つくろう、島の未来

2024年03月28日 木曜日

つくろう、島の未来

全国の離島で活動する「地域おこし協力隊」が起業について学ぶ「島ちおこサミット」が10月12(木)、13(金)の両日、長崎県新上五島町で開かれ、参加した北海道から沖縄までの協力隊員ら計23人が、離島で起業し活躍している協力隊OGらから実践的なノウハウを学んだ。

協力隊OGによる講演、テーマ別分科会を2日間に渡り開催

離島での起業を目指している協力隊員が、横の連携を深めるきっかけになればと、新上五島町の地域おこし協力隊が今回初めて企画。北は北海道・礼文島(れぶんとう)から、南は沖縄県・多良間島(たらまじま)まで、人口数人~数万人の離島で活動している20~40代の隊員らが参加した。

1日目は、長崎県五島市でゲストハウス「ネドコロノラ」を昨夏開業した同市地域おこし協力隊OGの廣瀬愛(まなみ)さん(29)と、同県対馬市の「島おこし協働隊」(対馬市での地域おこし協力隊の呼称)OGで獣害対策などに取り組んでいる谷川ももこさん(30)が講師として登壇。起業までの経緯や苦労した点などについて、実体験をもとに講演した。

2日目は、「宿泊業」「農業・山村留学」「移動販売」など、起業に絡む5テーマの分科会に分かれ、グループワークに取り組んだ。

「クラウドファンディングに挑戦」「まず自分のために頑張って」

初日の講演で、廣瀬さんは資金集めの手段として注目が高まっている「クラウドファンディング」(インターネットサイトを通じ、プロジェクトに共感してくれる人から広く資金を集める方法)を活用し、開業資金の一部を調達した取り組みを紹介。

「出資者への返礼としてに地元企業の商品を使うことで返礼品の幅が広がり、島の認知度も高められ、結果的に『三方良し』となった」とメリットを訴える一方、「出資が伸びない時期もあり、本当に気が重いときもあった」と苦しんだ時期があったことも打ち明けた。

農作物を荒らすイノシシやシカと人が共存できる社会づくりを目指して事業を展開している谷川さんは、起業して取り組む事業について「結果として『地域のため』になるのが理想だが、まず自分のために頑張ってほしい」と強調。「そうしないと、協力してくれない人たちに肯定的な気持を持てなくなってしまう」などと協力隊員が陥りがちな問題に警鐘を鳴らした。

参加した隊員らは、メモを取りながら熱心に話に耳を傾けていた。

左:講演する廣瀬愛さん/右:マイクを握る谷川ももこさん=新上五島町役場有川総合文化センターで

廃集落を開拓した島のIターン者を訪問

2日目の分科会で、「農業・山村留学」グループには3隊員が参加し、新上五島町で自給自足に近い生活を送りながら、塩づくりや農業、子ども向け自然キャンプ活動などを手掛けている「くらしの学校『えん』」を訪問した。

3隊員は、Iターン者で「えん」オーナーの小野敬(たかし)さん(44)の案内で、ポニーやヤギなどたくさんの動物が飼われている敷地内を興味深そうに見学。収入の柱となっている海水を原料とした塩づくりや住人が一人もいなかった廃集落を一人で開墾した歴史などに耳を傾けたあと、「えん」自家製の材料を使ったピザづくりにも挑戦した。

今回のサミットに、飛行機、船にそれぞれ2回乗り、2日がかりで礼文島から参加した山中英里奈さん(36)は「島での起業を考えていますが、近くに相談する人がいなくて参加しました。協力隊の仕事をしながら起業の準備ができるのか不安でしたが、講師の先生から直接話を聞くことができ参考になりました」と話していた。

長崎県小値賀町にある人口5人の六島(むしま)で活動する北野睦弥(むつみ)さん(20)は「サミットで会った全国の島の協力隊はおもしろい人ばかりで、とても刺激になりました。子どもキャンプなどに興味があり、分科会では『えん』に行きましたが、もっと色々話を聞きたいのでまた来たいです」と目を輝かせていた。

総務省がまとめた「平成29年度 地域おこし協力隊の定住状況等に係る調査結果」によると、平成29年3月末までに任期満了した協力隊2230人のうち、約6割が同じ地域に定住し、このうち約3割の314人が起業。起業分野でもっとも人気があったのは古民家カフェやレストランなどの「飲食サービス業」で49人、以下はパン屋や鮮魚販売など「小売業」が30人、ゲストハウスなどの「宿泊業」が28人と続いた。

(写真・文 竹内 章)

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