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【特集 | 島づくり】先人から受け継ぐ「たます」スピリット。奄美大島・国直集落の島づくり(後編)

奄美大島(あまみおおしま|鹿児島県)・大和村(やまとそん)の国直(くになお)集落で、若手住民が中心となりNPO法人を組織。集落住民それぞれの得意分野を生かした体験交流事業や、集落の写真コンテストを開催するなど、地域の魅力を発信している。先人から受け継いだ精神を大切に、地域住民の幸せやコミュニティを守りながら事業を運営する「NPO法人TAMASU(たます)」が目指すものは。代表の中村修さんに話を聞いた。(写真提供:NPO法人TAMASU)

(記事前編はこちら)

※この記事は、『季刊ritokei』23号(2018年2月下旬発行)「注目の島づくり特集」連動記事です。

集落のフクギ並木をイルミネーションで飾る「ふくぎナイト」

SNSを活用、写真コンテストで集落をPR

平均年齢が48歳(※)と若く、奄美大島島内でも青壮年団の活動が活発な地域として知られる国直集落で、集落の若手住民らが中心となり「NPO法人TAMASU(たます)」を結成。地域の資源を活かした体験交流事業などの島づくりに取り組んでいる。

※3……平成27年国勢調査 小地域集計(総務省統計局)

また、2016年より、国直集落の美しい自然景観を活かした写真コンテストを開催。集落に人を呼び込むきっかけとし、作品募集にSNSを活用することで費用をかけずPRにつなげている。

2016年、TAMASUでは観光客の増える夏に向けて、公衆無線LANが利用できるWi-Fiスポットを開設。現在、集落内の3軒の民宿を拠点とした3カ所に設置されている。

写真コンテストは、国直で撮影した写真をInstagram、Facebook、TwitterなどのSNS(※)上で、指定のハッシュタグをつけて投稿するだけで簡単に応募できるようにした。初年度は250点の応募があり、審査を経て選ばれた157点の作品でフォトブックを作成。応募者へ送付した。

※SNS……Social Networking Serviceの略称。登録された利用者同士が交流できるWebサイトの会員制サービス

2年目となった2017年は島内外から400点を超える応募があり、14点が優秀賞に選ばれた。受賞作品でカレンダーを制作し、コンテスト応募者へ無料送付したほか、1冊800円で販売した。コンテストは2018年も予定しているという。

伝統的景観を活かし、冬を楽しむイベントに

国直集落を彩る青々としたフクギ並木は、住民にとって原風景とも言える景観だ。フクギは屋敷林として植えられ、集落を火事や台風から守ってきた。現在のフクギ並木は樹齢300年ほどとみられ、かつて国直で大火があった際にフクギが延焼を防いだことから防火・防風林として植えられたものと言われている。

フクギは成長が遅く、一度伐採されると再生に時間がかかるため、TAMASUではフクギの保存再生活動にも取り組む。2015年12月、国直青壮年団によりフクギ苗300本の植樹が行われた。

フクギ苗300本の植樹の様子。集落の各地にフクギが植えられた

TAMASU代表の中村修さんは『フクギが100年後の集落を彩る姿を想像し、みんなで「ウンキヌ ダイバンナル コロヤ ワキャヤ イキジュランド(この木が大きくなるころには俺たちはこの世にいないね)」と笑って木を植えました』と振り返る。

また、2016年より観光客の少なくなる冬場に人を呼び込むイベントとして、一定期間フクギ並木をイルミネーションで飾る「ふくぎナイト」も開催している。飲食の屋台が出店するほか、地域住民による温かな飲み物の接待やライブ演奏なども実施。島内でも人気の恒例イベントとなり、集落を訪れる人が増えている。

持続可能な観光づくりへ向けて

2017年3月、奄美群島の島々の豊かで多様な自然環境と固有で希少な動植物からなる生態系、人と自然のかかわりから生まれた集落景観や地域行事などの文化が評価され、国内34カ所目となる「奄美群島国立公園」の指定を受けた。国立公園指定を経て、奄美群島では2018年夏の世界自然遺産登録を目指している。

奄美大島に関東・関西からのLCC(※)が就航し、2018年7月より沖縄と徳之島(とくのしま)・沖永良部島(おきのえらぶじま)を結ぶ航空路線が開設を予定するなど、奄美群島で今後ますますの観光客増加が見込まれる一方、過度な観光化が進むことによる環境やコミュニティへの影響も危惧されている。

※LCC……Low Cost Carrierの略称。効率的な運営により低価格の運賃で運航サービスを提供する格安航空会社

中村さんは「観光で多くの人が訪れたとしても、そこに住む人々や先人への畏敬なくしては、本当の意味でその土地の価値を知ることはできないと思います」と語る。

「用意された観光地ではなく、その土地にあるものを自然体で体験したいというお客様が増えていると感じます」。国直の観光では、経済的指標のみで判断せず、地域の本当の魅力を観光客に伝えていきたいと考えている。

TAMASUの事業も、集落のコミュニティが健やかであることに重きを置いて慎重に計画・運営していくつもりだという。「そのためには、酒を飲みながらでも、事あるごとにみんなで話し合っていきたいです」(中村さん)。地域の将来像について常に意見を出し合い、共有しながら行動していくことが大切だと考えている。


【関連サイト】

NPO法人TAMASU


国直集落丸ごと体験交流

離島経済新聞 目次

『季刊ritokei(リトケイ)』23号 「島づくり」特集連動記事

現在、日本では「東京一極集中」「消滅可能性地域」「地方創生」といった言葉が踊り、離島地域に限らずさまざまな地域で振興策が促されている。そこで『季刊リトケイ』23号では島々の地域振興事情を特集。それぞれの島で人々が健やかに暮らしていくためには、どんな考えを持ち、何を実行すべきか。読者・有識者・島づくりの実践者の声をもとに、愛する島の未来を築く島づくりのヒントを集めました。特集記事はじめ紙面にて紹介した記事のノーカット版等を、有人離島専門ウェブメディア『離島経済新聞』にて公開しています。

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