つくろう、島の未来

2024年11月21日 木曜日

つくろう、島の未来

離島で導入が進むICTを利活用した「教育」「医療・福祉」「交流人口の増加」などの先進事例や、ICT利活用による離島の未来の在り方について語らう「第1回 沖縄離島ICTシンポジウム」が国内唯一の島しょ県・沖縄で開催されました。基調講演を行った離島経済新聞社 編集長や各パネリストの発言を紹介します。

■ICTが叶える離島の未来
― 第1回 沖縄離島ICTシンポジウムレポート ー

ICTとはインターネット回線を活用し、遠く離れたもの同士のコミュニケーションを可能にする「情報通信技術=Information and Communication Technology」のこと。2月5日、離島でも導入が進むICTを利活用した「教育」「医療・福祉」「交流人口の増加」などの先進事例や、ICT利活用による離島の未来の在り方について語らうシンポジウムが国内唯一の島しょ県・沖縄で開催された。基調講演を行った離島経済新聞社 編集長や各パネリストの発言を紹介する。

■基調講演

「宝の島々を未来につなぐICT」
~国の宝である離島地域を未来につなぐために~

基調講演では、「日本の離島は宝島」をコンセプトに活動する離島経済新聞社主宰の鯨本あつこが、離島の本質的な価値やICTの活用事例について語った。

「島に暮らす人の未来のためにICTを活用してほしい」

「離島経済新聞社ではICT を活用して『奄美群島時々新聞』『石垣島Creative Flag』など、島に暮らす人との協同プロジェクトを行っている。全国の島々には、Uターンで島に戻り一生懸命、島の未来を守ろうとする若者がいて、島の子どもたちも将来は島に帰りたいと言う。日本の離島は宝島であり、離島の未来を担うのは子どもたち。島の暮らす人の未来のために使える手段としてICTを活用してほしい」(鯨本 あつこ 離島経済新聞社 主宰)

■パネルディスカッション第1部

「離島の暮らしを支えるICT」
~教育・医療・福祉など、離島地域を支えるICTの活用事例~

基調講演に続くパネルディスカッションでは、海邦総研 伊波貢氏のコーディネートのもと、与那国島や北大東島で東大生によるネット塾を提供しているフィオレ・コネクションの松川來仁氏、伊平屋島の診療所でICTを活用する金子惇医師、本土〜離島間のインターネット回線を整備するNTT西日本那覇支店の上野睦弘氏が、それぞれの事例を紹介した。

「テレビ会議システムを活用し現役東大生による授業を提供」

「埋もれていく才能を埋もれさせないよう、現役東大生による授業をテレビ会議システムを活用して提供する『東大NET アカデミー』を、与那国島や北大東島などに導入している。遠く離れていても双方向にコミュニケーションがとれるため、子どもたちはテレビ画面を通じてリアルタイムで先生に質問をすることができる。学力的な効果では与那国島は導入1年目で学力が飛躍的に向上した」(松川 來仁 フィオレ・コネクション「東大NETアカデミー」代表)

「ICTを活用することで最期まで暮らせる島をつくりたい」

「伊平屋島で電子カルテの導入や自宅で図った血圧データを診療所に送るメディカルリンクを実施している。離島の医師は孤独と思われているが、インターネットを使って島外の専門医に相談することができたり、医療、福祉、保健で連携を図ることができる。ICTを活用して離島医療のやりがいを発信し、離島に来てくれる医師を増やし、地域と連携し、島で最期まで暮らすという人々の思いを支えたい」(金子 惇 伊平屋診療所 医師)

「テレビ電話で保健師に相談できる遠隔健康相談を実施」

「沖縄県との連携などにより、沖縄本島と離島間の海底ケーブルの整備を進めてきた。また、利活用事例として小豆島町でICTを活用した遠隔健康相談を行っている。高齢者が楽しく健康づくりを行えるよう歩数計を配布。公民館に設置してある端末にかざしてもらいバイタルデータを蓄積しテレビ電話を通して保健師に相談できる仕組みを取り入れている。健康状態が良くなっているという報告がある」(上野 睦弘 NTT 西日本沖縄支店 沖縄振興推進室 室長)

「高速通信網整備の先に未来がある。ICTは課題解決の味方」

「最近はネットショッピングの発達により、離島に暮らしている人々も本や食品、生活雑貨を手軽に購入できるようになった。沖縄県内の離島で実施した『離島におけるICT利活用に関する調査』のアンケート結果では、光回線のサービスが一部の離島のみであるため通信速度に対して76%が不満を持ち、ICTの利活用を望む分野として医療福祉、教育、観光、防災が多いことがわかった」(伊波 貢 海邦総研 取締役経営企画部長)

■パネルディスカッション第2部
「離島から築く 島国の未来×ICT」
~ICTを活用した働き方・暮らし方の事例と可能性を探る~

パネルディスカッションの第2部では、インターネット上で講義を行うサイバー大学の勝眞一郎教授、沖縄離島の魅力を配信する女優の福本幸子氏、沖縄や全国の地域づくりに詳しい安里繁信氏が、ICTが叶える未来について語った。

「ICTが進むと人間の琴線にふれる『志』も重要になる」

「インターネット上で大学講義を実施するサイバー大学で講義を行っており、離島にも生徒がいる。離島はこれまでモノも情報も離れていたが、今ではネットを活用することで、都会と変わりなく情報が入ってくるようになった。無料で受けられる大学授業などネットを活用した学習サービスは日本でも増えてきているが、ICTが進むと人々の琴線にふれる『志』を持った仕掛けが支持を受ける」(勝 眞一郎 サイバー大学IT 総合学部 専任教授)

「ICTは国際社会で当たり前。未来をつくる人づくりが重要」

「前提としてICTそのものは社会インフラであり、未来をつくるのは人である。国際社会では高速通信網の整備を率先して進めている。離島を含めて当たり前のインフラであることを認識した上で基盤整備を進めるべき。そして、自治体は、ICT利活用によるふるさとづくりのビジョンを主体的に描き、その実現に向けた人材を育成してほしい。ひいては、ふるさとづくりが未来づくりとなる」(安里 繁信 (一財)沖縄公共政策研究所 理事長・OCVB前会長)

「離島の魅力を発信力のあるクリエイティブ層に届けたい」

「沖縄の島々で撮影した映像をインターネットを通じて発信している。既存の沖縄をPRするコンテンツは画一的。海外での仕事が多いため世界中の人々、特にクリエイティブ層に響くような映像づくりを心掛けている。インターネットがあれば、島々を訪れ、良いと思った人が自然に拡散してくれる。自然や伝統文化など、離島の魅力を発信力のあるクリエイティブ層に届け、発信してもらいたい」(福本 幸子 女優)

那覇市の県立博物館には自治体関係者や島出身者など約200名が聴講に訪れ、シンポジウムは盛況のうちに幕を閉じた。

主催:沖縄県企画部地域・離島課
後援:伊平屋村、伊是名村、伊江村、本部町、うるま市、南城市、粟国村、渡名喜村、座間味村、渡嘉敷村、久米島町、北大東村、南大東村、宮古島市、多良間村、石垣市、竹富町、与那国町
メディア協賛:沖縄タイムス社、琉球新報、NHK 沖縄放送局、琉球放送、琉球朝日放送、沖縄テレビ放送、ラジオ沖縄、エフエム沖縄、離島経済新聞社
協力:NTT 西日本沖縄支店、沖縄セルラー電話株式会社、NEC 沖縄支店、オムロンヘルスケア株式会社、株式会社フィオレ・コネクション

詳細は公式HP をご覧ください http://ok-islands-ict.net

     

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