つくろう、島の未来

2024年12月22日 日曜日

つくろう、島の未来

2015年5月、長崎県対馬市とオランダのNPO団体「The Ocean Cleanup」が海洋ゴミを協力して回収する協定を結んだ。海洋調査を実施後、2016年夏以降にゴミの回収を実施する計画だ。

■提携につながったきっかけは対馬市長によるオランダ訪問

2015年5月25日、オランダ大使館にて長崎県対馬市と、オランダのNPO団体「The Ocean Cleanup」(以下、TOC)が対馬の海域に漂流する海洋ゴミを協力して回収する協定書を結んだ。7月頃より、TOCが海洋調査を行い、2016年夏以降に海洋ゴミの回収を実施する計画だ。

TOCとは、オランダ人のボイヤン・スラット(Boyan Slat)さんが設立した団体。2012年、ボイヤンさんは自身が考案した海洋ゴミの回収システム「The Ocean Cleanup Array」を使って、海流や潮の満ち引きを利用して漂流するゴミを集める活動を開始した。回収した海洋ゴミに含まれるプラスチックは、エネルギー資源として再利用を検討している。

このシステムについて、スラットさんは、世界的な講演会「TED Conference」でプレゼン。世界からの注目を集めながら、プロジェクトを本格化するにあたりNPO団体を設立し、最初のモデル実施地域を探していた。

TOCと対馬の出会いは2015年1月。対馬市が掲げている「エネルギーマスタープラン」の視察で、財部能成(たからべ・やすなり)市長がオランダを訪問したことにはじまる。

同プランでは、バイオマスボイラーの燃料として、海洋ゴミに含まれる流木の利活用が計画されている。プラスチックゴミをエネルギー資源として再利用するTOCのシステムと合致するため、海洋ゴミの回収地を探していたTOCに、対馬を候補地の一つに加えてもらえるよう市長が提案した。今年2月、対馬を訪れたTOCのメンバーが、対馬の海域に漂流するゴミを調べ、最適地と判断。対馬がTOCとして海洋ゴミの回収を行う最初の実施地に決まった。

南北に長い地形の対馬には、毎年、島の西側沿岸に海洋ゴミが多く流れ着く。回収・運搬・処分に計数億円が掛かるほか、自動車を利用できない海岸にゴミの漂着が多いため回収エリアへの移動にも苦労があった。

対馬市役所市民生活部環境政策課の副参事兼係長・阿比留孝仁さんは「漁業関係者は減り、地域住民が高齢化する中、ゴミの回収手段の効率化は将来に向けた課題でもあった」と話す。漂着ゴミは漁業に悪影響を及ぼすほか、海岸に流れ着くガラスの破片が海水浴に訪れた住民及び観光客の怪我にもつながる。TOCの活動により、高齢化が進む島において、漂着ゴミの減少につながる事が期待されている。

     

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