つくろう、島の未来

2024年04月24日 水曜日

つくろう、島の未来

北海道本土の北に浮かぶ利尻島(りしりとう)は、利尻昆布など海産物の産地として知られ、利尻町と利尻富士町に4,327人が暮らしています(2021年2月末住基人口)。2020年利尻島にオープンした交流スペース「利尻町定住移住支援センターツギノバ(以下、ツギノバ)」で、定住移住の相談や情報発信を担当する離島経済新聞社の八木橋舞子が、島のワーケーション環境や、島の生業、気になる子育て環境などについて、全5回の連載で紹介します。

(文・八木橋舞子)

島の名を冠したブランド水産物「利尻昆布」の昆布干し風景

【第2回】恵みの海で漁をして暮らす

こんにちは、離島経済新聞社の八木橋舞子です。私は、離島経済新聞社の地域支援事業として、旧沓形中学校舎を再生し2020年に開設された交流スペース「ツギノバ」で、利尻町への定住移住の相談や情報発信を担当しています。

この連載では、私の第二のふるさと利尻島の仕事や島暮らしの魅力を5回にわたりお伝えします。第1回は、利尻島で働きながら旅する「ワーケーション」に欠かせない島のテレワーク環境や、オンラインを活用した定住移住支援の取り組みをご紹介しました。

第2回となる今回は、利尻島の基幹産業である「漁業」について。島に移住し、漁業の担い手として実際に漁師をされている方にも体験を語っていただきます。

天然昆布やウニなどに恵まれた利尻島の漁業

利尻島周辺は、対馬暖流とリマン寒流の交わる海域のため、一年を通じ、豊富な魚類に恵まれた好漁場です。

利尻島の周辺で獲れる海の幸は、昆布、ウニ、ホッケ、カレイ、タコ、ヒラメ、ナマコなど。中でも代表的なものが、利尻昆布とエゾバフンウニで、水揚げ額の約6割を占めています。島の名を冠したブランド水産物でもある「利尻昆布」は、すっきりとした味わいながら旨味が濃い澄んだ出汁がとれるため、和食に欠かせない最高級の昆布として人気があります。

仕事のやりがい

利尻島の漁業は「根付漁業」「沿岸漁業」「養殖漁業」に分けられ、それぞれに採る海産物や漁法は異なり、季節や天気によっても漁師のライフスタイルは変わります。中でも中心的なものは、磯周りの天然昆布やウニなどを採る「根付漁業」で、利尻島で漁業に携わる漁師のほとんどが従事しています。

利尻島は、新規就業者でも漁業権(漁協の組合員資格)を取得しやすい環境です。頑張れば頑張った分だけ収入につながっていく、やりがいある仕事です。

さまざまなバックアップ制度

一方で、現在、利尻町では漁業者の高齢化や担い手不足が深刻化しています。

利尻漁業協同組合に加盟する、利尻町内の組合員のうち、60歳以上が全体の63%を占め、平均年齢は約62歳となっています。町内の組合員数は、平成17年の405名から年々減少傾向にあり、令和2年には203名にまで半減しています(※)。

※利尻町水産農林振興係資料より

この現状を打破するために、利尻町はじめ島内関係各所が立ち上げた「利尻地域漁業就業者対策協議会」等が中心となり、島外からの新規漁業就業者の受入れや就業支援など、さまざまなバックアップを行なっています。

・新規漁業就業体験「漁師道」
利尻島独自の支援制度です。漁家に宿泊しながら2週間漁業体験を行い、漁業への理解や島生活の適正などを知るための研修です。

・漁業人材育成総合支援事業
国の支援制度です。「漁師道」を終えて「漁師になる!」と決意をしたら、この制度に移行して最長3年まで本格的な研修を受けることができます。

・北海道漁業就業支援フェア
漁師になりたい人と担い手を育てたい漁業者との面談会です。フェアに参加することで「漁師道」や「漁業人材育成総合支援事業」の研修生となることができます。

天然昆布漁(根付漁業)の様子

島で働く漁師さんをご紹介!

渡邉大樹さん(37歳)は、北海道千歳市出身。利尻島新規漁業就業体験「漁師道」第1期生として、憧れの漁師になるため26歳で利尻町に移住。漁師として独立して現在は漁師歴11年になります。

渡邉さんは主に根付漁業に従事し、1月から3月はナマコ漁、4月はワカメ漁、6月から9月は昆布漁やウニ漁、10月から12月はアワビ漁と、一年を通じて漁を行っています。

また、利尻漁業協同組合の青年部を束ねる青年部長を勤めつつ、利尻漁業協同組合沓形(くつがた)支所青年部長としても浜の保全活動や地域行事など、地域づくりにも積極的に取り組んでいます。

「僕が利尻島に来てからも、たくさんの漁師希望者が来て、今も10名以上が漁師を続けています。利尻に来た若い漁師の8割は研修制度を利用しており、親方から色々教えてもらいながら独立を目指すこともできます。安心して飛び込んできてほしいです」(渡邉大樹さん)

『お茶の間島留学』動画配信レポート

前回ご紹介した『お茶の間島留学』動画配信の中で、渡邉さんに未経験からの漁師・島暮らしについて体験談を語っていただきました。

「そもそもなぜ漁師になろうとしたのか?」という最初の質問に、渡邉さんは、「小さい頃から漁師に憧れていたが、なり方が分からなかった。調べていきついた北海道漁業就業支援フェアに参加した時、利尻島の担当者に『漁師は大変だぞ。辛いぞ。それでも必ずがんばった結果が自分に返ってくる。裏切らない』と言われたことで一念発起して決めた」と笑顔で回答。

利尻島を選んだ理由については、「僕が利尻島を選んだんじゃない。漁師になるチャンスを与えてもらったという意味では、利尻島が僕を選んでくれたんだと思う」と謙虚ながらも熱い思いを話す渡邉さん。

そんな渡邉さんに、動画視聴者の方から「漁師をはじめる際の初期費用はどれくらいかかるの?」といった質問が届くと、「初期費用は来島費用くらいで、島の研修制度を活用すれば、その間は親方からお給料がもらえる。住宅や漁具の貸出しもあるので、初期費用はほとんどかからないと思う」と具体的なアドバイスをしてくれました。

研修から独立、そして独立後の働き方について話は続き、渡邉さんは「研修後は、僕のように独立する人、引き続き親方の元で一緒に仕事をする人もいて、選ぶことができる。また、漁師一本だけではなく、例えば土建業をしながら漁師をしている人、夏だけ利尻で漁師をして、それ以外は島外で働く人もいる。漁師の働き方もさまざまですね」と色々なお話を聞かせてくれました。

『お茶の間島留学』動画配信の詳しい内容は、こちらからご覧いただけます。
『お茶の間島留学』理想の島暮らしを考える!未経験からの漁師編

利尻島で漁師になる!漁業求人情報

①利尻島で漁師を目指したい方
各支援制度についても、まずはこちらまでお問合せください。
【問合せ先】
利尻町定住移住支援センターツギノバ
電話:050-8880-6920
E-mail:info★tsuginoba.com
(★を@に変えて送信してください)

②利尻島で昆布干しアルバイトをされたい方
毎年5月頃、利尻町公式ホームページにて募集を行います。
【問合せ先】
利尻町まち産業推進課 水産農林振興係
電話:0163-84-2345
E-mail:rishirikonbu★town.rishiri.hokkaido.jp
(★を@に変えて送信してください)


次回の【島で働く・北海道利尻町】では、島へ移住を考える際に気になる「子育て環境」にフォーカス。保育園や学校などの子育て環境と求人情報、2020年秋に開催した『お茶の間島留学』動画配信のレポートをお届けします。ぜひご覧ください。

離島経済新聞 目次

島で働く・北海道利尻町

北海道本土の北に浮かぶ利尻島は、利尻昆布など海産物の産地として知られ、利尻町と利尻富士町に4,335人が暮らしています(2021年1月末住基人口)。2020年利尻島にオープンした交流スペース「利尻町定住移住支援センターツギノバ」で、定住移住の相談や情報発信を担当する離島経済新聞社の八木橋舞子が、島のワーケーション環境や、島の生業、気になる子育て環境などについて、全5回の連載で紹介します。

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