東西約1,000km、南北約400kmという広大な海に、47の有人島が存在する沖縄県には、島ファンをとりこにする「南の島の暮らし」があります。自らを「離島マニア」と呼び、70島もの島々を訪ね歩いた女性が、移住先に選んだ島の暮らしを紹介します。
那覇から船で2時間15分、約700人が暮らす南の島へ
2016年、粟国島(あぐにじま|沖縄県)へひとりの女性が移住しました。島へのアクセスは、慶良間諸島や久米島、渡名喜島などの島々をつなぐ玄関口・那覇市の泊港から、基本的に1日1往復。
(提供:粟国村観光協会)
フェリーに乗り込み、片道2時間15分。数百万年前の火山活動による堆積物からできたといわれる粟国島に到着します。
面積は渋谷区の半分ほど。島をぐるりと1周しても約12キロメートルという小さな島で、島に残る独特の風習や家族の絆が描かれ、話題を呼んだ映画『洗骨』の舞台としても知られています。
(提供:粟国村観光協会)
のどかな雰囲気の美しい島
島を歩くと、火山噴火により形成されたダイナミックな地形がみられ、島の南部にある海岸「ヤマトゥガー」や「ヤヒジャ海岸」、西部先端の「筆ん崎(ふでんさき)」など、個性豊かな景色は観光資源にもなっています。
(提供:粟国村観光協会)
島の東側には、まさに「南の島」らしい美しい海が広がります。透明度の高いリーフが1キロメートルほど続く「ウーグの浜」には、夏場になるとシュノーケルや海水浴を楽しむ人々が訪れますが、有名ビーチのように人であふれかえることなく、壮大な自然の中、のんびりと過ごすことができます(ちなみに、ウーグの浜は海水浴場ではありません。遊泳する場合は自己責任となりますので十分に気をつけてください)。
(提供:粟国村観光協会)
ちなみに、巷に知られる粟国島の特産品に「粟國の塩」があります。
どこまでも透き通る粟国島の海水を使い、昔ながらの伝統製法を用いて造られる塩は、栄養価が高くミネラル豊富。
(提供:粟国村観光協会)
塩と島のゆかりの深さは、島の伝統行事にも現れ、旧暦の大晦日の夜から翌元日の朝にかけて行われる行事は「マースヤー」(沖縄の言葉で「塩売り」)と呼ばれ、艶やかな衣装を身にまとい、歌い踊りながら練り歩き、無病息災、五穀豊穣を祈ります。
(提供:粟国村観光協会)
70島を渡り歩き、粟国島に出会った移住者
2016年、粟国島に移住した宮本真理さんは自身を「離島マニア」というほど、島が好きで日本全国の島々を旅していました。
「粟国島へ来る前の私は、がむしゃらに働いて、疲れが溜まったら離島へ赴き、リフレッシュを繰り返していました」という宮本さんが訪れた島はいつしか70島あまりに。
(提供:宮本真理)
東京に生まれ関東エリアで暮らしてきた中、島を訪れ「自然の中で、自分の小ささを感じること」に心地よさを感じていた宮本さんは、東京からもアクセスしやすい沖縄の島々をスタンプラリーのごとく、訪れていたと言います。
そして粟国島を訪れたときに「ツボにはまった」と感じ、島暮らしを夢見るようになりました。
(提供:粟国村観光協会)
「強いて言うなら、粟国島のサイズ感と那覇からの距離感が私にはちょうどよかったから。石垣島や宮古島だと大きすぎるし、都会過ぎる。粟国島なら那覇からフェリーで2時間ほどで行けるし、生活圏が凝縮していて意外と便利なことも大きな魅力でした」(宮本さん)
その後、粟国村が「地域おこし協力隊」の募集を始めたと聞きつけた宮本さんは、真っ先に応募。無事、地域おこし協力隊に着任すると、自らが粟国島に強く惹かれたように、島に遊びに来る人や、島暮らしを希望する人に、島の魅力を知ってもらうことや、島に暮らす人々の満足度向上を目指して奮闘。
「粟國の塩」を使った特産品や島でとれたもちきびを使った「もちきび麺」などを開発・販売し、県内外で島をPRする活動にも力を入れました。
(提供:宮本真理)
地域おこし協力隊の任期終了が迫ったころ、「もっと粟国島のためになりたい、住み続けたい」という気持ちが強くなった宮本さんは「島のパン屋になろう」と決意。
当時、粟国島にはパン屋が一軒もなかったため、フェリー欠航時等には村民の役にも立てると考え、パン屋を開業しました。
(提供:宮本真理)
「パン屋を始めてから毎日必死ですが、人口が少ない粟国島は人との距離が近いので、お客様からの反応がダイレクトに届いてうれしい」(宮本さん)
「粟國の塩」をはじめ地元産の材料でパンを作るようにしていますが、島の人には「変わり種より普通のパンの方が喜ばれますね」と笑います。
ある日、惹かれた南の島に暮らしてみて
粟国島に移住して4年。現在の宮本さんは島の魅力を「全く飽きない」と表現します。
「小さな島なのに東と西で全く景色が違いますし、季節や時間帯によってもいろいろな表情を見せてくれるので、何度でも感動できます。隆起した岩や地層がある場所に行くと、まるで異空間に迷い込んだようなトリップ感も楽しめるんです」(宮本さん)
(提供:粟国村観光協会)
そんな粟国島に「ずっと住んでいきたい」と語る宮本さんが、何より惹かれていることは、「人が本当に温かいこと」。
「地方だと移住者が入り込みづらいこともあると聞きますが、人口減少が進む粟国島は移住者にも優しく、島民のほとんどが顔見知りだという安心感もあります」と、日本全国の島を旅しながら、たどり着いた粟国島の暮らしに充実感を感じています。
(提供:宮本真理)
粟国島には、宮本さんが惚れ込む島暮らしを体験できる、アットホームな宿が数軒あります。小さな島で、のんびり、ゆっくり、暮らすように楽しむ島旅を体験してみませんか?
【関連サイト】
粟国島の観光情報については粟国村観光協会へ