離島の課題と可能性を学ぶオンライン勉強会開催中
11月14日(木)、東京ミッドタウン八重洲カンファレンスで「未来のシマ共創会議」が開催されます。
国内417島の有人離島は、人口減少・高齢化・地球沸騰化等の課題に対し、新旧の知恵とテクノロジーを活用した取り組みが展開される「日本の未来の先進地」。そんな離島を舞台に持続可能な世界をつくる共創を生み出す参加型イベントです。詳細は特設ページをご覧ください。
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当日まで、毎週木曜20~21時半に、共創会議の参加者を対象に、実践者や有識者から離島の課題と可能性について事前にインプットできるのオンライン勉強会を開催しております。テーマは、インフラ、資源の活用、医療、子育て魅力化、お金の話など……離島の持続可能な社会において直面するものばかり。
島々で現実に起こっている状況や取り組みを知っていただくことで、当日のセッションやワークショップがより立体的なものになるかと思います。そこで、勉強会の様子が分かる短めのレポートをご紹介。勉強会は共創会議終了前後までアーカイヴ視聴できますので、安心してご参加ください。
ここからは、リトケイのプロボノチーム「うみねこ組」の蛭川万貴子さんが、レポートをお届けします。
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第9回の勉強会のテーマは、「人手確保・関係人口」。
東京都利島村役場・産業観光課長の荻野了さん、一般社団法人ツギノバの大久保昌宏さん、大和リース株式会社・民間活力研究所の辻大輔さんにお話いただきました。
約300人の人口を40年近く維持する利島村
利島村は、伊豆諸島の一つで、北から2番目の島。人口は約300人、診療所は1軒、コンビニはなし、義務教育学校(小・中学校)は1校、保育園は1園という島です。
移住して18年になる荻野さん。そのきっかけは、勤務していた都内の企業を退職後、知床や屋久島への一人旅を通じて「自然の近くで暮らしたい」と考えるようになったからとのこと。
約300人の利島村では「なんでも全員でやる!全員が主役!」という考え方が当たり前。地域ぐるみで学校を中心としたコミュニティをつくっています。
また、未就学児も含めて、地域で子育てを見守る環境が根付いており、他家の子に子どもの面倒を見てもらう風習「ボイ制度」についても紹介してくださいました。
利島村の特徴の一つが、1985年から今まで約300人という人口を維持していること。その背景の一つにあるものが、関係人口。檜原村との子どもたち同士の継続的な交流が親世代の交流にもつながったり、椿産業のボランティアやふるさとワーキングホリデーの取り組みなどがあったりと、関係人口は増えており、その参加者の中から利島村への移住者が生まれているそうです。
また、関係人口維持の施策の一つとして、村役場のホームページでは島内の求人情報の掲載も。利島村について調べる多くの人がたどり着く場所のため、目に留まるようにしているそうです。他の離島でも同様の取り組みができるかもしれません。
自走化を実現する官民協働型の地域づくり
続いてお話しいただいたのは、一般社団法人ツギノバの大久保昌宏さんです。リトケイの立ち上げメンバーの1人。北海道・利尻島との縁をきっかけに一般社団法人ツギノバを設立し、利尻島、東京の新島・式根島、鹿児島の沖永良部島といちき串木野など、北へ南へと回遊魚のように移動しながら地域の未来を創出する「場」づくりをなさっています。
大久保さんは、人口減少・少子高齢化の元となる課題に体系的に向き合いながら地域活性化を推進。課題把握と計画策定、公的事業との連携、住民を巻き込んだ実働事業、という流れを取りながら、官民協働型エリアマネジメントによる地域づくりで、集落単位で自走できる仕組み化に取り組まれています。
その実例が沖永良部島の知名町での取り組みです。取り組みを継続させていくための工夫、働き手を確保し、その働き手を関係人口として巻き込むための工夫など、具体施策についてお話をしてくださいました。
知名町は奄美群島の南西部に位置する沖永良部島の南西部にある人口は約5,400人の町です。サトウキビや花き、ばれいしょ、葉タバコの栽培、畜産が基幹産業で、他のエリアと同様、農業や観光業などを中心に担い手不足が課題となっています。
その対策として、繁忙期が真逆になる利尻島との人材シェア、コミュニティスペースやコワーキングスペースなどの人材交流施設を運営しているそうです。その他にも、働き手を関係人口へとつなぐためのさまざまな施策についてご紹介くださいました。
地域を理解するために「地域に飛び込む」
最後は、離島地域の課題解決を公民連携事業で取り組む大和リース株式会社・民間活力研究所の辻大輔さんです。辻さんは滋賀県のご出身で、奥様は愛媛県の生名島ご出身とのこと。現在は那覇にご家族を残して大阪に単身赴任されています。自分から地域に飛び込む大切さについて、ご自身の経験を通して教えていただきました。
大和リースは、何をすれば儲かるかではなく、人々が何を必要としているかを考えて事業を興せという「公の精神」で事業を行っているそうです。その事例として紹介されたのが、岐阜県の商業施設「フレスポ飛騨高山」と「座間味村新庁舎」。
「フレスポ飛騨高山」は、大和リースの「同じ品質のものを全国どこにでも作れる」という強みから、「いかに地域らしさを出して地域に根差した運営をするか」という強みへの転換点になった施設。全国展開する企業の入居店舗の外観を街並みに馴染むようにデザインしたり、あえて収益を生まない「まちづくりスポット」というNPOの活動拠点を作り、全国の同様施設と交流して地域に新たな活動を導入するきっかけ作りも行っているそうです。
辻さんの転機は、岐阜から那覇への転勤。事業推進に向けて、地域のことをよく知り理解するためにも、そして何かあったときに沖縄に縁のない辻家が地域の方々に助けてもらうためにも、「まずは地域に自分から飛び込む」ことが大切だと考え、さまざまなコミュニティ活動に参加したそうです。
知るためにも知ってもらうためにも、やはり待ちの姿勢ではなく飛び込むって大事ですね。
大和リースさんは、SDGsや地域活性化への取り組みを積極的に行っており、リトケイも含めてさまざまな団体に所属・協賛しています。その一つである一般社団法人ONSEN・ガストロノミー推進機構のイベント事例を紹介していただきました。
そして現在は離島の人々との協業の可能性について検討中とのことで、「DL-TOWN」というオンラインショッピングサイトについてご紹介いただきました。ECモールとリアルイベントを通して地域の魅力を発信するサイトになりそうです。どんな地域のどんなものに出合えるか、サイトの完成が楽しみです。
文:蛭川万貴子
未来のシマ共創会議、参加受付中です。
未来のシマ共創会議への参加チケットは、イベント前日の11月13日23:59まで販売中です(オンライン参加は上限なし、会場参加は完売し次第終了)。繰り返しになりますが、すでに終了した勉強会についても、共創会議の終了前後までアーカイヴ視聴が可能となります。
離島経済新聞社が、「なつかしくて あたらしい ミライの島を 共につくろう」をテーマに、産学官などの垣根を越えて語り合い共創するまたとないイベントです。オンラインでの参加や後日視聴も大歓迎。奮ってご参加ください。
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