つくろう、島の未来

2024年10月03日 木曜日

つくろう、島の未来

島の未来をどうつくろう? 日本や世界の潮流を読みながら、近い未来に島でも見聞きすることが増えるかもしれない話題を、離島経済新聞社理事の勝眞一郎が解説します。(文・勝眞一郎)

※この記事は『ritokei』29号(2019年8月発行号)掲載記事です。

ワーケーション先として離島が注目されている?

デジタルが社会の有り様をガラッと変えてしまう。このような状態はデジタル・トランスフォーメーションと呼ばれています。

例えば働く場所。以前は、仕事で使用する書類や、外部とコミュニケーションをとるための電話機、打ち合わせをするための会議室などは「会社」という場所にありました。そのため、みんなで朝9時に会社に集まり、夕方5時になると帰るのが当たり前でした。

ところが、最近では書類はインターネット上に保管でき、コミュニケーションもメールやメッセージング・サービス、打ち合わせはビデオ会議で行えるように。

いわゆる「パソコンとインターネットがあれば仕事ができる」業種では、わざわざ時間とコストと労力をかけて会社に集合する必要がなくなってきているのです。

そこで、考え出されたのがテレワークです。テレは「遠くの」を意味する接頭語ですので、「遠くで働く」ことがテレワークです。

かく言う私もパソコンがあればどこでも仕事ができるため各地 でワーケーションを行なっています

会社に集合しなくてよくなると、それまで通勤に使っていた時間を別のことに使えるようになり、会社の近くに住む必要もなくなります。

では、その空いた時間を何に使おうかと考えたときに、バケーション(休暇)とくっつけようというのがワーケーションです。

ただよその土地に行って仕事をするだけでなく、休日や空き時間に現地の人々と交流し、自然や文化を体験しながら、発想や人生を豊かにしようという考え方です。都市から離れた離島地域は、ワーケーション先としても注目され始めています。

長崎県五島市では今年5月、都市部で働く人々が4週間に渡ってワーケーションを体験する実証実験が行われました。

この実験では、仕事環境を確保できる職住一体型の施設や、現地の学校での子どもの短期受入れ、地元の方々とのポットラック・パーティー(持ち寄り)、参加者同士の交流企画など、ワーケーションを受け入れ側が準備すべき項目も見えてきました。

五島市の実証実験で参加者を受け入れたセレンディップホテルには広いコワーキングスペースがある

都会に暮らす人々にとって島の暮らしは非日常。都会とは異なる環境を求めるビジネスマンにとって、島は魅力的な場所です。

長期滞在者やリピーターを増やしたい島にとっても注目すべき社会変化といえるでしょう。

勝眞一郎(かつ・しんいちろう)
奄美大島出身。経済学修士。業務コンサルタント。NPO法人離島経済新聞社理事、サイバー大学IT総合学部教授、奄美市産業創出プロデューサー、総務省地域情報化アドバイザー等として活動。情報システム部門のトップを務めてきた経験から、実践的なプロジェクトマネジメント論を次世代に向け伝授している。

     

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