つくろう、島の未来

2024年10月10日 木曜日

つくろう、島の未来

島暮らしに多い困りごとのひとつに「停電」がある。台風の常襲地帯では、数時間から数日間の停電も珍しくないが、エアコンや冷蔵庫、そしてスマホなどの通信手段のことを考えると、「停電知らず」の島暮らしを願う人は少なくない。

一方、社会を見回せば、技術の進歩によりこれまで「インフラに頼るしかない」と考えられていた電気を自分でコントロールできる時代が訪れている。

2019年の夏、島を愛する自動車評論家の発案により、沖縄の小さな島に1台の電気自動車「日産リーフ」が導入された。そこで見出されたのは、「停電知らずの島暮らし」と「自分でできるエネルギーマネジメント」という2つの可能性。そのポイントを紹介する。

(制作・離島経済新聞社広告制作チーム)

阿嘉島(あかじま)。大小30余りの島々からなる慶良間諸島にある座間味村の島。人口263人(2019年9月現在)。透明度の高い海域に多様なサンゴが生息する阿嘉島は、慶良間諸島国立公園にも指定される

人口260人の島で電気自動車が変える美しい島と人の暮らし

海に近い場所で暮らしたい――。

そんな夢を実現すべく、阿嘉島に移住した木舩征良さんは、家族と共に島でダイビングショップを営んでいる。エメラルドグリーンに輝く海は、木舩さんと同様に、国内はもとより海外から訪れる人々もトリコにし、木舩さんのダイビングショップにも毎年多くのリピーターが訪れていた。

そんな木舩家に1台の電気自動車(EV)「日産リーフ」がやってきた。

運んできたのは、阿嘉島リピーターでもある自動車評論家の国沢光宏さん。もともと親交のあった国沢さんの縁で突如、現れたEVを見て、子どもたちは「カッコイイ!」と喜んだが、EVに触れたことのなかった木舩さんは「どうしたらいいのだろう?」と疑問を抱きつつ、日産リーフのある生活をスタートさせた。

自動車評論家の国沢光宏さん(左)と木舩征良さん(右)。征良さんは千葉県出身。海風そよぐ阿嘉島の前浜ビーチを臨むダイビグショップ「MARINE LINK FOR DIVERS」代表。妻の真喜子さん(中央)と子どもたちと共に島暮らしを楽しんでいる http://www.m-link99.com/

車はガソリンで走るものだった。それが電気に変わったら、何が起こるのだろう? リーフを走らせながら木舩さんが最初に感じたのは「快適さ」だった。

阿嘉島は周囲約12キロメートルの小さな島である。港からダイビングショップまでは900メートルと歩けなくもない距離だが、ダイビングに訪れる来島者は大きなスーツケースを抱えてくるし、沖縄の日差しはとにかく暑い。

そこで車に乗ってエアコンをかけるわけだが、移動距離の短さゆえ、エアコンが効き始める前に目的地についてしまう。木舩さんは、前に乗っていた車と比べてリーフは「すぐに涼しくなる」という印象を受けていた。

エンジンのない電気自動車は車内も外も驚くほど静か

ここは国立公園に指定される美しい島。多い日には1日4回の船便に合わせて送迎に出掛けている木舩さんは「港でお客さんを待っている時にクーラーをつけっぱなしにすると排気ガスが出るので、罪悪感がありました」と話す。

民家、宿泊施設などのある集落は前浜ビーチに隣接。自然豊かな島には、天然記念物のケラマジカも生息している

座間味諸島は環境意識の高さでも知られている。車に乗っても環境に影響を与えないことは、島を愛する一方、車移動を必要とする人々の心理的な負担も軽減する。 

そしてEVは停電時の備えとしても心強い。

多い時には年間5回ほど停電し、復旧までに1〜2日間を要することがある状況は島暮らし“あるある”だが、事業を営む立場からすると「停電時にもお客さんから予約が入ることがあるので、通信は欠かすことができない」。

さらに、島では食材ストック用の大型冷凍庫を保有する家庭も多いため、停電が長引けば大量の食材もダメになってしまう。

ダイビングショップにて。中古の旧型リーフにパワームーバー(中央の四角い機械)を接続すると100Vの電気を車から取り出すことができる

木舩家に現れた電気自動車リーフは、停電がつきものだった島暮らしに「もしもの時もスマホが充電でき、冷凍・冷蔵庫が守れる」という安心を備えてくれるものとなった。

スマートフォンの充電なら100〜300人分を充電可能。阿嘉島なら1台で全島民の通信手段を守ることができる(※バッテリー容量により差があります)

自動車評論家が考える「島こそ電気自動車」の理由とは?

学生時代に2カ月間、阿嘉島に滞在した国沢さんは、以来40年以上、島に通っている。「台風の度に停電して、食べ物も段々なくなっていくんです」という島ならではの営みを熟知しながら、プロの自動車評論家となった時、思い浮かんだのが「島こそ電気自動車」だった。

「阿嘉島のように1回の移動が1キロメートル程度の小さな島では、エンジンが温まる前に目的地に着いてしまうので燃費がすごく悪いんです」(国沢さん)。その規模感からすれば仕方のない話だが、離島はガソリンが高く、阿嘉島でも常に150円/ℓ超。

国沢光宏(くにさわ・みつひろ)。自動車評論家。2010年タイ国ラリー選手権シリーズチャンピオン。新車レポートから維持管理方法まで自動車に関する幅広い見識を保有。自動車専門誌やインターネットメディアなどを中心に活動

できるだけ抑えたい日々の交通コストについて、「電気自動車なら、夜間電力契約でガソリン代の10分の1ほどになりますし、さらに太陽光パネルもあれば、外部のエネルギーに全く頼ることなく自己完結で車を走らせることも可能です」と話す。

そう聞くと「高いんじゃないの?」と問いたくなるが、国沢さんは「昔は絵に描いた餅だったかもしれませんが」とニヤリ。というのも、阿嘉島に導入したリーフは中古車だったのだ。

「電気自動車が出てきた2011年頃は1台300万円以上でしたが、最近は60〜70万円で中古車を買えるようになりました。最近では、太陽光パネルも1キロワットあたり30万円くらいで手に入るので、3キロワット分つけるとしても120〜130万円ほど。中古のリーフと合わせて200万円前後で、ガソリンも電気も買わずに済み、停電も怖れることなく、移動手段も確保できるんです」(国沢さん)。

電気自動車の普及開始から8年の今、「島こそ電気自動車」という国沢さんのアイデアに合点がいった。

島を愛する自動車評論家・国沢さんが考える3つのポイント

エンジン音がせず排気ガスも出さないEV車で、島を走行できるのはとても気持ちが良いです。排気ガス規制が2021年から一段と厳しくなりが、好き嫌いの問題ではなくEVが当たり前となる時代が訪れますが、先駆者である日産リーフは世界中で40万台を販売しながら発火などの電池トラブルはゼロ。安全性は素晴らしいです。

当たり前ながら、ガソリン代が不要。夜間電力や太陽光パネルを活用するなど、工夫次第で日々の交通費を安くすることができます。電気自動車にはエンジンがないので、エンジンオイル、オイルフィルター、冷却水などの定期点検や交換が不要。小さな島ならタイヤ交換も不要なので、メンテナンスにかかる費用を抑えられます。

リーフ1台と太陽光パネルがあれば、外部の電力に頼ることなく「電気」と「移動手段」を自己完結で確保することができます。日々の電気はもちろん、100〜300人あたりに1台を備えていれば、停電時に全員分の携帯電話を充電することも可能。万が一の災害時には、医療機関や役場など、重要な施設の電気を賄うことができます。

電気を車に貯めて家で使うエネルギーマネジメントのはじめ方

日産リーフに搭載される大容量のEVバッテリーはクルマの動力源であるだけでなく、「蓄電池」としても機能します。さらに、太陽光発電により生まれた電力を蓄電すればエネルギーの自給が可能。太陽光発電がないご家庭でも、深夜電力を活用して、家の電源から充電すれば、手軽にエネルギーを確保することができます。

「V2H(※1)」を備えれば、停電時でも家中のほとんどの家電に給電が可能。どこでも電力を取り出すことができる「パワー・ムーバー(※2)」と合わせて備えれば、停電知らずのエネルギーマネジメントが実現します

(※1)「V2H/VtoH」。「Vehicle to Home」の略。電気自動車のバッテリーに蓄えた電気を家で使う仕組みおよびその機器の名称
(※2)ニチコン社製の持ち運び可能な給電器の名称。電気自動車から電気を取り出し、交流(AC)100Vに交換する機器で、車に積めるほどのコンパクトサイズ。(各口1500wのコンセントが3口、合計出力4500w)

災害の被災地でも活躍する日産リーフ

2019年に襲来した台風15号は、千葉県内に大規模停電を引き起こしました。日産自動車は被災地にリーフを派遣。スマートフォンの充電や、照明、冷蔵庫、エアコン等を稼働させるための電源として活用されました。新しい日産リーフは停電時に一般家庭約2〜4日間分の給電が可能。「動く蓄電池」という特性を生かし、日産自動車では多くの自治体や企業と災害連携協定を締結しています。

台風15号で被災した君津市の小糸公民館(左)や君津市清見台公民館(右)ではスマホの充電に活用されました

     

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