琵琶湖に浮かぶ沖島(おきしま|滋賀県)では、2016年1月より定住促進用住宅への入居者を募集。6月に滋賀県内の大学に通う久保瑞季さんが移住し、船とマイカーを利用して島から通学しながら沖島の島づくりに励んでいる。(画像提供:久保瑞季)
学生グループ「座・沖島」の活動風景
沖島(おきしま|近江八幡市)は、日本唯一の淡水湖上の有人島として知られている。少子高齢化や人口減少により人口はピーク時の半分以下に減少。平成25年には国の離島振興法対策実施地域にも指定され、近江八幡市では離島振興計画を策定し、島の活性化を図っている。
同計画の一環として、近江八幡市では島内の空き家を定住促進用住宅として用意し、移住者の募集を開始。今年6月に滋賀県立大学に通う大学3年生の久保瑞季さんが移住者第1号として入居を開始した。
自ら移住することで「沖島の人々に寄り添っていきたい」
久保さんは、2015年11月に大学のゼミ活動で沖島の行事に参加するため来島。沖島に暮らす人々と交流したことをきっかけに島に魅かれ、2016年には地域活性を行う学生グループ「座・沖島」を結成した。
「島のために学生としてもっと何ができることはないか」と話す久保さんは、「自分が沖島で暮らすことで沖島の人々に寄り添っていけるのではないか」と考え、島で漁業を営む西居英治さんに移住を相談。定住者促進住宅への入居を申し込み、今年6月より移住を開始した。
大阪市出身の久保さんは「都会育ちだったので、虫がたくさん出ること、トイレが玄関の外にあること、テレビがつかなかったことなどには驚きました」と話ながら、「隣近所の人から魚や食事の差し入れをいただいたりして、ありがたいです」と島の暮らしにもなじんできた。
無料案内役「ぶらり案内人」としても活躍
沖島の風景
久保さんは現在、沖島の「ぶらり案内役」として月に2回ほど観光客に向けた無料案内も引き受けている。
来島した観光客に地図を配布し、路地を歩きながら島の魅力や特徴を案内。島内に自動車がない沖島暮らしに欠かせない三輪車の話や、スジエビ漁などに使う籠「エビたつべ」、島の歴史を語りながら、人々が穏やかに暮らす島内での観光マナーについても案内する。
「観光客の方々に『何もない島だね』などと言われると、案内人として、島へ遊びに来た人たちの期待する島の様子と違う姿が伝わっているかもしれないと悩むこともあります。どうしたら穏やかでのんびりとした島の魅力がもっと伝わるかと試行錯誤中です」と久保さん。「生活の島としての沖島の魅力を知ってもらって、リピーターを増やしていきたい」と意気込む。
久保さんのそんな姿に「がんばってるね」と声をかける住民も出てきており、久保さんは「うれしいです」と声を弾ませる。
島の未来を築くサポートをしたい
2018年度には大学卒業を控える久保さんは、卒論の研究でも沖島に焦点をあてるために準備をしている。
「沖島を存続させていくために自分に何ができるかと模索しています。生活の島である沖島の魅力を活かして、未来につなげていければ」と話す久保さんは、沖島のこれからに思いを馳せる。