つくろう、島の未来

2022年07月06日 水曜日

つくろう、島の未来

新島に伝わる伝統芸能・大踊。室町時代にこの島に伝わったといわれ、お囃子などの伴奏は一切なく、肉声による唄のみで、その声の調子に合わせて踊る踊りです。

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新島に伝わる伝統芸能・大踊。
室町時代にこの島に伝わったといわれ、お囃子などの伴奏は一切なく、肉声による唄のみで、その声の調子に合わせて踊る踊りです。
新島では江戸・寛政12年頃から、先祖を供養するための供養踊(クヨウオドリ)として踊られるようになったため、失われることなく、現在も国の重要無形民俗文化財として、伝承されています。
しかし、その担い手も年々減少。今では島内に数えるほどしかいません。そんななか、この伝統芸能に魅せられ、大踊を受け継ごうとしている女性がいます。

■Page.1 「自分も踊ってみたい」

  • 「一番初めに大踊を見たのは、8月に開催される盆祭のときでした。本村の大踊だったのですが、そのときはテープに吹き込まれた唄に合わせて踊っているのを見たんです。もちろんそのときも感動したのですが、そのあと、何年かして若郷の大踊を見て、びっくりしました」 そう話すのは小川淳子さん。
    新島の伝統芸能・大踊に魅せられ、自分も踊ってみたいと毎月1回、新島村博物館の前にある古民家にて、大踊の会を開催しています。
    「新島の大踊は、同じ新島村のなかでも本村と若郷という地区によって、踊りの演目や踊り方など、それぞれ微妙に違うものなんです。大踊https://ritokei.com/wp-admin/post.php?post=1432&action=edit#category-popには唄い手と踊り手がいて、本村では全部の演目の唄い手をできる人がいないんですよ。

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    大踊に魅せられた小川淳子さんはIターンで島に来た移住者

  • それで、初めて私が見たときは、テープに吹き込まれた唄だったんですね。若郷で見た踊りは、唄い手がいて、肉声の唄に合わせて踊っていたんですけど、やっぱりテープの唄とは全然違って、すごいいいなぁ~、自分も踊ってみたいって。
    でも大踊は、もともと男踊りと言って、男性しか踊ってはいけないものだったんです。それでも何とか関われないかと模索していたら、新島村博物館の北村さんから、若郷の大踊保存会で唄い手をやっている前田栄次郎さんを紹介していただいて」

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    踊りの師匠・宮川一郎さんのお父さん直筆の歌詞

  • 早速会いに行った小川さんの、大踊を教えてもらいたいという思いに、前田栄次郎さんは快く応じます。
    「最初、男踊りだからと断られるかと思ったんですが、意外にも栄次郎さんは、大踊を受け継ぐ人が減ってきている今だから、女の人にも踊ってもらいたいと言ってくれて。
    大踊の会自体は7回目なんですけど、月に一度、こんな風に古民家に集まって、話をしながら、ゆっくりやっています。たまに、集まっても踊らず、古民家の囲炉裏を囲んで話をするだけで終わることもあるんですよ(笑)」

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    若郷大踊保存会の前田栄次郎さん

■Page.2「まず自分が楽しんでやっていきたい」

  • ときには、踊らずに解散ということもあるという大踊の会。取材に訪れたこの日も、まずは囲炉裏に火を起こして、お茶や炭火焙煎のコーヒーを飲んで、炭火で焼いたアメリカ芋を食べて、会話をして…。
    パチパチッと、炭から出た火の粉のはぜる音が心地よく響く古民家の囲炉裏を囲んで、穏やかな雰囲気のなか、会が開催されていました。もともとは高校の同級生が新島の出身で、それが縁となり、20代の頃から頻繁に新島を訪れるようになり、その後新島に嫁いできたという小川さん。大踊の魅力について、こう話します。
    「大踊は、唄い手の調子に合わせて踊るので、その唄の意味とかを踊り手も理解していないと踊れないんです。でも新島の大踊の唄は、文献みたいな形で残っているものはないんです。
    唯一しっかりとした形で残っているのが、栄次郎さんと同じく、私たちに踊りを教えてくれている若郷大踊保存会の宮川一郎さんのお父さんが書き残したものだけ。それで、その歌詞をコピーしてもらって、じっくりと読んだんですけど、唄の歌詞がすごい共感できるものばかりなんですよね。
    それと栄次郎さんの歌声もとてもかっこいいんですよ~(笑)確かに大踊は今、受け継いでいく人がいなくなってしまっているんですけど、だから残すんだと気を張ってやるのではなく、まず自分が楽しんでやっていきたいと思うんです。

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    炭火焙煎のコーヒーの良い香りがただよいます

  • 月1回という頻度も、少ないかなと思ったりもするんですけど、無理のない範囲でゆっくり続けていければ。その結果、大踊を残していければなって思うんですよ」
    好きなことだから、頑張りすぎず、楽しみながら続けていきたい。その結果として次代につないでいければいい――。
    小川さんはじめ、大踊の会のみなさんのそんなスタンスに、どこか居心地のいい、ゆっくりとした時間が流れます。
    (Text : Okubo)

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    古民家にはゆっくりとした時間が流れます

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