つくろう、島の未来

2024年04月18日 木曜日

つくろう、島の未来

2月25日、東京・新宿区の「離島キッチン神楽坂店」で、粟島(あわしま|新潟県)の魅力を体験するトーク&ランチの会が催されました。
このイベントは大正大学(東京都豊島区)の「離島と都市を結ぶ地域づくり学習研究会」と離島キッチンの共催で実現。学生による研究発表とワークショップ、粟島の食材を使ったランチなど、当日の様子をお届けします。

前列左より、大正大学「離島と都市を結ぶ地域づくり学習研究会」兵頭衣織さん、幅野裕敬さん、本多 龍さん 後列左より、イベントの広報を担当した増山和秀さん、「離島キッチン」辻原真由紀さん、幸 秀和さん、「おむすびのいえ」青柳花子さん、粟島浦村地域おこし協力隊の武田知浩さん

離島と都市を結ぶ地域づくりの研究会

大正大学の「離島と都市を結ぶ地域づくり学習研究会」は、「時代とともにほどけてしまった都市と離島の関係を結びなおす」を目標に、離島地域を舞台にした研究活動を行っています。

2014年から地域づくり研究として粟島をテーマに活動し 、島の営みの中で行われている「竹取り」「ワカメ取り」などの「お手伝い」を、体験型の観光プログラムにできないか検討してきました。

この日、会場となった「離島キッチン」は、全国の島々の食文化や歴史などを楽しむことができるレストラン。毎月、特定の島をピックアップする「今月の島企画」を開催している同店では、2月のテーマを「粟島」にしていたことから、大正大学と共に粟島の魅力を伝えるトーク&ランチの開催に至りました。

会の冒頭、研究会の兵頭衣織さんが、フィールドワークを通じて感じた島の魅力を語りました。

「粟島にいるときは、自分の意思で時間を使うことができていると感じました。島の空気が心地よくて、何度行ってもまた行きたくなります」と兵頭さん。「東京では雑音が多く忙しい気分になるけれど、粟島に行くと五感が鮮明になる」と島に滞在する魅力を語りました。

粟島では地元の方から野菜をいただき、料理の仕方も教わることもあるのだとか。「研究会では、人の笑顔を大切にしながら島の魅力という資源を生かす方法を考えています」と結びました。

粟島での滞在プランを考える

続くワークショップでは、研究会の学生たちが進行役になり、テーブルごとに来場者をグループ分けし、1泊2日の粟島滞在プランを話し合いました。

研究会の考えた「お手伝いプログラム」を組み合わせ、4つのグループがそれぞれの粟島での過ごし方を企画しました。発表では、1泊2日では足りないと2泊3日のプランを企画したグループも登場。参加者の一人は「滞在プランを立てることで、粟島で過ごすイメージがリアルに感じられた」と話していました。

粟島のゲストハウス開業秘話

続いて、粟島で昨年開業したゲストハウス「おむすびのいえ」を営む青柳花子さんが、ご自身の移住と起業の体験談を話しました。一人旅で訪れた粟島を大好きになり「ここに住む!」と決意した青柳さん。翌年には島の保育士として就職し、島で暮らし始めたという行動派です。

青柳さんは島で暮らすうちに「島に人の集まる場をつくりたい」との思いが募り、ゲストハウスを開業するに至ったと言います。「日ごろ観光客と接していて、島暮らしに興味のある人は多いと感じる。自分が島の窓口になれたら」と思いを語りました。

敬和学園大学アマドコロ茶プロジェクト

敬和学園大学(新潟県新発田市)の趙ゼミによるアマドコロ茶開発プロジェクトの紹介と、試作したお茶の提供も行われました。

趙ゼミでは地域課題の発見と解決策を考えるアクティブラーニングの一環として、粟島に自生する薬草アマドコロを活用した特産品の開発を試みているとの説明がありました。

試飲したお茶はさっぱりとしていて、ほんのり甘みがありました。日本では主にアマドコロの新芽が山菜として食べられますが、韓国では健康に良いお茶としてよく飲まれているそうです。

特製粟島ランチ御膳で食事会

トークに続く食事会では、離島キッチンの料理人がこのイベントのために腕を振るった「特製粟島ランチ御膳」が提供されました。

料理は粟島の在来豆「一人娘」や粟島近海のマダラ、粟島産の海藻ギンバソウを使ったもので、デザートも粟島産のジャガイモを使った芋餅という粟島尽くし。

食材の仕入れのために島を訪れ、地元の女性たちに郷土料理を教わってきたという離島キッチンの有田さんが、料理の説明と粟島でのエピソードを語りました。

「島の料理を教えてくださいとお願いしたら、1時間で10品程つくってくれた島のお母さんたちのパワフルさに驚きました」と有田さん。粟島から届いた食材で、お母さんたちの料理を再現しようとの想いで料理をつくったと言います。

参加者は、有田さんの言葉に耳を傾けながら料理を味わい、「豆の味が濃い!」「これおいしいですね」と、笑顔で感想を話し合う姿も見られました。

粟島に関わる人々が語る生きた言葉に触れ、粟島のお母さん直伝の郷土料理を味わい、参加者にとって遠い存在だった粟島がぐっと身近になっていく様子が感じられたトーク&ランチ。島と都市を結ぶ地域づくり研究の輪が、地域の営みを守り伝える一助となるよう、期待が高まるイベントでした。

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