つくろう、島の未来

2019年11月20日 水曜日

2015年に母となったリトケイ編集長は島旅(=出張)に子どもを連れて行く機会がとにかく多い。1月は五島列島の新上五島町で行われたスタディツアーに家族で参加。最近では「島旅こそ子連れで」と感じている編集長による子連れ島旅のレポート。(文・鯨本あつこ)

真夜中の船で五島列島・新上五島町へ

福岡の街にネオンが灯りはじめる夕刻18時。博多港に到着した私たちは、まずお風呂に向かった。港の向かいにあるスーパー銭湯で汗を流して島に渡るのだ。

博多港。壱岐、対馬、五島列島、福岡の離島、韓国・釜山などをつなぐ玄関口

旅のお伴は夫と0歳、3歳の子どもたち。生後3カ月から親の仕事に付き合い始めた3歳の娘は、かれこれ40島超の島を旅した強者であり「きょうはどんなおふね?」と楽しそうだ。

行き先は五島列島の新上五島町で、出航時間は23時45分で到着は5時40分。子連れには少々ハードだが、私たちは一様にうきうきしていた。

博多〜五島列島間を結ぶ野母商船のフェリー太古

博多港と宇久島〜小値賀島〜青方港(中通島)〜奈留島〜福江島をつなぐフェリー太古は、「太古丸(たいこまる)」の愛称で親しまれ、その快適性で知られている。

スーパー銭湯でお風呂と食事をすませた私たちは、21時過ぎに太古丸へ乗り込んだ。

シップ・オブ・ザ・イヤー小型客船部門賞も受賞している太古丸の内観はもはやホテル

余談だが、乳幼児連れの旅はとにかく荷物が多い。大人の衣類は宿泊日数分で十分だが、食べては汚し、お漏らし上等のチビたちは余分が必須。

オムツ、ミルク、水筒、緊急お着替えなど含めると、2泊3日でも大きめのスーツケースに、リュックが2つ、手提げにベビーカーとなり、0歳児を抱っこし、3歳の手を引きながら移動することになる。

決して身軽ではない我が家だが、この日ばかりは足取り軽く、定員4人の個室にチェックイン。指定個室のマットレスはなんとテレビ通販でもおなじみの高機能マットレスらしい。

転がり放題の個室は子連れにうれしい防音仕様

「おっきいおふねー!」と喜ぶ娘と船内を巡り、ラウンジスペースでミルク用のお湯を手に入れ、ゆったり過ごせる展望ラウンジを経由して、キッズルームへ。

ラウンジスペースには『季刊リトケイ』も設置いただいております

ふわふわしたマットの床に小さなテーブルと絵本があるキッズルームに娘のテンションは上がり、いつまでも遊んでいたい様子。

この日は貸切状態でキッズルームを堪能

ただでさえ就寝時刻は押しているが、島旅なので大目に見ようと絵本を3冊読んで部屋に戻り、心地よい寝具と船の揺れにやさしく包まれ、夢のなかへといざなわれた。

そして4時50分に起床。下船まで50分もあると思っていたが、チビの準備に一苦労し、下船時刻ぎりぎりにドタバタと下船。新上五島の島旅が幕を開けた。

スタディツアー御一行を出迎えてくれた島のみなさん

今回の目的は「0540 青方港を解決せよ!」というスタディツアーに講師役として参加すること。船にはスタディツアーの参加者も乗船していた。

太古丸は終点の福江島には8時台に到着するが、宇久島、小値賀島、上五島(青方港)には3〜5時台に到着するため、暇を持て余してしまう旅人もいるという。

そこで新上五島町では、早朝でも島を楽しんでもらえるアイデアを練るべく、スタディツアーを開いたのだ。

「0540 青方港を解決せよ!」御一行が乗車するバス

そんなツアーに参加する私たちは早朝の青方港を見学したのち、バスに乗り込み出発。薄暗いどころか完璧に寝静まった島を移動し、蛤浜にある「はまぐりデッキ」というお店でモーニングコーヒーをいただき、魚市場で競りを見学。

真っ暗な島に灯る「はまぐりデッキ」の明かり

お魚大好きな3歳児はピチピチの鮮魚に興味深々

島のおばちゃんが腕によりをかけた魚づくしの朝ごはんを堪能し、世界文化遺産に登録される頭ケ島天主堂も見学した。

朝ごはんには島のおばちゃんお手製の舟盛りも登場

新上五島町の北東部に浮かぶ頭ケ島

青空に映える頭ケ島天主堂の鐘

スタディツアーの参加者には東京から来た「大の島旅好き!」という夫婦や、九州県内で地域づくりに携わる人が多数いて、皆が初めまして。

でも、同じ船に揺られてきたせいか、出会ったばかりとは思えない熱量で、0540の解決アイデアを議論していた。

この島に限らず、深夜発早朝着のフェリーが航行する島はいくつかある。島旅慣れした人なら、アーリーチェックインができる宿を予約しつつ、船の到着時刻に送迎をお願いするなどしているが、知らないまま島に来れば途方にくれてしまう。

スタディツアーの終盤には、新上五島町の職員や太古丸の担当者も参加するなか、0540の解決アイデアが発表され「そんな手があったか!」と膝を打つ人の姿も見られた。

スタディツアーの参加者がそれぞれ「0540」の解決アイデアについて発表

ところで、そんな旅の最中でもチビはそれぞれ島を楽しんでいた。

近くのビーチに出かけては貝殻を拾い集め、やさしい島の大人たちに遊んでもらいながら、ご機嫌に過ごしていたのだ。

貝殻が拾え、お絵描きも好きなだけ楽しめる砂浜

畳の部屋に布団を敷いて快適に眠れた民宿では、女将さんが子どもたちに「夏は海で遊べるからまた帰っておいでねー」とにこにこ。貝殻を入れた紙コップを握りしめた娘は、帰り際に「しんかみごとーがいいのにー」と叫んでいた。

乳幼児連れの旅は荷物も多く気軽とは言えないが、島の大人はとにかく子どもに優しく、声を掛けてくれる。

大人だけでは会釈程度の相手でも、子どもをみた途端、目尻をさげて「何歳?どこから来たの?」と声を掛けてくれ、地元の方との会話が自然に生まれる。

乳幼児連れの島旅でしばしば出会う「抱っこリレー」

子も親も、島の自然と人の温かさにふれられるものだから、私は島旅こそ子ども連れでと感じている。

お別れの紙テープに後ろ髪ひかれる

広い五島列島は2泊3日では物足りないが、心残りができたらまたくればいい。帰りの船から見送りの紙テープをながめる娘も「またくるねー」とつぶやいていた。

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