沖縄県北部にある伊平屋村の中学生が、2014年に起業家人材育成事業の一環として、地元の特産品を使ったアイス「伊平屋を愛し、アイスを愛す」を開発した。開発の経緯や意義について、伊平屋村の担当者に話を聞いた。
商品開発を通して、島へのアイデンティティーを醸成
今年3月、沖縄県北部にある伊平屋村(いへやじま|伊平屋島、のほじま|野甫島)の中学生らが、地元の特産品を使ったアイス「伊平屋を愛し、アイスを愛す」を完成させた。
伊平屋村は人口約1,286人(平成27年9月現在)。村内に高校がないため、中学を卒業した生徒の多くは進学のため島を離れる。「15の島発ち」といわれる現状に対して、伊平屋村では2014年から起業家人材育成事業を開始した。
事業を担当する伊平屋村役場の上江洲(うえず)さんは「島のものを使った商品の開発を通して、故郷へのアイデンティティーを感じてもらうとともに、島に帰ってきても仕事(起業)ができるということを知って欲しい」と話す。
2014年、当時1年生だった伊平屋村の中学生(村立伊平屋中学校・村立野甫中学校)21名は、自分たちの住む地域にはどのような特産品があるのか、調査を実施。生徒らは米やもずく、黒糖、玉ねぎといったさまざまな特産品が地域にあることを発見した。
その後、生徒たちは発見した特産品を使った商品開発に取り組んだ。バイヤーの厳しい意見をもらいながら、試行錯誤を重ね、最終的に米と黒糖を使ったアイスを開発。上江洲さんは「生徒たちは多様な意見があることに気づき、答えがある学校生活では学べないことを学べたのではないか」と話す。
また、生徒たちは沖縄県立芸術大学の教授や学生のアドバイスを受けながら、アイスのパッケージデザインも考案。商品名である「伊平屋を愛し、アイスを愛す」には、島への感謝の思いが込められている。
今年、2年生になった中学生らは、沖縄本島で行われた職業体験学習に合わせて、開発したアイスの販売を実施。売価をいくらに設定したら利益が出るか、どのようなPOPを設置したら注目してもらえるかなど、利益計算や販売方法も生徒らが考え、持参したアイス1,300個が完売した。
これらの活動は学校の「総合的な学習の時間」を使用し行い、生徒たちは宿題として自分の意見をまとめてくることで、毎授業ごと活発な意見交換がなされたという。「学校の授業時間だけで商品開発するのは難しく、企業や大学、大勢の大人たちとの度重なるやりとりを経て完成した商品です」(上江洲さん)
現在、生徒たちが開発したアイスは伊平屋島の港やコープおきなわなどで購入できる。今年度は、伊平屋村の中学1年生が村の特産品であるマグロを使った商品開発も開始。地域資源を活用した商品開発を通して、地元愛を育むだけでなく仕事や起業についても考えられる取り組みに、今後も注目したい。