つくろう、島の未来

2024年10月14日 月曜日

つくろう、島の未来

2016年3月20日〜4月17日、瀬戸内海の離島12島ほか全14会場でアートトリエンナーレ「瀬戸内国際芸術祭2016」春会期が開催された。第3回目を数える今回は、200を超えるアート作品の展示やイベントの開催のほか、アジア交流、食、地域文化をテーマにしたプロジェクトも実施される。夏開会は、7月18日~9月4日、秋会期は、10月8日~11月6日の期間開催される。

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芸術祭の開催後、移住者が増加、交通手段が充実

2010年度にスタートした瀬戸内国際芸術祭は、今や日本最大級の地域イベントとして知られるアートイベントだ。香川県の島々を中心に、会場となる島では屋外や空き家などを使ったアート作品の展示やイベントが開催されている。

第1回から「海の復権」をテーマに掲げる同イベントでは、交通の中心が陸路に移る以前、海路による交易が盛んだった瀬戸内海の島々に活力を取り戻し、世界から見ても瀬戸内海が「希望の海」だと感じられるようになることが目指されてきた。

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大巻伸嗣「Liminal Air-core-」撮影:中村脩

2010年7月19日〜10月31日(計105日間)開催された第1回は、直島、豊島、女木島、男木島、小豆島、大島、犬島、高松港周辺の7島8会場に76作品を展示、16イベントが開催されて約93万人が来場。

第2回からは3会期制が導入され、春2013年3月20日〜4月21日、夏7月20日〜9月1日、秋10月5日〜11月4日に開催。直島、豊島、女木島、男木島、小豆島、大島、犬島、沙弥島、本島、高見島、粟島、伊吹島、高松港周辺、宇野港周辺の12島14会場で総計108日間開催され、207作品40イベントを観覧するために約107万人が来場した。

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眞壁陸二「男木島 路地壁画プロジェクト wallalley」 撮影 :中村脩

県外からの来場者の平均滞在期間は約2.5日。日本政策投資銀行によると、第2回の経済波及効果は132億円とも算出されている[瀬戸内国際芸術祭実行委員『「瀬戸内国際芸術祭2013」総括報告書』(2013年12月20日)参照]。3年間の予算は約12億円。入場料収入のほか、関係団体の負担金、企業協賛金、国等の補助金で賄われ、ボランティアスタッフを含めると1,000人を超えるスタッフで運営されている。

第3回では、同芸術祭の基本テーマ「海の復権」に加え、「アジア –海のつながり–」「生活文化の基本 –食–」「地域文化の独自性発信」という3つのテーマが設けられた。

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木村崇人「カモメの駐車場」 撮影:中村脩

「アジア –海のつながり–」では、夏会期に高松港で「瀬戸内アジア村」を開設予定。アジアのパフォーミングアーティストや職人が招集され、多文化、多ジャンルの交流が行われる。「生活文化の基本 –食–」では各会場に飲食スペースが設けられ、食を通じて地域生活文化が表現される。また、「地域文化の独自性発信」として、瀬戸内海や香川県の地域文化である盆栽や獅子舞の魅力を伝える試みも実施される。

瀬戸内国際芸術祭実行委員会事務局の今瀧哲之さんは「日本には借景という文化があるように、現代美術を展示することでその背景にある島の風景の美しさや島の魅力にも気づいてもらうことができます。会場の島々では、芸術祭をきっかけに移住者が増え、小豆島では年間約200人、男木島ではここ数年で約30人が住民に加わりました」と話す。

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五十嵐靖晃「そらあみ〈島巡り〉」 撮影:五十嵐靖晃

人口約180人の男木島は、芸術祭をきっかけに子どもを持つ移住者が増えたことで、保育所や小学校の再開に至った。「第2回の開催では、直島で約26万人、その他の島でも、数万から十数万が来島するなど、離島航路の利用者の増加にも結びついていて、非常に厳しい経営環境にある離島航路において、その航路や便数が維持され、さらに一部では増便が行われたり、また、島内バス路線が整備されるなど、島民の生活の足の確保にも繋がっています」(今瀧さん)

瀬戸内国際芸術祭の今後の目標について、今瀧さんは「島のお年寄りが笑顔になるという、分かりやすい未来を目指すこと」と語った。


【関連サイト】
瀬戸内国際芸術祭2016

     

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