つくろう、島の未来

2024年11月21日 木曜日

つくろう、島の未来

毎年秋に開催される国内最大級の離島イベント「アイランダー2017(※)」に合わせ、離島地域の産業や観光、地域活性化について話し合う「しまづくりサミット2017」(主催 公益財団法人日本離島センター)が11月17日(金)に東京・池袋にて催された。

講師3名に離島地域の関係者も交えた拡大トークセッションの様子

観光・地域おこし・水産業の好事例を紹介

当日は、離島地域や離島地域に関係する自治体職員、離島地域の住民、離島地域振興に携わる人など約140人が来場し、講師3名による地域振興の事例紹介に耳を傾けた。

長崎県新上五島町の中通島(なかどおりじま|長崎県)で国民宿舎を改装したリゾートホテルの開業に携わり、現在「宿のミカタプロジェクト」代表として地方の旅館再生を支援する永本浩司さんは、webサイトやSNSなどインターネットを使った誘客の重要性や、和のエッセンスや地域の文化を大切にするなど、世界に市場を広げ富裕層を狙うための旅館経営について話した。

一方、岡山県美作(みまさか)市で地域おこし協力隊としての活動を経て「NPO法人山村エンタープライズ」を立ち上げ、若者の人材育成に携わる同法人代表理事の藤井裕也(ひろや)さんは、「地域おこし協力隊は、世界でも珍しい優れた人材育成制度」だと評価。

協力隊事業を効果的なものにするために「地域の思惑」「行政の狙い」「協力隊のやりたい事」をすり合わせ、3者の協同事業として取り組む事が大切だと話し、「若い人が活躍できる場づくりを」と会場に呼びかけた。

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左:「宿のミカタプロジェクト」永本浩司さん/右:NPO法人山村エンタープライズ藤井裕也さん

2016年7月に島嶼域の産業振興を目的とする「島嶼産業研究会」を立ち上げ、離島漁業振興に向けた経営・政策分析などの研究活動に携わる鹿児島大学水産学部准教授の鳥居享司(たかし)さんは、「面積の小さな島ほど農地や商業地が少なく、漁業の就業割合が高い」と話し、離島地域経済における漁業の重要性や流通上の課題などについて解説。

鹿児島県のトカラ列島を例に、急速冷凍設備を導入し、島外地域への販売力を持つ民間業者を関与させたことで、漁業者が定期便の欠航などを気にせずに小ロットでも出荷先を確保できるようになり、操業日数が増加するなど、漁業の活性化につながった事例を紹介した。

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左:鹿児島大学水産学部准教授 鳥居享司さん/右:ゲスト3名によるクロストーク

外貨獲得のためには交流人口の拡大が必要

後半のトークセッションでは、講師3名に加え、中ノ島(なかのしま|島根県海士町) の山内道雄町長、礼文島(れぶんとう|北海道礼文町) の小野徹町長、利島(としま|東京都利島村)の村山将人村議会議員が登壇。

海士町の山内町長が「近年、どの島でも観光振興といっているが、本当にそうか」と問題提起すると、「観光はピーク時の半分だが、国立公園化して以降は女性客やシニア層が増えている。船が改良されてきたので、漁船で海から島を見るツアーも考案している」と、礼文町の小野町長が回答。

「2017〜18年で観光協会を設立する。1次産業の就業者も呼び込みたい」(利島村 村山村議)、「かつての離島ブームに比べて観光は落ち込んでいるが、外貨獲得のためにも交流人口を増やす必要性を感じる。地域振興は行政が予算を確保するだけの仕事から脱却し、入口から出口まで関わらないといけない」(海士町 山内町長)などの意見が続いた。

地域おこし協力隊の有効な活用についても議論

離島地域の自治体職員や住民、離島地域振興に携わる人など約140人が来場した会場

会場からは、近年離島地域でも導入が増えている地域おこし協力隊について「地域とぎくしゃくする事例も聞く。いい人材の見つけ方は」との質問や、「これから初めて地域おこし協力隊を募集する。育成のアドバイスを」との声があがった。

こうした意見に、地域おこし協力隊としての活動経験を持つNPO法人山村エンタープライズの藤井さんは「ミスマッチは必ずあり、受け入れ側の人材マネジメントが求められる。地域ができることを協力隊にお願いしてしまうことで、地域が弱体化するケースもある。地域としてやってほしいこと、本人がどうしたいのかを考えながら、不足するノウハウは地域外とつながることも大事」と回答した。

また、鹿児島大学の鳥居准教授による「漁業従事者を外から受け入れる場合、地域の漁のしきたりや仲間との関係づくりが大切」とのコメントを受け、藤井さんは「教育する力は地元にある。多少の失敗もいい経験になる。大きな失敗をしないよう見守りながら、地域のことを学べるよう地元がサポートを」と結んだ。

地域社会の変化について「今後は、地域に外国人が暮らし始める時代になっていくと感じている。島に外国人が増えることでどんな社会になっていくのか」との質問が会場からあがると、鳥居准教授が「鰹節加工の盛んな枕崎では外国人研修制度で数多く人が入ってきている。若い外国人の買い物消費が増えるなどして町が活性化し、地元でもポジティブに評価されている」と応じるなど、人材育成や地域振興にまつわる悩みについて、活発な意見が交わされた。

※アイランダー……離島地域への交流人口拡大やUIJターンの促進を図ることを目的に開催される、島と都市の交流イベント(主催:国土交通省・公益財団法人日本離島センター)。今年で25回目を迎えた「アイランダー2017」では、池袋サンシャインシティ文化会館に設けられた展示ホールで、約200島から集った出展者らが島々の魅力をPRした。

アイランダー2017公式サイト

     

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