つくろう、島の未来

2024年04月18日 木曜日

つくろう、島の未来

ICT(情報通信技術)を活用した在宅勤務など、場所や時間にとらわれない「テレワーク」や、企業が本拠地から離れた場所に設置する「サテライトオフィス」の誘致が、各地で始まっている。宮古島(みやこじま|沖縄県)では、市が誘致活動に乗り出し、IT企業2社が島に進出。UIターンの雇用が生まれるなど、成果が現れている。(画像提供:株式会社リチャージ)

宮古島で始まるテレワーカー誘致

宮古島は、沖縄本島の南西約290キロメートルに位置し、面積158.87キロ平方メートルに48,250人(※1)が暮らす。東京・大阪・福岡・沖縄本島等と航空路線で結ばれ、平成29年度の入域観光客数が約99万人(※2)を数えるなど、観光地として人気を博している。

※1:統計みやこじま 平成2015年度版
※2:宮古島市ホームページ

その一方で、宮古島では少子高齢化が進行。UIターン人材を島に呼び込むための雇用の創出が求められていた。

そこで、宮古島市は、本土との距離を克服しやすいIT(情報技術)産業に注目。ICT(情報通信技術)を活用し場所や時間にとらわれず柔軟に働く「テレワーク」の推進や、企業が本拠地から離れた場所に設置する「サテライトオフィス」の誘致に向けて、2016年度から検討を開始した。

政府目標では2020年までにテレワーク導入企業を3倍に

2017年5月、「世界最先端IT国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」が閣議決定され、2020年までに「テレワーク導入企業を2012年の11.5%から3倍に」「雇用型テレワーカーの割合を2016年度の7.7%から倍増」とする政府目標が設定された。

1997年に『テレワーク社会』を出版し、20年前からテレワークを提唱してきた早稲田大学大学院の三友仁志教授は「近年全国的に高速インターネット通信網の整備が進み、地方自治体によるテレワーカーの誘致合戦が始まっています」と語る。

宮古島市が乗り出したサテライトオフィス誘致活動

宮古島市は、2016年度にテレワーク推進とサテライトオフィス誘致に向けた可能性調査を実施。2017年度より「宮古島市サテライトオフィス誘致活動サポート事業」として本格的に誘致活動に乗り出した。

事業を受託した株式会社リチャージの代表を務める志水哲也さんは、愛知県出身で、名古屋を拠点に長年Web制作会社を経営。「数年前までのWeb制作業界は、発注者の要望に応えて徹夜作業も辞さない雰囲気があった」と語る。

「不夜城」とも呼ばれる業界で働くスタッフが、心身の体調を崩して相次いで退職するのを目の当たりにした志水さんは、働く人が心身ともにリフレッシュできる場がつくれないかと考えるようになったという。

時期を同じくして、宮古島の法人会の招きでWebマーケティングの講師として宮古島に来島した志水さんは、地元企業の経営者らと話をするなかで、島に若年層の流出や人材不足という課題があることを知った。

「宮古島を訪れて、本当にきれいな所だと思いました。自分たちの技術や人脈を活かして島のお役に立てる事があるんじゃないか。また、Web制作なら場所を選ばす仕事ができる、社員にもこういう所で仕事をしてもらいたいとの思いを抱きました」と志水さんは振り返る。

志水さんは2013年に宮古島の地元住民やIターンメンバーと共にリチャージを起業。島内でITを活用したトライアスロン大会の運営サポートや、農家へのネットショップ講座、高校でのプログラミング出前講座など、ICTを活用した地域づくりに取り組むようになる。

そして、2016年8月、宮古島と伊良部島をつなぐ伊良部大橋の架橋に伴い用途が縮小されたマリンターミナルの一室を市から借り受け、志水さんが代表を務めるWeb制作会社タービン・インタラクティブが宮古島で初となるサテライトオフィスを開設した。

タービン・インタラクティブの宮古島サテライトオフィス

1日8時間のフルタイムと4〜6時間の副業勤務を選択

同社は社宅として男女別のシェアハウスも整備し、スタッフ2名がIターン。Uターンした出身者3名の雇用も生まれている。宮古島オフィスの勤務体系は、1日8時間のフルタイムと、家業の手伝いや介護などと両立させながら働くことも可能な1日4時間〜6時間勤務で副業可の時短勤務の選択制とした。

那覇から宮古島へUターンしたスタッフの山里瞬さんは、得意の大工技術を活かし、実家のリフォームをしながら働いている。「入社当初は1日4時間勤務で働き始め、6時間、8時間と徐々に勤務時間を延長。仕事が面白くなってきたので、実家はまだ改装中です(笑)」と話す。


(記事後編に続く)


【関連サイト】

テレワークの楽園化プロジェクト

関連する記事

ritokei特集