も、それまで島に存在しなかったライブハウスをつくった当初は、「前はバカにされた」という宇検村のおばあたちと同様に、否定的な反応も受けてきました。そんな壁を乗り越えるときの考え方や、「あまみエフエム」の日常にあふれているリスナーやサポーターとの「愛」のある対応、島の文化を尊ぶ価値観について語ってくれる憲吾さんの言葉にメンバーも感動。
「わずらわしさに対峙していくって大事」「ゼロかイチかで折り合いをつけるのではなく、あいまいな部分も残しておく。それは逃げじゃなくて、あえてそうしているんだと気付かされました」という声が共有されました。
宇検村のシマを支える栄雄大さんの実践や言葉にも、たくさんの「シマ思考」が詰まっていました
地元メンバーの発案でオプション体験も
奄美のシマで、リアルに体感する学びと気づきを共有し続けた皆の心は最高潮。講座後の宴でも心ゆくまで語り合いました。シマ大のプログラムはここで終了。しかし、ここで出会ったドゥシ(奄美のシマ言葉で同志)の輪はここから自由に発展していきました。
宴の後にLINEをみると、メンバーのひとりから「明日の午前中、まちあるきをご案内します!」というお誘いが投稿され、翌朝には数人がまちあるきに参加。お昼にはあまみエフエム生放送に出演してしまうなど、特別な時間をたっぷりと楽しんでいました。
「シマってこんなに深いんだ!」「ここが終わりじゃなくて、ここからがはじまりですね」と語り合うメンバーにより、シマ大奄美大島講座から発展する未来に期待が高まりました。メンバーと宇検村の皆さん、ありがっさまりょーた!(※奄美のシマ言葉でありがとう)
合宿参加者の声
宇検村でのフィールドワークでは、現実の厳しさと、人間としての本質が詰まった環境に強く心を動かされました。目の前で起こることすべてが学びであり、そこで出会った人たちから得た気づきは、旅では絶対に得られないものでした(神奈川県より参加)
この講座を通じて、新たな心境が芽生えたり、原点に立ち返る感覚を得たりと、想像以上の学びがありました。事前にオンラインで顔を合わせていたからこそ、現地ではすでに友人のように打ち解けられたのも、大きな魅力のひとつです(鹿児島離島より参加)
シマビト大学は、講師の話を “生”で聞けることに加え、多様な背景を持つ仲間と体験を共有することで、予想を超える収穫があると思います(広島県より参加)
研修・視察に「シマビト大学」セミオーダー講座
心豊かに生きる力を離島地域のシマ(人と人が支え合うコミュニティ)とヒトから学ぶ「シマビト大学」では、企業・学校・地域団体・趣味のグループなどの団体からの研修・視察を承ります。
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