つくろう、島の未来

2024年11月21日 木曜日

つくろう、島の未来

「デアゴスティーニ♪」のCMでおなじみのデアゴスティーニ・ジャパンから、週刊『日本の島』が発売されるビッグニュースを聞きつけたリトケイ編集部。2022年1月11日の発売を記念して、“週刊『日本の島』を読んでみる会”を開催しました。島が大好きなリトケイ読者に、週刊『日本の島』に登場する島に暮らす皆さん、全国の島を歩く島旅のプロ、という三者三様の視点から読む、週刊『日本の島』とは?

《其の一》編集部・松本が島好き読者と読んでみました(2022/1/11公開)
《其の弐》編集部・石原が島の皆さんと読んでみました(2022/1/19公開)
《其の参》リトケイ編集長が島旅のプロと読んでみました(2022/1/26公開)

登場人物

 
青ヶ島(東京都)
荒井智史(あらい・さとし)
青ヶ島還住太鼓代表。青ヶ島出身。整備工場やレンタカーなどを営む傍ら、青ヶ島還住太鼓として島の伝統芸能を軸に、伝統文化を発信する。2019年にNPO法人還住舎を立ち上げ、島外の専門家らと郷土研究や島づくりに取り組む。

 
隠岐諸島(島根県)
石原さわこ(いしはら・さわこ)
神奈川県出身、隠岐ユネスコ世界ジオパーク推進協議会でマーケティングを担当。隠岐の魅力を世界中の人に届けること、島が続いていくように自然や文化を守り繋ぐこと、観光を通して島民や来島者が交流し、新しい学びが生まれる場を作りたいと思っている。

 
屋久島(鹿児島県)
菊池淑廣(きくち・よしひろ)
東京都出身。2005年より屋久島に移住。カメラマン・ライターとして雑誌等で執筆する傍ら、登山や自然ガイドとしてエコツーリズムを受け入れている。
 

 
石原みどり(いしはら・みどり)(ritokei) 
2008年春から2014年春まで奄美大島で暮らす。著書に鯨本あつことの共著『くじらとくっかるの島めぐりあまみの甘み あまみの香り 奄美大島・喜界島・徳之島・沖永良部島・与論島と黒糖焼酎をつくる全25蔵の話』(2016年 西日本出版社)。
 

週刊『日本の島』で読む、我が島は?

皆さんこんにちは。今日は屋久島(やくしま|鹿児島県)、青ヶ島(あおがしま|東京都)、隠岐諸島(おきしょとう|島根県)は海士町(あまちょう)の皆さんと週刊『日本の島』の1号から5号までを試し読みしたいと思います。まずは、ご自身やお互いの島の記事を読まれていかがでしたか?

太平洋に浮かぶ青ヶ島に日本海に浮かぶ隠岐諸島、東シナ海に浮かぶ屋久島のそれぞれに暮らす皆さんに、オンラインで週刊『日本の島』を読んだ感想をいただきました

屋久島(同誌2号に掲載)の場合、一般的なガイドブックでは縄文杉などの自然だけが紹介されることが多いんです。週刊『日本の島』には僕が登山ガイドをする時に案内するような自然環境の成り立ちの背景にまで触れられていて感心しました。

確かに。屋久島は自然環境にクローズアップされがちですが、自然の成り立ちのほかにも、屋久島の里や海のことにも触れられていますね。

第2号に掲載される屋久島の縄文杉。世界自然遺産に登録される自然の成り立ちはもちろん、人々の文化や産業についても紹介される(写真提供・公益社団法人 鹿児島県観光連盟)

縄文杉って行くのに10時間もかかるんですね! 青ヶ島は15分ほどで最高地点に登れてしまうので、私がガイドする時はいかに体験を膨らませるかが勝負のしどころなのに(笑)

僕らは、いかに暗くなる前に帰って来れるかが勝負です(笑)

ところ変われば自然ガイドの力点も変わるんですね。青ヶ島はどうでしたか?

島の暮らしを支える港のことをしっかりと紹介しているあたり、気合いが入っていますよね。ガイドブックだと、こんな離れ島に人が居着いて、重ねてきた歴史や文化までは触れないこともありますが、「還住」について触れられているのも嬉しかったです。

島に暮らす人もおどろく青ヶ島の暮らし

週刊『日本の島』第1号の表紙を飾る青ヶ島の空撮写真は、迫力のある大パノラマ写真で見応え十分。二重式カルデラ火山や、集落の様子、断崖絶壁の地形や港など、唯一無二の存在であることがこの一枚で分かる(写真提供・海上保安庁)

青ヶ島の記事で、隠岐諸島と同じカルデラ仲間だと知って親近感がわきました。うちは(火山のカルデラが)海に沈んでいる状態で、青ヶ島は外輪山の部分が水面から突き出している状態なんですね。

すごくめずらしい親近感ですね!

青ヶ島は地形がおもしろいですよね。海岸線は断崖絶壁で、どうやって上陸するのかなと思いながらページをめくっていったら、漁船を海から上げて吊るしている写真があったり、古い写真では牛が斜面を登って荷を運んでいたり。すごいところだな…….と。

週刊『日本の島』には豊富な写真とともに、島の位置や地形を示す広域地図や立体地図も掲載され、島々の成り立ちを自然科学の観点から知ることができる

私は海士町に移住して3年目で、他の島のことはあまり知らないんです。自分の島でも時々、船が欠航することがありますが、(青ヶ島の記事を見て)まだまだすごい島があるんですね……。

(青ヶ島の記事に)「就航率は6割弱」とありましたね。屋久島も台風などで2〜3日物流が止まることはありますが、それが日常的にある島なんですね……。

1月だと就航が月2回という時もあります。

知る人ぞ知る絶海の孤島・青ヶ島に暮らす荒井さん。そんな青ヶ島に訪れるなら週刊『日本の島』でも紹介されている人々の歴史や文化にも目を向けてほしいと語ってくれました

比べるとなお面白い、日本の島々

私も数年前まで奄美大島(あまみおおしま|鹿児島県)に7年間住んでいましたが、自分が住んでいる島との違いを知ると本当におどろきますよね。では、隠岐諸島・島前(どうぜん)の記事はいかがでしたか?

図鑑みたいでおもしろかったです。隠岐諸島について初めて知る人にも分かりやすく書かれているので、私自身、移住前に読んでおきたかったと感じました。

1号に掲載されている「島前」は、「島後(どうご)」と呼ばれる隠岐の島を含む隠岐諸島4島のうち西ノ島(にしのしま)、中ノ島(なかのしま)、知夫里島(ちぶりしま)の3島の通称ですよね。

そうです。(同誌1号で)島前3島を一つの記事にまとめるのは大変だったと思いますが、地形的な背景と自然や歴史的な背景を組み合わせながら、それぞれの島の特徴がうまく表現されているなと感じました。

隠岐諸島の記事で、式内社(しきないしゃ)(※)が8社もあることに驚きました。おそらく、屋久島も琉球王国との交流の拠点として式内社が1つ置かれてますが、島の立ち位置として、(隠岐諸島と屋久島には)外国との交易の拠点だったという共通点があるのでしょうね。

※平安時代の「律・令・格」の施行細則を集成した法典である『延喜式神名帳(えんぎしきじんみょうちょう)』に朝廷が認めた神社として記された神社
 

そういう共通点を読むのもおもしろいですよね。

週刊『日本の島』でいろんな島を見比べていくと、屋久島は大きくて人もたくさん住んでいるんだなとか、青ヶ島の人口が200人いなくてヘリコプターが島人の足として日常使いされているんだなとか分かって、「島」とひと口に言っても全然違うのだなぁと実感しました。

(うなずく)

「他の島のことはほとんど知らない」という隠岐諸島・島前の石原さん。他の島を知り、比べながら違いを知ることの楽しさを語ります

見比べると本当におもしろいですよね。週刊『日本の島』には有人離島を解説した「島ファイル/有人島」の主力コンテンツ以外にも、「しま山100選」や「日本列島の成り立ち」など、さまざまな視点で島を解析したコンテンツから島の個性を知ることができますね。

「日本列島の成り立ち」の地理編では、そもそも島がどうやって誕生するのかを解説していたり、それぞれの島の記事も含めて、冊子を集めていくほど日本列島を全体として見る目が育ってくるというのがおもしろいですね。

週刊『日本の島』に構成される5つの章のひとつ「日本列島の成り立ち」では、《神話編》《地理編》という2つの視点から島々の成り立ちが紹介される

(「日本列島の成り立ち」には)神話編もあって、どちらも続きが楽しみですね。島の成り立ちから日本列島を紐解いていく発想がおもしろいし、それぞれ専門家の方が書かれていて深みがあります。屋久島にも島の最高峰・宮之浦岳に浦島太郎のもとになった、山幸彦(やまさちひこ)が祀られているので、興味深く読みました。

「しま山100選」のページをみて、島にこれだけたくさんの山があることにおどろきました。島といえば海というイメージもありそうなところ、島についてよく知らない人にとっては新鮮ですよね。

週刊『日本の島』に構成される5つの章のひとつ「しま山100選」に掲載されるのは、日本離島センターが選定する全国の島にある山々。実際にしま山を歩いた島旅のプロの視点で、島と島の魅力が紹介される

住民目線で週刊『日本の島』にリクエストするなら……

ちなみに週刊『日本の島』は、これから2年ほどかけて発行されていくとのこと。島にお住まいの皆さんの視点で、こんな情報もあったらな〜とリクエストしたいものはありますか?

屋久島だと…….世界自然遺産に登録された根拠や、島全体が世界遺産というわけではないこと、屋久杉の伐採が江戸時代に始まっていて、人の手が入ってきたからこそ今の自然があるということなどの背景にも触れていただけると、さらに深みのある情報になるなと思いました。

屋久島の菊池さんは、島の自然に手を入れ守ってきた「人」の重要さを説明。その言葉に皆が頷きます

確かに。2021年には奄美大島・徳之島(とくのしま|鹿児島県)・西表島(いりおもてじま|沖縄県)が世界自然遺産に登録されましたが、世界自然遺産の保全対象だけでなく、人々が持続的に利用してきた経緯も分かると、より理解が深まりそうですね。

そういう意味では、環境保全に関する企画も読んでみたいです。漂着ごみや最近の軽石の話など、遠いどこかで起こっていることではなく、周りの島から影響を受け、それが本土にも影響していくことが分かってもらえたら。

気象はどうでしょう? 実は青ヶ島って、年間通じてめちゃくちゃ湿度が高い島なので、島特有の気候とか気象の条件が、その島の暮らしや人の気質を左右しているんじゃないかと個人的に考えているんです。気象を深掘りすると島独自の暮らしや自然環境への理解が深まるような気がします。

おもしろそうですね!気象は船や飛行機の就航に直結しますし、屋久島のように雨が多くて水が豊かな島と雨が少なくて水が貴重な島でも、暮らしや文化の形は異なりますよね。

島の内側からその深い魅力を知る立場だからこそ、知ってほしい島のことがたくさんある!その話題に話が尽きません

あと、隠岐は現代史もおもしろいので今後どこかで取り入れてもらえたら嬉しいですね。私も含め移住者が自分たちを表現するときには「Iターンの先輩は後鳥羽上皇です」と言っていますし(笑)

いいですねー(笑)

《其の参》編集長 鯨本が島旅のプロと読んでみました(2022/1/28公開)に続く

ビジュアルマガジン 週刊『日本の島』

週刊『日本の島』は、自然・歴史・文化・暮らしなど島に関するあらゆる情報を網羅するビジュアルマガジンシリーズ。日本列島を8つのエリアに分け、400島余りの全有人島および周辺無人島を解説。創刊号に付属する専用特製リングバインダーにエリアごとにファイリングしていくことで 、日本の島の一大図鑑が完成!定期購読者にはリトケイオリジナルデザインのTシャツなど豪華プレゼントが付いてきます。

>>週刊『日本の島』公式サイト
https://deagostini.jp/nsm/ritokei_2/

     

離島経済新聞 目次

リトケイ編集部員が読む週刊『日本の島』

週刊『日本の島』(デアゴスティーニ・ジャパン)発売のビッグニュースを聞きつけたリトケイ編集部が、2022年1月11日の発売を記念して、"週刊『日本の島』を読んでみる会"を開催。島が大好きなリトケイ読者に、週刊『日本の島』に登場する島に暮らす皆さん、全国の島を歩く島旅のプロ、という三者三様の視点から読む、週刊『日本の島』とは?

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