奄美群島本土復帰60周年関連イベントレポート第2弾。10月19・20日の2日間、奄美市笠利町にある奄美パークで島内外のアーティストらが出演する大規模な音楽イベントが開催されました。奄美群島(あまみぐんとう|鹿児島県)が日本に復帰して60周年を数える今年。“音楽を通じて奄美を盛り上げよう”という想いが溢れた2日間を麓がレポートします。
19日:「Setting Sun Festival vol.4」
「その年の最後の夏を飾る夏フェス」として2010年にスタートし、今年で4回目となった「Setting Sun Festival vol.4」。地元奄美大島出身アーティストである、元ちとせさん、中孝介さん、カサリンチュらを中心に、繋がりのあるアーティストを招き、毎年開催しています。今年の目玉となったゲストは、出演4回目のキマグレンと、奄美初上陸のDEENの2組。
天候にも恵まれ、広がる青空と海を臨む会場に吹き抜けるやや冷たい風は心地よく、まさに「最後の夏フェス」にふさわしい幕開けとなりました。
トップバッターは全国ツアーも開催中の中孝介さん。しっとりとした旋律にのせ、優しい歌声が奄美の空に広がります。代表曲である「花」では、圧巻のアカペラに始まり、声、歌詞、メロディどれもが叙情感にあふれ、観客を魅了しました。
奄美を代表する歌姫であり、地元アーティストの姉的存在でもある元ちとせさんは真っ赤な衣装で登場。陽が沈み、薄闇が会場を包み込む幻想的な空間に響くのは、海を思わせる独特の抑揚と島唄に由来する裏声。バラード、アップテンポ、洋楽メドレーを交えた全6曲は、誰も追随できない独特の「ちとせワールド」。満月が煌々と照らすなか、会場は歌姫の世界観に染まりました。
ゲスト陣もパワフルなパフォーマンスで会場を盛り上げます。キマグレンの登場に、会場は手拍子で歓迎。吉川友さんを交えた「きっかレン」としても2曲を披露しました。
DEENは、90年代の大ヒット曲「このまま君だけを奪い去りたい」や新曲を披露。誰もが知るヒット曲と、軽妙な笑いを交えたMCで観客を楽しませました。
トリを務めたのは会場のある笠利町出身アーティスト「カサリンチュ」。QUEEN「We Will Rock You」の替え歌「We will 60」で会場の心をつかむと、アニメ主題歌となる新曲「New world」なども披露し、会場のボルテージは最高潮。アンコールには出演者全5組が登場し、奄美の祭りに欠かせない「六調」で熱い夜を締めくくりました。
20日:「夜ネヤ、島ンチュ、リスペクチュッ!!」
「夜ネヤ、島ンチュ、リスペクチュッ!!」とは「今宵は島人に敬意を!!」という意味で、2002年に地元ラジオ局とアーティストが立ち上げたイベント。島内外で開催され、19回目を数えます。
奄美パーク内の会場には2つのステージが用意され、奄美群島12市町村の青年団と各市町村出身のアーティストとがリレー形式でそれぞれの舞台に立ちました。
オープニングは奄美を代表する若手唄者らが並び、島唄にのせて「♪みんなでつなぐ復帰の思い」「♪しまっちゅ魂忘れるな」などを熱唱。奄美群島復帰60周年の節目の年として島への想いを歌い上げました。続いて群島内から集まった出演者が次々に登場。ときに笑いがわき起る楽しい舞台に、拍手をおくり歓声をあげながら楽しむ観客の姿が目立ちました。
奄美群島は終戦後、約8年間に及ぶ米軍政府統治下を経て、1953年に日本復帰を果たしました。日本復帰は、島人たちが熱い思いを抱いて一致団結し、勝ち取った島人の誇り。「がんばってきた人たちのつながりがあるから、今、私たちはここにいる」という元ちとせさんの言葉通り、60年前から続く島人の熱いエネルギーは、消えることなく脈々と今につながっている。そう改めて感じる2日間でした。