つくろう、島の未来

2024年03月28日 木曜日

つくろう、島の未来

日本の島々は、知る人ぞ知るお魚天国。島々会議001では、水産業に従事する「魚食を支える島の仕事人」にお話を伺います。1組目の参加者は奄美大島(あまみおおしま|鹿児島県)、浮島(うかしま|山口県)、壱岐島(いきのしま|長崎県)の皆さんです。

島々会議001|1組目プロフィール

浮島/新村一成(しんむら・かずなり)
浮島出身、47歳。結婚を機に周防大島で暮らすようになり、2011年株式会社オイシーフーズを起業。いりこに向かないカタクチイワシの未利用魚や島の周辺で採れる海藻など、伝統的な水産物を現代に合った商品に加工、販売する。
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壱岐島/渡辺菜津美(わたなべ・なつみ)
壱岐島で、祖父母が創立した水産会社にIターン就職。壱岐島名産のウニ加工品のパッケージや容量をリニューアルした新商品を開発し、ウェブサイトを開設してオンライン販売をスタートさせるなど、新たな販路開拓に取り組んでいる。
>>壱岐島(壱岐島|壱岐市)の概要


奄美大島/徳田謙治(とくだ・けんじ)
奄美大島名瀬大熊生まれ、52歳。鹿児島大学農学部林学科卒業後、建設コンサルタント会社に15年間勤務。本土の山間部で仕事をするうち、島で挑戦したくなりUターン。魚の食べられる食堂経営やブルーツーリズム受入など奮闘中。
>>奄美大島(奄美群島|奄美市・大和村・宇検村・龍郷町・瀬戸内町)の概要

Q1.携わっているお仕事の内容を教えてください。

宝勢丸鰹漁業協同組合として、カツオの一本釣り漁、鹿児島の市場への発送、刺身の加工、鰹節の製造、魚を食べられる食堂「鰹の家housei」経営、惣菜の製造・販売。

奄美大島 大熊漁港の風景(提供・徳田謙治さん)

会社は「うにめしの素」「うにの瓶詰め」などウニの加工品の製造販売を行なっています。私は営業や情報発信、島内の土産物店などへの配達など、製造以外の業務を全て担当しています。

壱岐島 仕事の合間に出掛けた海にて(提供・渡辺菜津美さん)

浮島は、カタクチイワシ漁といりこ製造が盛んで「いりこの島」と呼ばれています。サイズが大きくいりこにできない未利用魚を「オイルサーディン」に加工販売するほか、島の周囲に豊富な天然の海藻類にも着目し、商品化を進めています。

浮島のいりこ漁(提供・新村一也さん)

Q2.日本人の食卓に並ぶ魚食を支えるお仕事をされているひとりとして、ご自身のお仕事で感じる「やりがい」「楽しさ」「面白さ」を教えてください。

浮島は、カタクチイワシ漁といりこ製造が盛んで「いりこの島」と呼ばれています。サイズが大きくいりこにできない未利用魚を「オイルサーディン」に加工販売するほか、島の周囲に豊富な天然の海藻類にも着目し、商品化を進めています。

私は加工や食堂を担当していますが、お客さんに「おいしい」といってもらえる時が一番うれしいですね。見学や職業体験に来た子ども達の素の反応も面白い。カツオを釣っている船の人間は、大物が釣れたり大量の時に嬉しいそうです。

直接接客する機会はあまりないのですが、お土産やさんを通じてリピーターさんからの「おいしかった」との反応を聞くことがあり、うれしくなります。オンライン販売でもコメントをいただくと嬉しいですね。贈答品でもらったという方から「おいしかった。壱岐島の興味がわいたので行ってみたい」と、うれしいご注文をいただいたこともあります。

浮島 オイルサーディンの製造風景(提供・新村一也さん)

Q3.日々のお仕事のなかで、特に好きな仕事や作業があれば教えてください。

パッケージ開発を通じて、既存品の魅力を高めて顧客を広げられた実感がありました。うれしく、手応えを感じましたね。通信販売品の梱包作業も、待ってくれているお客さんを心に描いてわくわくするひととき。コロナ禍だからこそ、人とのつながりを大切に感じています。

通信販売の代金を支払っていただいた郵便局の払込用紙の通信欄に「おいしかったです」と感想が入っていると嬉しくなります。催事などでの対面販売や、電話注文を受けるのも、お客様と直接お話しできる貴重な機会です。

できれば黙ってもくもくと魚をさばいていたいです。

Q4.日々のお仕事のなかで、特に大変な仕事や苦手な作業があれば教えてください。

仕入れや製造、営業も苦手だけど嫌だと感じないのは、最終的には喜びにつながるからでしょうか。売り先に提出する仕様書などの書類仕事は苦手ですね。自分の商品のPRも得意じゃなくて。そういうところは下手ですね。

ブルーツーリーズムや見学の受け入れをしているのに、実は人前で話すのが苦手です。代わりにやってくれる人間がいないので、魚の良さを伝えるために自分を騙しながら日々頑張っています(笑)。通信販売の代金を支払っていただいた郵便局の払込用紙の通信欄に「おいしかったです」と感想が入っていると嬉しくなります。催事などでの対面販売や、電話注文を受けるのも、お客様と直接お話しできる貴重な機会です。

奄美大島 小学生の見学風景(提供・徳田謙治さん)

細かい事務作業が苦手です。自分でやるしかないのですが……。

Q5.ご自身が暮らしている島で生きる日々のなかで、特に「いいなあ」と感じる瞬間を教えてください。

周防大島(浮島の隣島)に住んでいますが、見慣れた景色でも、時々びっくりするくらいきれいな時がある。運転中に目に入った海や夕景に、思わず停車して「俺はこういうところに住んでいるんだなあ」としみじみ眺めることもあります。地元の野菜や地魚は新鮮で美味しいです。祭りや消防団などで地域の交流もあって、島暮らしは楽しいことばかりです。

浮島 周防大島から見える夕景(提供・新村一也さん)

地域の付き合いは時にわずらわしいこともありますが、子どもの頃から知っている先輩や後輩らと集まってくだらない話を喋っているとき、なんだか不思議と心が安らぎます。

奄美大島 集落で行われる伝統行事「八月踊り」の風景(提供・徳田謙治さん)

どれにしようかなと思うくらい、島にはたくさんの魅力があります。身近に豊かな自然があり、今日は夕日が綺麗そうだと思ったらすぐ見に行けたり、外で景色を眺めながらお昼ご飯を食べたりする時間が好きです。また、島には野菜・魚・島豆腐・壱州焼酎・お菓子など、おいしいものがたくさんあります。福岡から孫ターンした私にとっては、近所の方におかずを分けていただいたり、何気ない世間話をしたり、ウニの時期はウニ採りの誘いがあったりと、ほっとするおつきあいも魅力です。

壱岐島 透き通る海(提供・渡辺菜津美さん)

Q6.20年後の未来を展望するとき、ご自身の仕事あるいは島にとって必要だと感じている事柄があれば教えてください。

離島の産業一次産業を強くするために、漁業以外の産業とのつながりをもっと密にしていきたいですね。現在、未利用魚を肥料に加工し、農業との連携を図っています。また、地元の大熊漁港を中心とした地域づくりで、漁業者の存在感をもっと高めたい。釣りや魚食を楽しむ人が港に集まり、漁の文化や食文化を発信する拠点になるような、活気ある漁港を目指していきたいです。

奄美大島 活気ある港の鮮魚売場(提供・徳田謙治さん)

若手の漁師が少なく、ウニ採りをする若手も少ないため、20年後に果たしてどうなっているか心配です。島全体でも人口減少が進んでいて、向き合うのが怖いなとも感じます。人口減少を食い止めるため、若い人がやりたいと思える仕事を、会社としてもいち住民としても残していけたらと思っています。

壱岐島 豊かな幸が育つ海(提供・渡辺菜津美さん)

今以上に何かがほしいというのはなくて、今のままの島を失いたくないと感じます。人も減っていっていますが、島にはなにかしらの仕事がある。これまで活用されていなかった、島の周囲に自生する海藻類の商品化を進めていますが、女性や高齢者の生業づくりにもなり得るのではないかと思っています。

浮島 ひじき干しの風景(提供・新村一也さん)

Q7.島が大好きなリトケイ読者の方へのメッセージをお願いします。

おいしい壱岐島のウニをぜひ食べてください!コロナがおさまったら、島にも遊びにいらしてください。
>> 壱岐水産 https://www.ikisuisan.com/

島々で島づくりを頑張っている人たちに会いに行きたいです。私も奄美で日々細々と頑張っているので、遊びにきてください。魚の加工やブルーツーリズムに取り組んでみたい方もぜひ!
>>鰹の家 housei https://www.facebook.com/amamidaikuma/

浮島のいりこは、いい商品をつくるために漁師さんが漁の段階から工夫し、新鮮なものを加工しています。生臭みがなくて柔らかく、おいしいので、ぜひ味わってみてください。
>> オイシーフーズ http://www.oisea.com/

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